それは一生忘れることが出来ません。あの日私は家族とNYを旅行中でした。


父の希望であったハドソンリバーのディナークルーズ。その船に乗り込んだ頃から、NY上空は雲が立ち込めていました。


船が出港しようとした時、空を引き裂くような稲妻が走り、大粒の雨が降ってきたのです。


あの時の光と轟音はすさまじく、今でも目と耳に焼きついています。あれは今思えば何だったのでしょうか。翌日起こる事件の神の啓示だったのでしょうか。


クルーズ中、外は真っ暗で何も見えずがっかりしていたのですが、まもなく港に着くというところで、さっきまで立ち込めていた暗雲が嘘のように消え去り、目の前に巨大なワールドトレードセンターが瞬く光を放ち現れたのでした。


それが最後の夜景になるとは、船上にいた者たちはもちろんのこと世界の誰が思ったことでしょうか。父はただただシャッターを切るのでした。