「もしも今何らかの方法で私が死んだらどうしますか」
彼女の突然の問いに僕は一瞬思考を停止する。
なんだよ突然、悪い冗談。普通ならそんな感じで軽く受け流すものなのかもしれない。
だがそうはいかない。なぜなら僕が特殊であるように彼女もまた特殊な人間であるからだ。
いや、特殊という言い方は差別要素があるかもしれない。この国、この星の人類で僕らと同様の存在は沢山沢山いる。
ただまわりが特殊だと攻め立てるだけで、ありふれた普通の存在。
いわゆる僕らは、精神病患者、というものなのだ。
「どうしますか」
彼女が口を閉ざした僕へもう一度問う。
まっすぐ僕を見上げるその瞳は、その言葉を冗談や興味本位に受け取らせないなにかがあった。
彼女は死のうとしているのだ。
今、僕という存在の目の前で、自らの命を絶とうとしているのだ。
言葉が頭の中でぐるぐると回って僕を混乱させていく。
心臓はいやだいやだと暴れだし、そんなこと考えたくないと脳が酸素を求めなくなる。
彼女の姿が霞んでいく。足元がぐにゃりと歪み沈みそうになる。
でもだめだ、逃げてはいけない。
ここで僕がこの質問から逃げてしまったら現実から逃げてしまったら、次目覚めたときには、彼女はここに存在しないのだ。
「死なないで」
声にならない声で必死に搾り出したのはたった一言の我侭。
次の日も彼女は生きていた。
僕は彼女の死を代わってあげたから死んでしまった。
死にたかったのは僕だよ。
何を言ってるかわからないかもしれないけれど。
すべて僕の幻聴で幻覚で妄想だ。
こんなの誰にもわからないだろうけどね。