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第3回|湾岸タワマン、買うべき?避けるべき?
今、家を探している人の多くが、湾岸エリアの新築タワーマンションに目を引かれます。
東京湾岸部──晴海、豊洲、勝どき、有明、月島……。
タワーマンションが立ち並び、眺望と最新設備、駅近・再開発のイメージが重なり、まさに「理想の暮らし」を象徴するような景色。
ですが、ここで一歩立ち止まって考えてみましょう。
人気がある=買っても安心、というわけではありません。
実際、私のもとにもこのエリアについての相談が多く寄せられます。
「湾岸って本当に“買い”なんでしょうか?」 「新築なのにこの価格、将来売れるんでしょうか?」
この疑問は、とてもまっとうです。
なぜなら今のタワマン物件には、いくつかの“気づきにくいリスク”が潜んでいるからです。
■いつかは終焉を迎えるタワマン市場
まだまだ天井が見えそうにないタワマン市場だが、いずれはその終焉が訪れるはず。
いつまでも上がるという妄想的な見通しは今後どうなるのでしょうか。
昨今のトランプ関税の影響でリスクマネーの逃避など、資金の動きが不安定になりつつあります。
東京のマンションバブルは資金回収の動きが始まると、その資金を一気に回収し始める可能性があります。
「買った価格より多少でも上回る価格が付けば売ってしまえ!」と思い始めたらマンションバブルは崩壊し始めるのかもしれません。
<人口減少に反してタワマンは増加>
不動産経済研究所の調査によれば、2024年以降に完成を予定している20階建て以上の超高層マンション(タワーマンション)は、全国で321棟、総戸数11万1,645戸に達する見込みです。
各エリア別の内訳は下記のとおりです。
首都圏: 194棟、8万2,114戸(全国シェア73.5%)
内東京23区内: 130棟、5万4,904戸(全国シェア49.2%)
近畿圏: 43棟、1万3,472戸(全国シェア12.1%)
内大阪市内: 23棟、6,864戸(全国シェア6.1%)
他エリア
福岡県: 12棟、2,040戸(全国シェア1.8%)
愛知県: 12棟、2,022戸(全国シェア1.8%)
これらのデータは、前回調査(2023年3月末時点)と比較して、93棟・1万5,161戸の増加を示しています。
この数値を見る限り、人口減少による住宅需要の減少とは反比例しており、タワマンに対する投機目的による需要の方がメインと想像できます。
また、マンション価格は東京23区の新築マンションの平均価格で、2023年度上半期に1億572万円となり、初めて1億円を突破しました。
三田ガーデンヒルズや浜松町タワマンの販売で一機にマンション価格が上がったと言えます。
これらの調査結果を鑑みると、タワマンの供給は増加傾向にあり、特に首都圏での供給が全体の大部分を占めています。
つまり、実需とは別にいわゆる不動産投資ビジネスが横行しているとも言えるでしょう。
■高騰した初値、落ちにくい価格、でも……
新築タワマンの価格は、2020年代前半から急騰し、今や1億円超が珍しくありません。
中でも湾岸エリアは、都心部よりも「買える価格帯」の印象が強く、30〜40代の共働き世帯の注目を集めています。
しかし、過去の事例から学べるのは、初値が高い物件ほど、リセール時に価格調整されやすいという事実です。
例えば、新築時は坪単価500万円超だった物件が、数年後には同等スペックでも中古市場で420万円程度まで下がっているケースもあります。
「人気だから値下がりしない」は幻想です。
マーケットは常に需給と為替、金利の影響を受けて動いています。
■将来の買い手が“減るリスク”
湾岸エリアのタワマンは、再開発が進み、新築供給も一巡しつつあります。
ということは、今後は「同じような物件」が大量に中古市場に出てくる可能性が高いということ。
さらに、築年数が15年、20年と経過した際に起こるのが、「買い手層の変化」です。
- 高額ローンを組める若年層が減る
- 管理修繕費の高騰が懸念される
- 建物の資産価値がピークアウト
どんなに今“良い物件”に見えても、将来買いたいと思ってくれる人がいなければ資産とは呼べません。
■「眺望」「ブランド」で判断していないか?
もちろん湾岸の魅力は多いです。
- 夜景・海が見える眺望
- 有名デベロッパーの安心感
- ジム・ラウンジ付きの豪華共用施設
しかし、それらは**「いま住む満足度」を高めるものであって、「将来の売りやすさ」とは別問題**です。
私は常にこう聞きます。 「10年後、この物件を買いたい人は誰ですか?」
その問いに具体的に答えられないとしたら、出口戦略の甘さが残っているかもしれません。
■「今買うべきか」より「いつ売っても困らないか」
タワマンを否定するわけではありません。
実際に、優良なタワーマンションは存在します。
ただ、見極めがとても難しい。
- 建物管理のレベル(将来の修繕計画)
- 隣接物件との比較(値崩れの有無)
- エリアの供給過多リスク(中古が飽和しないか)
こうした「未来に起こりうること」を冷静に考えて購入できる人が、後悔しない住まいを手に入れています。
「今の価格で売れるか」ではなく、 「どんなときも“売れる条件”が備わっているか」。
これが、不動産購入における最大の防御策です。
■プロフィール
寺岡孝(お金と住まいの専門家/アネシスプランニング代表)
・不動産・住宅購入の相談実績3,000件以上
・著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』など
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