森茉莉『貧乏サヴァラン』 | ・・・夕方日記・・・

森茉莉『貧乏サヴァラン』

貧乏サヴァラン (ちくま文庫)

貧乏サヴァラン (ちくま文庫)



この人はなんだか、

楽しい我が儘がたくさん入ったガラス瓶みたいな気がします。


ちょっと古くて優雅な、フランスのアンティークのような厚手のガラス瓶に、

きれいな包み紙のキャンディや片方だけのイヤリングや

中途半端な長さのリボンや謎の書き付けやスカルのボタンやら、

ココロひかれるいろいろなものが詰めこんであって、

文章を読むと、その中のものをひとつひとつ取り出しているような印象を受けるのです。


いい意味でお嬢さん育ちで、

人の顔色を伺ったり、何かにおもねったり、必要以上に不幸がるようなところがなく、

感じたことや考えをスパンと言い切って、でもそれが鼻につく印象ではなく、

自分を客観的に見る余裕とユーモアは備えている、というところがさすがだなぁと思います。


身の回りのことや思ったこと、小さいころの記憶など、

さまざまな事柄が食べ物の記憶とともに書かれています。


トマトと卵が好きなところに親近感が。

バターもよく出てきます。


しかも森茉莉、自分の生活を「紅茶と睡眠との、絶えまのないくり返し」というとおり、

いつも紅茶を飲んでいるらしく、

「冬は温紅茶、夏は冷紅茶が、何がなんでも必要」と述べ、

「夜中の冷紅茶」を以下のような方法で作っています。


 「リプトン・ティー・バッグ」を「二袋急須に入れ、辺りに跳び散るくらいの熱湯を注」いだら、

 それを「例の洋杯に氷を入れた上から注ぐと、英国製の紅茶はハヴァナの薫香か、

 ナポレオン・ブランディーの香気か、というような香いを発する。(p.15)」


なので、オンザロック(濃いめに入れた紅茶を氷の入ったグラスに注ぐ方法)で作るアイスティは

うちでは森茉莉方式と勝手に命名。

なんだかお墨付きをもらった感じに(錯覚


「私のメニュウ」には、「ある日」と題して、朝晩の食事が箇条書きで書いてあります。

父の鴎外が、津和野出身+ドイツ留学が長かったことから、

森家の食事は、和食と洋食の混ざったような不思議なメニューだったらしいのです。


なのでなぜかバターがお味噌汁に入ったり、

鰺の塩焼きに洋風スープが合わせてあったり、

ええ?と思うところで洋食めいた食材がぽーんとあらわれるのが妙におもしろい。


そんな森茉莉ごはん(?)の組み合わせで、たまに作るのがこちらです。



森茉莉ごはん2    


[ある日](p.173)

○枝豆ハム入りごはん

 枝豆を塩少々入れて青く茹で、ハムを細く切り、炊きあがったご飯に混ぜる。

○あさりスープ

 煮立った湯にあさりを殻ごと入れ、同時に牛乳(五人分で六、七勺)、塩、コショウを入れ、

 貝が開いたら火から下ろし、パセリを散らす。 

○生トマトとそら豆の塩ゆで


ここでもいきなりあさり汁に牛乳が参加。

このままだと自信がないので(一勺って何ccなんだらふ、

あさりの水煮缶とコンソメでポタージュのようにしています。


ハムもほんとうは細切りですが、こちらの方が簡単なので四角で。

あと前日の残り、鰺のチーズパン粉焼きが残っていたので

これものっています(だんだん外れていくぞ


森茉莉ごはん3    森茉莉ごはん4    森茉莉ごはん5


すべての著作を全部を読んではいないので、

これから少しずつゆっくり読みたいなと思っています。

(武田百合子と須賀敦子とこの人は、

お楽しみでなるべく先へとっておきたいというのもあるのでした)



<おまけ>

いつか作ってみたい夢献立がこちら。


[ある日](p.176)

○ハム二切れとチーズ一切れの皿

○桃のジャム

 水蜜桃を茹で、くずれたら潰して砂糖を全量の半分入れ、食紅で薄いばら色に染め煮詰める。

○パセリバタ

 バタにパセリの粉切りを混ぜ、小さくお団子にし、氷を入れた水に浮かせる。


そもそも「全量」って、いくらなのでせう…?;

こういうときに料理の才能があるといいなと思います(苦笑