http://eco.nikkei.co.jp/interview/article.aspx?id=20080415i3000i3
世界は「ルック・ドイツ」飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長に聞く<上>
飯田哲也(いいだ・てつなり) 自然エネルギーや原子力などの環境エネルギー政策専門家。温暖化ファンドやグリーン電力のマーケティングなど脱温暖化ビジネスを推進。中央環境審議会、東京都環境審議会などを務め、今年から中田宏横浜市長の環境政策アドバイザーも
日本は本当に省エネ大国・新エネ先進国なのか。ドイツをはじめとした欧米のエネルギー事情に通じ国内での電力・エネルギー政策に関して幅広く提言し続ける特定非営利活動法人(NPO法人)環境エネルギー政策研究所(東京・中野)の飯田哲也所長に聞いた。
■20世紀のクルマ産業の役割を21世紀は自然エネルギーが担う
――今、自然エネルギー分野で最も注目しているテーマは何か。
世界は「ルック・ドイツ」だ。
経産省と環境省はともに英国政府と密接にやっているが、英国の環境エネルギー政策は必ずしも十分な成果があがっておらず、太陽光や風力、バイオマス、太陽熱などはそれほど普及していない。
製造業を基盤とする経済大国として、日本はドイツを参考にすべきだ。
今、ドイツでは「20世紀で自動車が果たした役割を、21世紀は自然エネルギーが果たす」と言われている。20世紀は自動車の世紀であり、日本と同じ自動車大国のドイツの産業、経済、社会は、自動車が支えたと言っても過言ではない。同じ役割を、今後は自然エネルギーが果たすといわれているのだ。日本に、そこまでの認識があるだろうか。
――ドイツは具体的にどう進んでいるのか。
風力発電はデンマークと米カリフォルニア州が最初に普及の途を開き、90年代にドイツに移り、97年のちょうど京都会議の時点で、ドイツは世界最大の風力発電国となった。
さらに2000年には法律を強化して、太陽光やバイオマスなど風力以外の自然エネルギーの普及も図った。EUが97年に定めた自然エネルギー白書で、ドイツは、電力に占める自然エネルギーの比率4.5%を、2010年までに12.5%に拡大するという目標を持っていたが、2006年に達成した。2007年夏にメルケル政権が見直し2020年に27%、2030年には45%という高い目標に掲げている。
CO2も一昨年で1億トン削減し、つい最近の速報ではマイナス20%を達成した。経済が低迷していた旧東ドイツ統合による「棚ぼた効果」も少なくないが、自然エネルギー導入の寄与度が圧倒的に大きい。
2007年の自然エネルギーの産業効果は約4兆円にのぼり、世界全体の投融資規模13兆円の3分の1を占める。雇用も25万人に達し、石炭と原子力で7万人だから既存エネルギーに比べて3倍以上の雇用効果だ。
トヨタグループ本体の売上高40兆円と比べてまだ十分の一だが、自然エネルギーは年率30%で成長しているから、10年を待たずに同じ規模に成長する。今日の自動車産業の役割を果たすというのも、誇張ではない。
■自然エネルギーの導入資金、地域住民が拠出
――ドイツは自然エネルギー導入の資金はどう調達しているのか。
ドイツでは、自然エネルギー事業の90%以上が地域によるオーナーシップだ。たとえばドイツの養豚農家が風車を作り始め、いまや35基のオーナーで年商5億円を計上している例もある。ところが日本で同じ100億円規模の風力発電のウィンドファームを建設しても、地域には、固定資産税と地代が1億円くらいしか落ちないだろう。この違いは大きい。
なおかつ、その建設資金は一般の人がエコファンドを通して出資することができる。最近売り出したファンドは、5%複利で20年間元本保証。20年後に2.5倍になって戻ってくる。
そのお金はまっすぐ太陽光とか風力に向かい、20年間に渡って、クリーンなエネルギーを生み出し続ける、真のエコファンドといえる。日本のエコファンドは、様々な企業の株や債権を買い集めるだけで、お金の働きとして本当にエコかどうかわからない。
ドイツでは年度末の12月に1年間貯金して年金代わりにエコファンドに投資する。こうしたエネルギー自給向上→CO2削減→産業形成→雇用創出→地域活性化→マネーのグリーン化という、自然エネルギーを巡る好循環が広がっている。そういう世界がわずか10年余りで出現したのだ。
さらに、これに税金は1円も使われてない。電気料金で全員が平等に負担する仕組みで、1カ月1世帯1.7ユーロ、250円くらいの負担ですむ。購買力平価で200円くらい。1世帯3人としても1人100円未満で実現できてそれだけのメリットがある。
私はドイツと同じ法整備を10年前に目指した。超党派議員270人の議員立法として、自民党以外の政調を通ったが、自民党だけが反対して成立しないまま廃案になった。
今日のように、時代の後押しがあれば、日本でも実現するのではないか。