“古いとても大きな何か”

 

 

明香里はそれが何なのか理解できなかったが、

それに似た感覚を感じ取る瞬間は他にもあった。

 

 

普段使っている服や湯飲み茶碗、

 

生命力溢れる家の庭の草花、

 

祖父や祖母の背中に抱えている

厳しい時代を生き抜いてきた術、

 

ピンと張った糸のような空気を全身に纏って

仕事に出かける父、

 

明香里の身の回りにある全てのものが、

その物体から発せられている空気として明香里に主張してくるので、時々習っていたピアノをやけくそに弾いて

自分の中に溜まったものを吐き出さなければならなかった。

 

 

 

 

つづく