http://www.jst.go.jp/pr/inv-p.html

規制とイノベーションの関係です。


●JST主催公開討論「イノベーションと規制を考える」

(敬称略)

阿部博之(JST:挨拶) イノベーションが進んでも、制度・法律は、現状の反映であり対応は遅れる。最近は、政治への専門家のアドバイザー機能を強化している。また、イノベーションに先行して、規制・制度を整える必要もでてきている。

野原佐和子(イプシ・マーケティング研究所) JST斎藤主幹作成のイラストを使って説明したい。技術革新で社会・経済の環境変化が生じている。事前にすべて設計するプレアクティブな制度は、過度にリスクに敏感になりすぎる。柔軟に対応するリアクティブな制度への転換が必要。

尾崎美和子(早大) 脳デバイス研究をしている。脳は電気的に制御・改善できる。日本製部品をアメリカに出して、医療機器に組み立てて、再輸入して使っている。日本では医師法、薬事法、電波法、保険法の制約でイノベーションができない。再輸入した高い製品で治療している。最近は、秘密保持が厳しくなって、日本で治療を受けられないこともでてきた。

梶浦(日立) ITイノベーション。日本の制度は、ICT確立前の全体設計になっている。韓国では印鑑を廃止した。スウェーデンでは紙の請求書は無視してよい。日本でも再設計が必要。その際に、コード体系が大切。5W1Hの統一が要る。誰Who:共通IDはない。どこWhere:共通ルールはない。ICカードは、40年前の発明だが、今までは、改札一つ一つが基地局として扱われた。経団連の努力もあり、今は駅単位まで改善された。

斎藤(新日石) 低炭素。2002年、燃料電池6法律28項目見直しが行われ、実証試験ができるようになった。規制再点検で、水素のコストが30~40円/立米下がった。水素の立米とはリッターとほぼ同じと思ってよい。2015年に燃料電池自動車が普及開始になる。世界の自動車メーカー8社も事業化を宣言している。第4のエネルギーインフラを創る必要がある。高圧ガス保安法の規制があるが、技術が進歩して、それより高圧のものができるようになった。建築基準法でも、700立米まではOKだが、これは10台分の貯蔵量に過ぎない。今はガソリンステーションには1日平均100台の車が来る。道路交通法も、車が故障で止まったときは、JAFが来るが、水素は道路上で充填できない。今までは既存の規制を読替で対応してきたが、実用化段階での水素供給を念頭に置いた制度に変えていく必要がある。

中島(リーテム) 同じ廃棄物でも、産業か家庭かで扱いが異なる。それぞれ許可が必要。海外流出も野放し。貴金属やレアメタルが推定5%含まれるが、止める規制がない。リサイクルは雇用機会創出になる。高齢者・障害者にもよい。技術面では、銅鉱石系は回収できるが、タンタル等はとれない。銅精錬所も5か所なので、集めやすい仕組みや、濃縮小型プラントも検討している。精錬所では金は10g/トン以上でないと買ってくれないので、濃縮する。色んな法律がからんでいる。自治体の一般廃棄物は産廃に持っていけない。他の自治体にも頼めない。利権が絡む。一緒に考えたい。

中村(ユーラスエナジー)20年前にカリフォルニアでスタート。5カ国で風力発電している。再生エネルギーは、社会・生活を根本から変える。国のエネルギー政策での再生可能エネルギーの位置付けは不明確。国の導入目標はない。数十の許認可が要る。これらはコストアップになる。出力変動に対応するシステム・技術が必要。

大和雅之(女子医大)口の細胞で角膜治療。治験は欧州。日本ではできていない。日本で開発したメバロチン(一時、世界最高売上)も、欧州承認、米国承認の後、日本に導入された。ドラッグラグ。世界の新薬の3割は、日本では治験していない。日本では治験期間が長く2倍かかる。審査官は米の1/10。升添大臣は3倍増ということで努力された。審査官の質を維持できるのか。試験段階のものをPL法対象外にする規制が、アメリカにはあるが、日本にはない。治験の体制も整っていない。皆保険なので、治験を受けてもらえない。

野原:会場から。

薬師寺泰蔵(慶應大) 人の問題。排ガス規制。環境庁の橋本氏がマスキー法類似規制を導入しようとしたが、業界は大反対。しかし、ホンダが触媒で対応し、一気にイノベーションが進んだ。これも人の問題。見えない規制もある。北九州の研究所で、総務省等の規制が邪魔した。

渡辺(文科省科学技術・学術政策局次長) 原子力安全官も兼ねている。JST北京事務所長も経験した。中国での治験は、悩ましい問題。規制が厳しいのは、日本人が心配性だから。セルフGSスタンドも普及していない。低レベル廃棄物のクリアランスも制度としてできたが、一般社会に受け入れられていない。放射線の食品照射も国民が認めてくれないと動かない。世論喚起のために「騒ぐ」必要がある。

尾崎 人の問題はそうだが、シンガポールでは多様性が大きく、具体的にどこまでどうするかというところが出てこないと、前に進めない。

野原 ITセキュリティも同様。個人情報保護でどこまでいくか。

尾崎 リスク・ベネフィットを明確にすれば、国民も納得するはず。世界では1例あっても99名救おうとするが、日本は1例で全部禁止になる。

梶浦 法律の細部は、現場の話合いに委ねられることがある。事例について、情報公開していくことが重要。

斎藤 水素でも理解が必要。社会実証をする必要があるが、NIMBY問題もある。身近に感じてもらいたい。

中島 最先端の製品にはレアメタル、レアアースが使われている。これがなくなると新しいものづくり、開発ができなくなる。中国が、資源ナショナリズムで輸出を抑えてきている。対応を検討中だが時間がかかる。提案しても1年半かかってしまう。国家戦略として早くやってほしい。

中村 風力発電の歴史は長いが、日本ではようやく10年。問題の本質は変わっていない。「騒ぐ」には、審議会という方法論とタイミング(マチュリティ)の二つの論点がある。世の中の成熟度ははるかに変わった。時機はきている。選択は誤らないようにすべき。

大和 初中等教育に、最先端の知識につながる基礎教育を入れてほしい。DNA、細胞、統計学。微積を教えるより大事だろう。

鳥居(JST事業主幹) 確率は大事。判断のできる国民になってほしいので、アゴラの取組がある。

中野(放射線安全フォーラム)「騒ぐ」のは大事だが、行政は決めていることをやるだけ。パブリックコメントは反映されない。科学知識が重要だが、それは科学者の責任。π3.14を約3にしたのはおかしい。科学者が騒ぐべき。

野原 メディアの役割も大きい。

玄場(属性不明) 人の管理の仕事をしている。決める人のリスクをどう組織がカバーするか。評価の問題は、日本では脆弱。すぐ人物評価にいくのが問題。日本では成熟したテーマになっていない。世界では、むしろ「成果」をきっちりみる。日本では使命感のある人が突破しないと物事が進まない。メディアの責任になる。人の評価、決める責任をカバーする仕組みがないと、動きの速い時代には対応できない。

モリカネ(パナソニック技術室) 職業倫理の問題だ。パブコメを事前に行い、時間をかけて取り込んで行けばよい。

尾崎 科学者の倫理は低い。午後にCSTP主宰の会議があるが、みなさん出て発言してもらいたい。CSTPの倫理観が高かったと思っていない。総入替でもやむを得ない。

金子郁容氏(慶應大:まとめ) ハロウィンで子供が道路に溢れていた。阿部さんの結論から今日は議

   論が始まった。規制は遅れてくるものというのはそのとおり。メディア、専門家の責任もある

   が、社会の力を利用する方法がある。技術のイノベーションは、社会のイノベーションがないと

   何も起こらない。新しい多様な関係が出てくるが、日本社会は拒む面もあるが、ハロウィンのよ

   うに素早く取り入れようとする部分もある。特区制度は、曖昧な不出来な制度だった。しかし、

   期間限定・場所限定でやってみることも大事。他方で、何も規制なく進んでいるものもある。供

   の個人情報が入っている。医療情報も。生活者が確かめていくことも大事。アゴラのような参加

   の枠組みが大事。