http://nna.jp/free_eu/news/20090714dem001A.html
ドイツ
欧州大手12社、サハラ砂漠太陽熱発電計画を始動[公益]
独総合電機大手シーメンスや独ミュンヘン再保険など12社は13日、ミュンヘンで記者会見し、総額4,000億ユーロ(約51.6兆円)を投じて、北アフリカのサハラ砂漠に大規模な太陽熱発電設パークを建設する大型プロジェクト「デザーテック・インダストリアル・イニシアティブ(DII)」の運営会社を設立させる覚書(MOU)を結んだ、と発表した。
今後、12社はミュンヘン再保険が事務局となり、今年10月末をメドにDIIの運営会社を立ち上げ、2012年までの3年間かけて技術と財政、法制の3分野についてフィージビリティ調査を行う。現時点での大まかな構想では、発電規模は2050年までに欧州大陸の消費電力の15%を供給する計画。また、同プロジェクトでは、北アフリカにも発電した電力の半分を供給するほか、一部は水供給プロジェクトにする考えだ。
4,000億ユーロの資金調達は、ドイツ銀行とミュンヘン再保険、HSHノルトバンクの3社が中心となり、基金を作って外部からの資金調達を行うもようだ。
資金調達を担当するドイツ銀行のカイオ・ホッホウェーザー副会長は、会見で、「環境関連プロジェクトのマネージメントをすでに北アフリカを含む世界中で主導している。デザーテックについては、とても先駆的なプロジェクトと評価している」と指摘。また、HSHノルトバンクのグローバル・エナジー部門の責任者、ユルゲン・ランゲ氏も「北ドイツの海上風力発電プロジェクトの資金調達における豊富な経験を生かしたい」と自信を見せる。
ミュンヘン再保険のニコラウス・フォン・ボンハルトCEOも、「人類共通の課題である低炭素社会への取り組みは、やるかやらないかではなく、どうやるかが問題だ。当社は、長い期間をかけて二酸化炭素(CO2)と気候変動に関する調査に取り組んできたが、民間主導で今回のようなプロジェクトが実施されようとしていることに意義がある」と述べている。
12社には、ほかに、エネルギー大手のエーオンやRWE、スイスの電気設備大手アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)、アベンゴア・ソーラー、マン・ソーラー・ミレニアム、独太陽モジュール大手M+Wザンダー、ショット・ソーラーが加わっている。
■夜でも発電可能
また、同プロジェクトの対象地域は欧州連合(EU)地域のほか、中東・北アフリカ地域(MENA)としている。DIIの経済波及効果については、(1)EUとMENAのエネルギーの安全保障が高まる(2)相当額の設備投資によるEU・MENA地域の成長と発展の機会の増大(3)MENA各国の将来の水道の安定供給に寄与する(4)CO2排出量を削減、EUとドイツの気候変動目標の達成に大きく寄与する――としている。
DIIプロジェクトは太陽光発電ではなく、太陽熱でボイラーに貯めた熱を使って蒸気を発生させ、発電タービンを回すため、夜でも貯めた熱で発電できるのが特徴。アフリカではすでにエジプトに太陽熱発電所の建設計画があり、DIIがアフリカ初の発電設備ではないとしている。
技術面で中心的な役割を果たすシーメンスのリニューワブル・エナジー部門の最高経営責任者(CEO)であるレネ・ウムラウフト氏は、「高度な技術力が試されるが、解決できると信じている。技術面のほかに、コストを下げるという重要な課題が残されている。電力は消費者が支払うことが可能な価格で提供されなくてはならない」とし、今後、低コスト発電の技術開発の必要性を指摘する。
また、ABBのヨアヒム・シュナイダー取締役は、「再生可能エネルギーで発電した電力を数千キロ運ぶプロジェクトは、ブラジルなどですでに実績がある。デザーテックでは、スカンジナビア半島まで運ぶことも可能だと考えている」と将来、電力供給区域の拡大の可能性を明らかにした。
デザーテック・ファウンデーションのゲルハルト・クニース監査役会議長も「北アフリカではまだ再生可能エネルギー市場が発展していないが、特にコストのかかる初期段階にこそ、欧州の投資が重要になってくる。こうした意味で欧州と北アフリカが共に“win-win”の関係を築けるはずだ」としている。
