飯田哲也さんほか気鋭の執筆陣です。


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■岩波「世界」5月号  特集 日本版グリーン・ニューディール

【新しい経済システムへ】
経済成長のパラダイム・シフト
佐和隆光 (立命館大学)

欧米先進諸国に「追いつき追い越せ」をモットー

にしてきた戦後日本経済は、いまや経済成長が自

己目的化してしまい、GDPを高めることのみが経済

政策の目的と化してしまった感がある。いま、求

められているのはサステイナブルな経済成長、従

来型とは位相を異にする経済成長へのパラダイム・

シフトである。地球環境の保全は経済成長と両立

しうるばかりか、絶好の投資機会を我々に提供し

ていることを明らかにする、21世紀を「停滞の世
紀」から救うためのマニフェスト。

【新技術の可能性】
石油の終焉から持続可能なエネルギーの時代へ
槌屋治紀 (システム技術研究所)

現代社会を動かしている基本的な要素である石油

の生産がピークに達したともいわれる現在、私た

ちは、石油の枯渇について本気で考えなければな

らない時期に来ている。新しい照明技術や自動車

技術、自然エネルギー技術の一端を紹介し、地中

から石炭・石油・ガスを掘り出す「エネルギー狩

猟型文明」から「エネルギー耕作文明」への転換

の道を探る。

【機能する政府とは】
日本の環境エネルギー革命はなぜ進まないか
飯田哲也 (環境エネルギー政策研究所)

「グリーン・ニューディール」という言葉が世界

各国の注目を集め、環境エネルギー革命に向けた

世界競争が進められるなか、日本はこうした動き

から取り残されている。太陽光発電市場では、昨

年ついに世界第6位に転落してしまった。それは

なぜか。進む「知のガラパゴス化」、環境省と経

産省の不毛な縄張り争い、世界でも異例な電力会

社による独占体制……、日本の混迷ぶりの元凶を

明らかにし、「賢くなく機能しない」政府から

「賢く機能する」政府への転換の道を説く。

【農  業】
若者を惹きつける農業の新たな価値
榊田みどり (ジャーナリスト)

雇用情勢の悪化を受けて、いろいろな就農支援政

策が打ち出され、「農業」がブームになっている

感がある。しかし、それとは別に、20~30代の若

者たちのなかで、新しい価値観で農業を選ぶ動き

が出てきている。農業を、農産物生産だけでなく、

地域コミュニティ再構築のための重要な装置とし

て捉えること、そこに農業が若者を惹きつけるカ

ギが隠されているのかもしれない。農業法人・

(株)サラダボウルや、(有)モアークなど、新しい

農業の担い手とそこに集まる若者の姿を中心に、

農業の最前線をルポする。

【林  業】
林業再建のグリーン・ニューディール
熊崎 実 (筑波大学名誉教授)

これまで「国産森林財時代の到来」が繰り返し予

見されてきたにもかかわらず、日本の森林から伐

り出される木材の量は、1960年代後半から一貫し

て減り続けてきた。それはなぜか。木材の自給力

を高め、雇用を増やし、中山間地域経済に活を入

れることができれば、日本版グリーン・ニューデ

ィールの有力な候補となろう。日本林業再生の道

を探る。

【介  護】
介護分野に現代版ニューディール政策を本当に機能させるために
結城康博 (淑徳大学)

慢性的な人手不足が深刻化している介護分野に

「派遣切り問題」等で失業した非正規労働者を移

転させる目的で、ヘルパー資格等の取得を促し、

それらの訓練費用等の支援金などが予算化された。

しかし、「介護」という職業は、そう右から左へ

と労働者を移転することはできず、現在の厚労省

を中心とした雇用対策は、短絡的な試みに過ぎな

い。本稿では、介護分野における労働者の移転問

題を考えながら、持続可能な介護労働者の在り方
と、介護サービスとの関係について論じる。

【観  光】
エコツーリズムによる「自然と雇用」の融合
中嶋真美 (玉川大学)

観光産業は今でも成長産業であり、エコツーリズ

ムにより自然保護・環境保全を行いながら、雇用

創出、関連商品の生産波及効果などの景気対策が

期待できる。それゆえ「エコツーリズム」をグリ

ーン・ニューディールの柱のひとつとして位置づ

ける試みが世界各地で進みつつある。日本におけ

る現状と課題は。具体例を紹介しながら探る。