http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbp000027052009

(抜粋)

■世界を驚かせたバフェット氏の資本参加

 昨年9月、バフェット氏の投資判断は世界をあっと言わせた。二次電池世界大手で新興自動車メーカーBYD23000万ドルを投じ、約10%を取得。BYDの電池事業の高い実力を見据えた投資だが、電気自動車はいまだビジネスモデルが明確になっていない新興分野で、BYDは自動車産業に参入してわずか5年の後発組。投資の堅実さで知られるバフェット氏の行動はさまざまな憶測を呼んだが、BYDの株価は高騰し、知名度向上にも大きく貢献した。

 09年1月のデトロイト、4月の上海の各モーターショーで電気自動車を出展し、年内には「プラグイン・ハイブリッド車」を製品化するなど、一連の積極策で自動車業界の注目の的になった。525日には独フォルクスワーゲン(VW)が電気自動車でBYDと戦略提携すると発表。

 バフェット氏はすでにBYDの米国での販路整備について協議を持ちかけ、傘下企業を通じて電気自動車に必須となる充電ステーションのネットワーク整備に乗り出そうとしている。今のところ、バフェット氏の投資判断は的中しているようにみえるが、BYDにとっての正念場はまさにこれからだろう。


■電池と自動車のシナジーめざすBYD

 日本では知名度が低いBYDだが、電池業界では世界トップクラスだ。リチウムイオン電池の世界シェアは23位とされ、携帯向けではトップシェアを誇る。創業者の王伝福氏は研究者で、BYDを設立したのは1995年。当時リチウムイオン電池は日本企業の独壇場だったが、王氏は生産工程を徹底的に細分化し、コア設備だけを自社開発し、それ以外は中国の安い労働力を使う人海戦術で、4割ものコスト削減を実現。1997年のアジア金融危機をきっかけに価格競争力で、瞬く間に世界大手に上りつめた。

 攻勢は電池にとどまらない。03年に27億元(40億円)で現地中小メーカーの秦川汽車を買収し、自動車産業に参入。自動車部門は小型車を中心に順調に業績を伸ばし、強みである電池との究極のシナジーをめざして電気自動車の開発に乗り出した。

 環境・省エネの世界的潮流の中で、王氏は強気一辺倒。2015年には中国市場トップ、2025年には1000万台の販売達成など壮大な目標を掲げ、中国各地で積極展開している。2008年度のBYDの自動車販売台数は8万台で、目標は無謀とも映るが、今までの成長軌道をみる限り達成不可能と言い切れることもできない。


■「コピー車」メーカーというもう1つの顔

 飛ぶ鳥を落とす勢いのBYDだが、新興企業にありがちな死角も抱える。BYDの新型車T6はポルシェのCayenneと驚くほど似ている。ミニバンM6も、トヨタのPREVIA(日本名エスティマ)のコピーだと話題になった。

 

■電池だけでは成功しない次世代自動車

 電気自動車でも、安全性、耐久性などが不可欠。最近明らかになったBYD車のエアバック欠陥問題に代表されるように、自動車メーカーとしての成功は電池だけでは成立しない。

 中国の電力は大部分を石炭で賄っている。電気自動車が普及しても、発電構造が変わらない限り、「エコ」にならない。BYD1社の問題ではないが、次世代自動車のリーディングカンパニーをめざすうえで、避けて通れない課題となるだろう。