「手付金はナシでいい」と言われマンションを契約、解約するといったら違約金750万円を請求された!
 

初めてのマンション購入でヒドイ目に!

 

昨今、不動産価格が高騰している市況が続いています。

日銀の利上げ発表もありましたが住宅ローンの金利は未だに低金利が継続中。

ここに来て不動産を買っておいた方がいいという話も聞くのですが・・・この先のことは誰も予測がつかないものです。

そんな中、人生で初めてマンションを契約した40歳代の方から相談がありました。

 

 

初めてのマンション購入がとんでもないことに?!

「マンションを契約したのですが、解約をしたいです。どうすればいいのでしょうか?」

愛知県在住のTさんは独身で名古屋市内のマンションを売買金額3,750万円で契約しました。間取りは広めの単身用物件で、一人で住むにはいいかと思っていたそうです。

 

解約理由を聞くと、担当営業から説明があった内容が契約後に違うことがわかったので購入をやめたいとのこと。

その旨を担当営業に連絡すると「その場合は違約ということですので、違約金の750万円払わないと解約はできません」と言われてしまったそうです。

Tさんは「そんなお金ははらえないとのこと。どうしていいかわからないのです。」と相談に来られました。

 

 

詳しく聞いてみると、契約時には手付金を払わなくていいと言われて契約したとのこと。

この手の話、どっかで聞いたことが・・・

そうそう、以前に正直不動産2のドラマも紹介された、手付金なしで中間金を払わせて契約したフルコミション営業の奥の手の営業手法です。

 

契約の時はお支払いいただくお金はなしでOKです!

今どき、手付金を払わないで不動産の売買契約をするとは珍しいと思いながら、さっそく売買契約書と重要事項説明書を見てみました。

すると、この契約書には手付金の支払い内容は記述されておらず、当初から手付金の受領はない形での契約書となっていました。これではいわゆる手付金放棄による解約ができない契約で、万が一解約をしたいとなれば、違約という扱いなる契約です。

 

また、この契約書には手付解除の約定の代わりに「解約費用」と称する項目があり、「当事者双方で契約締結日から1ヶ月以内なら売買金額の1割相当額を払えば解約できる」という旨の項目も記載されており、ある意味、素人の買主側から見れば不利な約定ともいえます。

 

売主の不動産会社は最後まで契約履行をしてもらえれば売上も立ち問題はないのですが、万一、契約が解約となっても解約金で売買代金の1割はもらえる形で、最悪でも数百万円は雑収入として得られます。

 

 

また、この約定は期限付きですから、その期限以降に解約という話になれば、売買金額の2割相当額を払わないと解約できないものなのです。

つまり、買主側が解約申出すれば売買金額の2割相当額を払って解約するか、違約金が払えないのであれば、買いたくないマンションのローンを実行して買うしか手段のないという買主側には酷な契約内容でした。

 

Tさんに「契約時に手付金を払う話はあったのか」を尋ねると、不動産会社の担当営業は「手付金は2割と決まっていて、例えば、750万円というような高額なお金は皆さんご用意できないので当社は手付金を頂かなくてもいい契約になっております。」とのこと。

 

では、万が一、解約の場合の説明は契約前の重要事項説明にあったのかと聞くと、特段の説明はなかったようです。加えて、違約金を払わないと解約できないと知ったのはいつか?を尋ねると、「解約をしたいと担当営業に伝えてから初めて説明があったと・・・」とのこと。

 

この内容が事実であれば、売主の重要事項の説明義務違反と言われてもおかしくありません。また、ある意味不実のことを告げて契約を勧誘する行為にも当たりそうで、宅地建物取引業法(宅建業法)に抵触する可能性すらあります。

 

この不動産会社の担当営業は「手付金は2割と決まっています」と断言していますが、おそらく会社の方針で手付金の額を決めたもの。

宅建業法上では手付金の上限はあくまでも売買金額の2割と決まっていますが、手付金が売買金額の2割という規定はどこにもありません。手付金の額あくまでも上限を規定しているだけで下限はありません。したがって、極端な話、1万円でも5千円でもいいということになります。

 

想像するに、「手付金の上限は売買金額の2割」という文言の「上限」を「決まっている」という表現に入れ替えて言わされている感じです。

Tさんは「契約時には一銭もお金はかかりません」という担当者の言葉を鵜吞みにして契約したようです。

 

中間金を払わせた不動産会社の怖さ

売買契約の形態は色々とありますが、もっとも一般的なのは契約締結時手付金を払って契約するパターンです。

これは、手付金はいくら、引渡時の際にはいくらという支払い内訳で売買契約を締結するというものです。

 

このほかに契約締結、即引渡という売買契約もあります。業界ではいわゆる一発決済というやり方。物件をすぐにお金に換えたいとか、様々な理由からこの方法を取ることがあります。

この場合には契約前に相当な事前準備や調査が必要で、ある意味、不動産のプロでないとリスクが大きい契約形態です。

 

Tさんが契約したマンションの契約形態は契約時には一銭も払わず、中間金の支払いをして引渡時に最終金を支払うというもの。これは、契約締結時の初期費用ができるだけ少なくて済む契約形態です。

 

しかしながら、契約を解約したいとなると非常に厄介な契約形態です。

売買契約で中間金を支払ってしまうと、その時点で買主側の「契約の履行に着手した」ということになり、いざ契約を解約したいとなると違約という形で対処せざるを得ない点です。

 

違約となれば売買金額の2割を上限とした違約金が契約書上で設定されている場合が多く、例えば、Tさんのように3,750万円の売買金額であれば、その2割の750万円が違約金として請求される格好になります。

売主、買主とも条件は同じですが、買主が一般的な消費者であれば、よほどの不動産に関係する見識がないとこの内容は理解できないかもしれません。

 

契約時には「お金はいりません」と言われて喜んでも、中間金を払うことでそう簡単に解約ができないという契約をさせてしまう不動産会社にはある種の怖さを感じるのです。

 

重要事項説明書には中間金を払うことのデメリットの記述はない

Tさんが契約したマンションの重要事項説明書には、中間金を支払うことがどういうことなのかという記述はどこにもありません。

この点は重要事項説明に記載する事項ではないため、当然ながら記載はないわけです。

また、中間金の支払い=契約の履行に着手となるので、解約する場合には違約扱いになりますが、Tさんに尋ねるとそういった説明は契約時には全くなかったということです。

 

重要事項説明書には契約の解除に関する事項が記されていますが、その内容は次の通りでした。

 

先ほどの「契約締結日から1ヶ月以内なら売買金額の1割相当額を払えば解約できる」、

物件引渡前に天変地異により売買契約の履行ができない場合は条件付きで解約OK、その場合の支払い済みの金銭は買主側に返還、

契約後の3日以内であれば、クーリングオフの規定で解約OK、

売主、買主に契約の履行に反した場合には違約となるので解約Ok、

というものでした。

 

こうした内容を見る限り、売主は買主に宅建業法の知識があることを前提としている気がしてなりません。

 

 

売買契約で手付金を払わず中間金の支払いをするということは万一、解約したいとなれば契約は違約となり、売買代金の2割を上限とした違約金を払わないと解約はできないということになります。

この点を素人の買主、しかも初めてマンション購入をする人に売主から説明すらないのはかなり酷な話といえます。

 

契約締結時に取り交わした確認書

この売買契約には重要事項説明書、売買契約書という通常の書面の他に、「確認書」というものがありました。「確認書」って何を確認するのだろうと思いきや、書面を読むと不動産会社のより一層の確信犯的な行為が見え隠れしていました。

 

確認書の内容は概ねこんな内容です。

・締結した売買契約は手付金を買主から売主に支払わずに締結される売買契約であること

・売買契約書にも記載のあった「当事者双方で契約締結日から1ヶ月以内なら売買金額の1割相当額を払えば解約できる」こと

・ローン特約条項による解約は解約費用が発生しないこと

・当事者いずれかが契約違反で解約する場合には、解約費用(売買代金の2割相当額)がかかること⇒この文言にある「契約違反」が何を指すのかがエンドユーザーにはなかなか理解できない

・締結した売買契約は、買主からの申し出で手付金を売主に支払わずに締結した売買契約で、売主が買主の申し出に合意したうえで確認書に明記したものであること

 

この確認書を要約すると、

買主が手付金の支払いをしない契約したいと売主に申し出したこと

↓↓

売主がこれに応じて売買契約を締結した

↓↓

ただし、売買契約の解約をしたい場合、契約締結後1ヶ月以内であれば解約金は売買代金の1割相当額でOKする

↓↓

住宅ローン特約や天変地異以外で、当事者いずれかが売買契約を解約する場合には違約となり、違約金は売買代金の2割を相手方に支払うこと

という感じです。

 

つまり、手付金の支払いをしないで中間金の支払いをする売買契約は、中間金の支払いをもって買主の契約の履行に着手したものとなり、万が一、当事者の一方が解約の申し出をすると違約となってしまいます。

その場合には違約金を払わないと解約はできませんというものです。

 

相談者のTさんに自分から手付金を払わない契約の申し出をしたのかを尋ねると、そんなことは一言も言っていないとのこと。

となれば、最初から売主側は意図的に手付金を払わせないで契約を急かしておき、やっぱり解約したいと買主から申し出されれば、「はい、それは違約です!違約の場合には解約金が売買代金の2割で750万円かかります。」という流れになるでしょう。

 

 

しかも、買主はこの確認書に記名・押印をしていますので、売主からしてみれば「お客様にきちんと説明もしていますし、こちらにご署名、ご捺印をいただいていますのでご理解されてのご契約かと・・・」と言われるのがオチです。

この確認書にもサインしてしまったTさんは、売買契約を解約するには違約金を払って解約する方法しか残されていませんでした。

 

違約金を払わないと売買契約は解約できないのか

契約の履行に着手してしまった売買契約は約定通り違約金を払わないと解約は難しいものです。

しかしながら、この契約を仕向けた不動産会社には落ち度がないのでしょうか。仮に落ち度があると想定すると、契約の勧誘の仕方にはグレーな部分がありそうです。

 

例えば、当初から不動産会社の誘導で手付金を払わない契約に仕向けている様子が伺えます。

Tさんは契約締結後に不動産会社の担当営業に解約の話を申し出していますが、その時の会話の様子を教えてくれました。

要は担当営業からは手付金がない契約の意味合いは契約前に説明がなかったと・・・

 

手付金の支払いがないリスクは買主にとってのデメリットがあるかを説明すべきではと感じますね、とTさんは話していました。

 

また、ローンの審査で個人の信用情報が必要だからTさん自身で取って欲しい旨を言われ、その情報を担当営業に送るように言われたとのこと。

信用情報機関へのアクセスには個人自身はOKですが、その情報内容を担当営業がスクリーンショットなどで提供して欲しいということ自体が個人情報保護の観点からすればヤバい行為といえます。

 

担当営業がローンの審査をするわけではありませんが、そうした行為は日常的に行っているのでしょうからヤバいとかいけないという自覚がないのでしょう。

 

こうした視点から宅建業法や個人情報保護法、消費者契約法などに抵触する可能性があれば、逆に売主である不動産会社が違約の行為をしたと言われても仕方がないという可能性があります。そうなると、買主側は売主に違約があったと主張することもあり得る話です。

 

ただ、契約の解約は売主、買主の双方合意が必要ですから、最終的には話合いは必要でしょう。

 

不動産売買契約の難しさ

Tさんのような売買契約の形態はごく稀な事例です。ここからは一般的な不動産売買契約の形態についてお伝えしましょう。

 

不動産売買契約は契約時に手付金と称して売買代金の一部を買主が売主に支払います。そして物件の引渡の際に決済金、引渡金と称して売買代金の残代金を支払うことになります。この流れが一番多い契約形態です。

ここで手付金の意味合いは解約手付と言われ、売主または買主が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を返すことで契約を解除できるというものです。

 

Tさんも契約の際に数十万円でもいいから手付金を払っていれば、契約の履行に着手するまではこの数十万円の手付金を放棄してしまえば契約は解約できたということになります。

それだけ、手付金を払う売買契約にはそれなりの意味があり、契約後に不測の事態に対処するにはエンドユーザーである買主にとっては有益な契約形態といえます。

 

ところがTさんのように、何も知らずに不動産会社の言われるがまま、手付金はなしで中間金の支払いをした契約形態になると、お伝えしました通り、買主は契約の履行に着手したとみなされ解約したいとなれば違約金を払わないと解約できないということになります。

このように法律に定められた内容が契約書に反映されてしまうと、その法律をよく熟知していないとエンドユーザーとしては不利な状況に追い込まれます。

 

先ほどのように関係書面にサインしてしまうと書面を理解して契約締結したということになり、契約後にいくら騒いでも元に戻すことは非常に難しくなります。

特に、売主が不動産会社、いわゆる宅建業者の場合には、相手方はプロですから情報弱者であるエンドユーザーには契約前から有利な立場であることを認識すべきです。宅建業者は自分らに有利になるように話を進めていきます。

 

例えば、新築物件では売り難い場所や階数から売っていかないと完売には時間がかかります。

したがって、いつでも売れる場所や階数は既に「成約済み」とか「申し込み済み」とし売り難い物件を進めてくるのです。

 

あるお客様とマンション購入の同行をした時、お客様の希望物件は既に「成約済み」とあったので諦めて帰ることにしました。帰りがてら「今晩、不動産会社から電話が来ると思いますよ」とそのお客様に話をしたら、その晩、本当に電話が来て「ご希望の物件の先約の方が今しがたローン不可となりましたので、いかがでしょうか?」と・・・

不動産業界のあるある話です。

 

手付金のない不動産売買契約は危険

「手付金なし」で不動産売買契約した場合、契約を解約しなければならない事情が生じたときに、手付金放棄による契約解除ができません。

不動産会社に「手付金が不要」だからと勧められて安易に契約することは、大変危険であることを認識して欲しいと思います。

 

 

不動産会社はできる限り早く契約まで持ち込みたいので、色々な手段を使ってきます。

 

マンションのカタログだけ欲しいと思って販売センターに行ったら、契約する話までになってしまい、高額な手付金がすぐに用意できないと申し出しても、「手付金はお支払いしなくても契約はできますので大丈夫です。」なんて言われたら要注意です。

 

手付金なしで売買契約したTさんは、現在、売主と契約の解約について話合い中。この先、どういった結果になるかは不明です。

 

【不動産売買に関するお問い合わせはこちら】

アネシスプランニング株式会社

寺岡 孝

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