日銀利上げで本当に危険な住宅ローン利用者は誰か

住宅コンサルが警鐘 「最も注意すべきは2022〜2024年に1億円前後のペアローンを組んだ世帯だ」

 

6月の日銀金融政策決定会合で追加利上げは決まりました。

住宅ローン利用者にとって、利上げといえば「毎月の返済額が増える」というイメージを持つ人が多いだろう。しかし、本当に注目すべきなのは返済額そのものではない。

借りた時期や借入額によって受ける影響は大きく異なり、現在最も注意が必要なのは2022年から2024年頃に高額なペアローンを組んだ世帯である。

 

1|利上げの影響は住宅ローン利用者全員に同じではない

住宅ローン金利が上昇すると、変動金利型を利用している人の返済負担は徐々に増加する。ただし、その影響は一律ではない。

2000年代や2010年代前半に住宅を購入した世帯は、現在と比べると住宅価格そのものが安かった。東京都心のマンションであっても、現在の価格と比較すれば数千万円安く購入できたケースも珍しくない。借入額が小さく、返済も進んでいるため、多少の金利上昇で家計が急激に悪化する可能性はそれほど高くない。

一方で、現在の住宅市場は全く異なる状況にある。

 

2|最も危険なのは2022〜2024年の「1億円ペアローン世帯」

2022年から2024年は、首都圏マンション価格が歴史的な高値圏にあった時期だ。価格上昇に対し、多くの世帯が選択したのがペアローン——夫婦それぞれが住宅ローンを組み、世帯年収を最大限活用して借入額を増やす方法——だった。

実際には、借入額8,000万円超・1億円超、35年・50年ローンといったケースも珍しくなくなった。超低金利時代だったため、「今は金利が低いから返済できる」という前提で購入判断を行った世帯も少なくない。しかし、ここに落とし穴がある。

 

3|本質的な問題は「金利」ではなく「借入額」

住宅ローンの相談現場では「変動金利が何%になるのか」という質問をよく受けるが、本質的な問題はそこではない。借入額が4,000万円の世帯と1億円の世帯では、同じ金利上昇でも負担増加額は全く異なる。借入額が大きいほど、影響は大きくなるからだ。

では、実際にどのくらいの差が生じるのか。現在の変動金利が約0.5%で、日銀の政策金利がターミナルレートと目される1.25%に達した場合を試算すると、以下のようになる。

 

 

【試算】変動金利0.5%→1.25%上昇時の月次負担増(元利均等返済)

ケース

現在の月返済

1.25%後の月返済

月次負担増

年間負担増

注目    

4,000万・35年・借入直後

103,834円

117,635円

+13,800円

+165,604円

 

8,000万・35年・借入直後

207,668円

235,269円

+27,601円

+331,209円

 

1億・35年・借入直後

259,585円

294,086円

+34,501円

+414,011円

 

1億・35年・3年後

259,585円

291,117円

+31,532円

+378,381円

 

1億・50年・借入直後

188,402円

224,224円

+35,823円

+429,872円

★最大

1億・50年・3年後

188,402円

222,068円

+33,666円

+403,996円

 

※ 現在の変動金利は約0.5%(優遇後)として試算。元利均等返済。

5年ルール・125%ルールは考慮外。実際の返済額は金融機関により異なる。

 

最も負担増が大きいのは「1億円・50年ローン・借入直後」のケースで、月次負担は約4.4万円増加する。年間に換算すると約53万円、残存期間全体では約2,200万円もの追加負担となる計算だ。

 

なぜ50年ローンが最大の影響を受けるのか。

残期間が長いほど元本の減りが遅く、高い残債に対して金利上昇が直撃するためだ。さらに負担増が続く期間も長くなる二重構造になっている。

 

さらに現在の高額ローン世帯は、管理費の上昇、修繕積立金の増額、固定資産税、物価上昇といった複数の負担増にも同時に直面している。住宅ローンだけが問題なのではなく、家計全体への圧迫が同時進行しているのだ。

 

4|本当に怖いのは「人生の変化」と金利上昇が重なること

実務上、住宅ローン返済が苦しくなる理由は金利だけではない。むしろ、出産・育児・育休取得・転職・病気・離婚といった人生の変化がきっかけになることが多い。

特にペアローンは夫婦二人の収入を前提として成立している。そのため、どちらか一方の収入が減少すると、家計は一気に苦しくなる。

 

5|「売ればいい」が通用しなくなる可能性

ここ数年、多くの住宅購入者は価格上昇によって「いざとなれば売れる」という安心感を得てきた。しかし今後は状況が変わる可能性がある。

金利上昇は、これから住宅を購入する人の借入可能額を押し下げる。買い手が借りられる金額が減れば、高値で購入できる人も減る。つまり、住宅価格を支えてきた資金調達力そのものが弱くなるのだ。

 

 

6|本当の被害者はこれから家を買う人かもしれない

今回の利上げで最も大きな影響を受けるのは、既存の住宅ローン利用者ではなく、これから購入する人たちかもしれない。住宅価格は高止まりしたままなのに、借入可能額だけが減少するからだ。

 

★|問われるのは「借りられる額」ではなく「返せる額」

住宅ローンは、借りられる額ではなく返せる額で考えるべきだ。

日銀の利上げによって最も注意が必要なのは、住宅ローン利用者全員ではない。

住宅価格が高騰した2022年から2024年に、共働きが続くことを前提として1億円前後のペアローンを組んだ世帯だ。

金利上昇は始まりに過ぎない。

 

これからは、住宅ローンの額そのものが適正だったのかどうかが問われる時代になるだろう。

 

 

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アネシスプランニング株式会社

寺岡 孝

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