脳認知科学の第一人者 藤田一郎先生のお話を聞いてきました。
脳の科学は進化していますね。
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藤田先生のHPです。
http://www2.bpe.es.osaka-u.ac.jp/
Q ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は、セキュリティ(兵器やウソ発見器)にも関連するが、どこまで発展するのか。考えている中身が分かるようなことがあるのか?
A 3年前とでは、状況が変わってきた。3年前なら、統合失調症の人が「頭の中を覗かれている」と言ってきても、そんなことはないと明確に答えられた。しかし、MRIだと空間分解能が低いのだが、それでも視覚野のパターンが読めるようになってきた。ただし、視覚野は構造が明らかになってきているが、感情は構造も未解明の領域なので、これはなかなか難しい。
Q SQUID(Superconducting Quantum Interference Device超伝導量子干渉素子)や微小磁場測定では空間分解能1mmという話も出ているがどうか。
A 血流を測るので、最小測定限界が脳の毛細血管の微細構造が限界となる。脳細胞を読み取るわけではない。
Q 藤田先生のような世界トップ研究を行政が支援するにはどうしたらよいか。単に資金ということではないと思うが、他方で、ある程度の資金は必要だろう。その際でも、例えば、中心研究者型、拠点型、バーチャル型など多様な支援形態が考えられる。逆に、そもそもcuriosity-drivenの基礎研究では行政が介入しない方がよいのか。
A (考え込んで)よくわからない。全体として状況は悪くなっている。若者が大変だ。自分の子供には研究者を薦めない。ポスドク、任期付で保証がない。若手が育たない。
資金配分も難しい。非常に優秀な先輩が地方大学にいる。研究費は、大学、学部と上前を取られて分配されるので、年間30万円。これでは論文も書けない。例えば、研究用のイモリの餌の赤虫を買えない。学生が、アルバイトをして、自己調達している。アルバイト先の店長に赤虫を恵んでもらっている。自分の場合には、支援してもらっているが、こうした支援がなければ、世界と戦うことはできない。どうしたらよいのか自分には分からないが、状況は悪くなっている。特に、若手。。。
脳科学の分野では、分子生物系の人が大半で、私のようにシステム発想の人間は少数派。大学の勢力図を見ていると、いつの間にか、分子生物系の人が空席を埋めていって多数派が更に強化されている。これは曰く言い難い問題。それから、有名ジャーナルに論文が載ると、研究費がもらえて、論文を更に書くと、引用数も増えて、更に大きな資金が得られるようになる自己増幅のメカニズムが現状である。自分たちのような少数派の分野では、引用側の人数も少ないので引用数ではどうしても不利になる。学問領域の濃淡は3~4年で動いていく。政策も同様に短期間で動いてしまうので、どうしようもない。自分の信じることをやるしかないと割り切るしかない。自分には、(これまでの実績・成果もあって)誰かが私の研究を見てくれている安心感があるが、これから世に出て行こうとする若手には厳しい。(有名誌掲載や引用数を物差しとする)今の評価システムを前提にして、のし上がらないといけない。流行の研究を追うとしてもやむを得ない。
Q (特定の細胞が認識を担う)認識細胞説と(細胞は個々のコードのみを担いアスキーコードのように16個揃って意味が出る)分散細胞説との中間というのが真実ということで、柱状構造(コラム)をご説明いただいたが、例えば、脳梗塞患者で言語を失っても、その後、ST(言語聴覚士)の熱心な訓練で言語機能を回復する例もあるが、これはどう理解したらよいのか。
A 幾つかの話が重なってくる。脳梗塞の急性期には、梗塞の起きて死んでしまった細胞だけでなく周辺の細胞も痛んでしまう。しかし、その後、血流が戻ると機能を回復する部分がある。これで機能が戻る部分がある。それから、脳は左右で補完するので、片方が梗塞になっても、もう一方が動いて、機能が戻る。さらに、周辺の脳細胞が機能を代替することも知られている。子供の脳は、仮に、片方がなくなっても、ちゃんと機能する。しかし、大人の場合には、部位によって脳細胞自体が分化するので、単純な代替は困難なのだが、それでも他の部位が失われた機能を補完することが知られている。一例を挙げると、マントヒヒの上肢神経を切断した研究者がいて、訴訟になった。15年後に決着して、マントヒヒも処分されそうになったが、NIH(米国立保健院)の高名な研究者が、処分前にマントヒヒの脳を調べさせた。腕を長期間使わなくなって空白になった脳の領域が何をしているのかということを調べた。実は、顔面の機能を担っていた。これは、元々の脳の位置で1cmも違う部位だった。
