Egg Coddler(Boiler) | ・・・夕方日記・・・

Egg Coddler(Boiler)


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謎の宇宙船のようですが、卵をゆでるための銀器です。


分解するとこんなふうになっていて、

左から三本脚のついた土台、

奥がふたで、手前が卵をはめこむための持ち手のついた網←?

右端が両面使えるオイル入れ、容量が多め少なめと

ひっくり返して使い分けられる仕組みです。


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大きく華やかに変身したみたいな銀色のたまご+

金魚すくいの網を彷彿とさせるたまご置き+

両面ひしゃくみたいなオイル入れと

おもしろアンテナが最大レベルで、トチーが連れ帰ってまいりました。


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グラスゴーのDavis&Sons、1897-1920年に作られたものです。

ふたには羊歯にばら、プリムローズ(かな?)のような花の装飾が。


脚にもお花がひとつ+つま先もよく見ると花を伏せたような形になっています。

ここの曲線と透かし~花を抱き込んで

女の人がスカートを広げているみたいに着地するのが壷でした。


エボニーの持ち手の形もいいです。

短いのですが持ちやすい!

実際、たまごを4つ入れて持ち上げるとわりと重量があるので

見た目だけでなく、使い勝手も考えられているんだと実感しました。


エッグコドラーともエッグボイラーとも呼ぶそうですが、

アンティークという単語を入れて検索してみたところ

coddlerの方が一万件ほど多かったので、記事の中ではコドラーでいきます(^^ゞ


母と二人で調べたのですが、アンティークのエッグコドラーの使い方や

実際に卵をゆでている方がまったく見つからず

結局、自己流で見切り発車になりました;



柔らかめの半熟を目標に

片手鍋で水から卵をゆで、適当なところでエッグコドラーにお湯ごと移動。

ティーキャンドルで温めて、その間にお茶の仕度をしました。


  (陶器のココットに卵を割り入れ、ふたをして湯煎で柔らかくゆでたものも

  Coddled Eggというそうで、こちらの方が一般的なようです。

  cf. マーサ・スチュアート先生のレシピ:

  ロイヤルウースターなど、アンティークの陶器のエッグコドラーもありました)


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ゆで卵が登場するお茶で最初に思い出すのが、

『ライオンと魔女』 で、ルーシィが衣装簞笥を抜けて最初にナルニアに行ったとき、

タムナスさんの家でお茶をごちそうになる場面です。


それは、すてきなお茶のもてなしでした。やわらかくゆでたきれいな茶色の卵が

めいめいに一つずつ出ましたし、トーストは、小イワシをのせたもの、

バターをぬったもの、ミツをつけたものがありました。

そのつぎには、砂糖をかけたお菓子が出てきました(p.26)。


これを微妙に踏襲して、バターをぬったトーストと、

お向かいの方が採ってきてくれたみかんで

トチーが作ってくれたオレンジピールを使って

ピール入りのパウンドケーキを焼いて並べました。


イギリスではマーマレード=朝なので、

午後のお茶にみかんもの?はどうなのかなと思われる方がいらっしゃるかと存じますが

人様の気持ちがこもっているということでお目こぼし頂けると幸いです、申し訳ありません;


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密閉性が高くてキャンドルでもしっかり温まりました。

しかもなぜか卵がおいしい!

ゆっくり熱が入るからなのでしょうか、いつもの卵がほんとにおいしく感じました。


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そして何より、とにかくおもしろいです。

フォルムは端正なのですが、よく見るとどこかユーモアを残しているようで、

ふたを開けたときに卵が並んでいる光景がもう楽しすぎる。


大きな銀色の卵の中でリアル卵がゆでられてるというところから

なんだかふふふとなりますし、

みんなで「そろそろかな」と見守っているのがとても和みました。

小学校の理科の時間、アルコールランプの実験を思い出しました←間違い


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『ライオンと魔女』25ページの挿絵では、

テーブルの上のお茶道具やお菓子類とは別に

肘掛け椅子でくつろぐタムナスさんの足もとと、

ルーシィの手前の足台?にエッグカップが描いてあります。


卵は贅沢品だったので、お茶の時間に卵が出るのは

嬉しいというか、ちょっと特別感のあることだったのかなと思います。


それをゆでる過程ごと、みんなで楽しんでしまおうという一種のほがらかさが、

「どう?」みたいになる要素を内包しがちなお茶の銀器と少し違って、

形はちょっとびっくりしますが;どこかほっとする空気になっているのかなとも思いました。


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冷静に考えるとゆで卵とトーストなのですが;

心底「お茶をいただきました」という気になれたのもスバラシイ。

森茉莉 の言うとおり「卵は、幸福と楽しさの原泉の中の一つ」なんだとしみじみ実感しました。


思っていたよりも火が入っていたので、水からでも大丈夫なのかな?

また帰ったらいろいろ挑戦してみたいです。




<おまけ>


coddleが気になったので、少し調べてみました。


(卵などを)やわらかく茹でるという意味のcoddle は

もともとラテン語のcoldum(温かい飲みもの)から来ているそうです。


そしてなんと、ビートン夫人の料理本(① )には

たまごのコドルの仕方とボイルの仕方、それぞれのレシピが載っていましたヽ(゚◇゚ )ノ


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EGG, CODDLED


INGREDIENTS.------- 1 new-laid egg.
METHOD.-----Place the egg in boiling water, put on the lid, and let the stewpan

stand for 7 or 8 minutes where the will keep hot without simmering.

An egg cooked in this mannner is more easily digested than when boiled in the ordinary way. (p.235)


卵を沸かしたお湯に入れ、ふたをして、シチューパンでお鍋を沸騰させない程度に熱して

7~8分おきます。

この方法で調理された卵は、通常の方法でゆでたものよりも、より消化されやすくなります。


これに対して、



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EGGS, BOILED.


METHOD-----Eggs for boiling cannot be too fresh, but a longer time

should be allowed for boiling a new-laid egg than one that is 3 or 4 days old.

Have ready a saucepan of boiling water, put the eggs into it gently with a spoon,

letting the spoon touch withdrawn, to avoid cracking the shell.

For those who like eggs lightly boiled, 3 to 3 1/2 minutes will be found sufficient,

4 minutes' gentle boiling will lightly coagulate the white, and 5 minutes will set firmly.

Eggs for salads and sandwiches should be allowed to boil for 10 minutes.

Cracking the shell and allowing the egg to remain in water until cold prevents

a dark rim forming round the yolk. (p.238)


茹でるための卵はいくら新鮮にしてもしすぎるということはありませんが、

34日経った卵よりも産みたての方がゆでるのに時間がかかります。

シチューパンにお湯を沸かし、スプーンで優しくたまごを入れ、殻にひびを入れないように引き上げます。

軽めに茹でた卵が好きな人には、3分から3分半ゆでれば充分です。

4分ほど優しくゆでると白身が軽く固まり、5分でしっかりと固まります。

サラダやサンドイッチに使う場合は10分ほどゆでます。

殻にひびを入れ、冷えるまで水につけておくと、黄身の周りに黒ずんだ部分ができにくくなります。


これによると、沸かしたままゆで続けて好みの堅さになるよう作るのが boiled egg、

沸騰させずにとろとろと温めて、より柔らかく仕上げたのが coddled egg ということなのだと思います。


小さな火でゆっくり温めていられるこのエッグコドラーは

「沸騰させずに熱し」続けるには最適な作りになっているうえ、

みんなでお茶を飲んでいれば自然に「7~8分おく」ことになります。


まさにeggをcoddleするべく作られた銀器なんだと

本当に腑に落ちました。


ですので、とろりと柔らかい状態のゆで卵をつくる道具ということで

Egg coddlerという呼び方をされることがより多いのでしょうか。


coddled egg も boiled eggも、訳すとどちらも「ゆでたまご」なのですが

奥が深いなぁと本当におもしろかったです。



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ただ、『ライオンと魔女』の引用した箇所は、原文では

There was a nice brown egg, lightly boiled,  となっていて

coddle は使われていません。


また、オースティンの『エマ』には

エマのお父さんで、自分は体が弱いと思っている(実際は丈夫)ヘンリー・ウッドハウス氏が

お客さんに卵を勧める場面があります。


"Mrs. Bates, let me propose your venturing on one of these eggs.

An egg boiled very soft is not unwholesome.

Serle understands boiling an egg better than any body. ・・・


「ベイツ夫人、ひとつ卵を召し上がってみませんか?

大変やわらかくゆでておりますから、体に悪いことはありません。

うちのメイドのサールは他の誰よりも、卵のゆで方を知っていますよ。・・・(姉訳;)


こちらもboilが使われています。

(やわらかくゆでた卵が消化にいいというところが

ビートン夫人と同じなのもおもしろい)


ほかに卵が出てくる話はなかったかなと

家にある洋書を当たってみたのですが、今のところ見つかりませんでした;


いつか何かで見つけることができるといいなと思います。