<水素への大きな期待>

"High Hopes for Hydrogen"


(

マシュー・メンチ

テネシー大学

教授著

 フォーリン・アフェアーズ誌11/12月号)


・自動車燃料や発電用に、水素が有望であることは明白だった。しかし、数年前の米国では、水素・燃料電池の実用化は難しいと判断されていた。(ノーベル物理学賞受賞の)スティーブン・チュー米エネルギー長官が、2009年に「この分野での『奇跡』は起こりそうにない。」と発言。実用化には「4つの奇跡」、つまり、水素製造、貯蔵、流通インフラ、燃料電池性能で飛躍的なブレークスルーが必須だが、同時には起こらないと指摘し、米国政府は水素分野の研究開発助成を大幅に削減。

・しかし、日本と韓国の米国特許取得が伸びるなど水素・燃料電池技術は大きな進展を遂げ、奇跡が起こりつつある。既に実用化され、トヨタ「ミライ」という燃料電池車が市場投入された。また、日本のエネファームが伸び、定置型発電も有望な成長分野になっている。

・もっとも、広範な適用にはまだ時間がかかる。最大のハードルは安全性。既存規則では不十分で、規則改正には多くの利害関係者との調整が必要で、長いプロセスになる。

・加えて、他の技術との競争を勝ち抜く必要がある。自動車ではハイブリッドや電気自動車がが先行し、電源でも現時点では天然ガス等の方が魅力的。

・燃料電池自動車の普及にはインフラ整備が課題であり、政治的意思も重要な要因になる。

・ハードルはあるが、水素は世界を大きく変える可能性がある。現状の開発や実用化では日本や韓国や欧州がリードし、米国政府の対応が遅れている。