注文住宅の契約を解約する場合に違約金はかかるのか?

 

先日、こんな相談があった。

 

『ハウスメーカーで注文住宅の契約をしましたが、解約をしたいと担当者に言ったら違約金がかかるので解約はやめた方がいいと言われました。
でも、私たちは解約したいのですが違約金は払わないといけないのでしょうか?』


加えて、こんなコメントもいただいた。
『インターネットでも調べたのですが、違約金は契約金額の1割程度はかかるとかあって不安です。』


当方でもネットで検索してみたが、中には不可解な記事が見受けられたのでピックアップしてみよう。

 

<不可解な記事>

『注文住宅の契約解約にかかる違約金は、契約金額に対して約1割が目安で、契約金額が5,000万円ならば違約金は500万円です。』とあり、

しかも『宅建業法で違約金と損害金の合計は契約金額の2割までと決められていますが、その金額よりも安価ですから安心です。』とのこと。

 

この記事は注文住宅の契約ごとである「請負契約」と、不動産の売り買いの契約ごとである「売買契約」をごっちゃにしているのである。

請負契約の場合では違約金の上限を定める場合はなく、あくまでも損害を賠償することで契約を解約できるものとしている。

 

民法第641条(注文者による契約の解除)

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

 

したがって、契約金額の1割ぐらいが違約金としてかかる等々はおかしいといえるだろう。

 

例えば、上記の契約金額が5,000万円の請負契約を解約しようとすれば、工事着手前であれば、それまでにかかった費用を実質精算して解約となる。

敷地調査や地盤調査を行った場合や詳細設計や確認申請をした場合の費用を注文者は請負者に払って解約ことになる。

 

したがって、解約時にかかる賠償額はせいぜい数十万円の話で500万円もかかるという場合にはよほどの作業をした場合に限られる。

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注文住宅の工事請負契約の解約に関する相談事例

<相談内容>

大阪が本社の住宅メーカーと昨年の7月末付けで工事請負契約を結びました。

仮契約金10,000円、手付金1,000,000円を支払いました。

しかし担当者の杜撰な対応に不信感を抱き、同年の11月に直接解約を申し出たところ、担当者も非を認めていたのですんなり解約出来るのかと思っていましたが、約款に記載された請負金額およそ2400万の10%の240万の請求を担当者より受けました。

なぜこちら側がさらに請求されなければならないのかと担当者へ返信したところ、その年の翌月に今度は担当者の上司から、信頼回復のため本契約の履行を続けたいと回答がきました。

話がかみ合わない上に信頼回復のための具体的な案の記載がないため、再度、なぜ請求されなければならないのかと回答を求めました。

返信が何もないまま年を越しましたので、担当者では埒が明かないと思い、1月初めに本社充てにメールをしたところまた同じような文面を担当者の上司から受けました。

その後、再び本社あてにメールを送信したところ、

今度は社長が対応してくださり、事情を話したら契約時に入金した101万の破棄で契約を白紙撤回すると10日後に連絡がありました。

しかし、このメーカーと本契約を結ぶ前に仮測量を1回行い、本契約を結んでから打合せ2回、図面を1枚描いてもらってだけのため、消費者契約法第9条1項の平均的損害額を超えているのでは無いかと問い合わせました。

すると、経費内訳のデータが社長より送られてきました。

内容は、

仮測量費70,000円

現地調査費50,000円

役所調査費20,000円

プラン作成費(建築家の先生含む)←誰? 300,000円

移動費30,000円

銀行事前審査代理費100,000円

打合せ図面製作費250,000円

確認申請費500,000円

地盤調査100,000円

合計1,420,000円

行っていない確認申請費、詳細の分らないプラン作成費、銀行事前審査代理費、何をどこまで移動したか分からない移動費等、金額も莫大で支離滅裂です。

注文者としては仮測量、打合せ2回、図面1回の料金以外は払うつもりは無いと考えていますが社長がこのような態度ですので、素人では埒が明きません。

今後の対応をどの様にすればよいのでしょうか。

 

<回答とその対処法について>

当方では工事請負契約の解約に関するサポートを行っておりますが、今回の事案は契約書の約款に解約の場合には違約金として請負代金の1割を支払う旨の文言がありました。

この約款の文言の効力はなく、問題のある約款と言えます。

その理由としては、そもそも工事請負契約の解約については、法的には注文者はいつでも解約できる立ち位置にいます。

但し、解約までに要した費用を請負者に賠償することが必要になります。

解約の申し出をした際には、それまでの実費費用を注文者が負担すれば解約できるというものになります。

例えば、土地の測量をしたとか地盤調査をしたという場合であれば、この費用を支払って解約することになります。

ところが、いざ解約となるとこの賠償金額で揉める場合が大半です。

では、この賠償費用はどこまで支払うべきなのでしょうか?

 

ここでは、具体的な話として相談者の事案について考えてみましょう。

注文者は以下の通りに請負者に通知しました。

例えば、

プラン作成費

そもそもプラン作成は貴社の営業経費に該当し、注文者に請求するものではありませんし、当初の請求金額と今回の提示金額の差がありすぎ費用としての信頼度がありません。

したがって、私(注文者)は支払う必要はありません。

打ち合わせ図面製作費

そもそも図面製作は請負者の営業経費に該当し、注文者に請求するものではありません。また、当初の請求金額と今回の提示金額の差がありすぎ費用としての信頼度がありません。

したがって、私(注文者)は支払う必要はありません。

確認申請手数料

担当者より確認申請を行ったという報告を受けておりませんし、今般の請負者からの電子メールでは確認申請がなされたという申請書等の控えの成果物すらなく架空請求としか言えません。また、当初の請求金額と今回の提示金額の差がありすぎ費用としての信頼度がありません。

したがって、私(注文者)は支払う必要はありません。

以上のような内容で通知して、これらの費用請求は却下してもらいました。

請負者は往々にして多額の費用請求をしてきますが、その費用が妥当なものか、あるいは実際に行われた作業なのかなどを吟味する必要があります。

何度か、書面のやり取りで最終的には請負者から約90万円の返還をしてもらい工事請負契約の解約ができました。

 

法的な側面について

消費者契約法では第9条1号に、消費者契約の解除に伴う違約金等の定めは、該当する業者に生じる平均的な損害の額を超える部分は無効としています。

請求額はこの平均的な損害額を超えている感じです。

 

契約締結後の間もない段階での契約解除の裁判判例としては、千葉地裁平成16年7月28日判決で契約解除の違約金は実際に支出した10万円であるという判例があります。

 

その他、建築業者の何らかの違法性があれば既に支払済みの金銭は全額返金という事例もありました。

 

最終的には内容証明郵便で解約の申し出を行いながら、請負者との合意点を見出して解約にいたる流れにはなります。

 

工事請負契約の解約にお悩みの場合には一度、ご相談されてみてはと思います。

 

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