ある素人室長が頑強に70Mのプレクールを拒否して

います。


燃料電池車の開発でプレクールって聞いたことありま

すか?


中身は読んで字の如し


「事前に冷やす」ということです。


何を冷やすかというと当然水素です。


何で冷やすかというと、現在350気圧の高圧水素が

主流ですが、それでは実質200~300km程度の航

続距離しかとれないので、700気圧にまで上げようと

いう話になります。(それ自身疑問なのですが・・・)


ところが、水素は、こうした高圧下では、かなり粘い

状態となり、タンクの厚みも増すので、思ったほど、

水素収容量は増えず、1.6倍程度に留まります。


それはいいんですが、むしろ問題なのは温度上昇

です。


科学の知識のある方は、温度上昇と聞いて不思議

に思われるかもしれませんね。断熱膨張なのに、

温度低下でなく、温度上昇が問題となるのか・・・・


ここにも水素特有の問題があるのです。


実は、ジュール=トムソン効果というのがあって、

実在気体では、理想期待と異なり、ハコからハコ

に移すと温度は上がったり、下がったりします。

http://homepage2.nifty.com/eman/thermo/jt_effect.html


その際に、ある温度を超えると、下降から上昇に

転じます。その温度を「逆転温度」と言います。「逆

転温度」は、酸素では"49℃"、窒素では"348℃"とか

なり高く、さきほどの「常識」どおりなのですが、水素

では"-71℃"、ヘリウムでは"-173℃"とかなり低くな

っています。


するってぇと、何かい、水素をタンクに入れようとする

と温度があがるってぇのかい?


と旦那さんが聞きますと、熊さんが


あったりめぇよ、あっちっちてえわけでぇ


となります。

夏場は、結構、これが厳しいんです。で、350から

700に上げると益々厳しくなる。

だから、水素の温度を常温から下げておけば、タンク

に入れるときに楽になる、、、、という安易な発想にな

るんですね。


し・か・し


この発想には大きな落とし穴があります。


第一に、冷やすにはエネルギーが要るということです。

しかも、末端の水素ステーションの最末端で常に冷や

す必要があるとすれば、冷蔵庫付きディスペンサーが

要りますね。これにかかるエネルギーは幾らいるので

しょう。W2Wという言葉があります。井戸から車輪まで

のエネルギー効率という意味ですが、このプレクール

をやってしまったら、幾らエネルギーロスがでるので

しょう。そういうことを考えないとトウモロコシ由来エタノ

ールの愚を笑えません。

さらに落とし穴は、冷やせば冷やすほど、温度上昇は

楽になるということです。しかし、それには後述のトレー

ドオフが重なってきます。


第二に、「いってぇどこで冷やすってぇんだ、団扇で

扇げってぇんだ」と旦那さんが言いそうですが、どこ

で冷やすかも問題ですね。


ステーションのタンクか、ホースの直前か?持続的か

瞬発的か、いずれにせよ膨大なエネルギーが要るわ

けですが、そうした低温・高圧環境での部材影響は、

どう考えるのでしょう。小生のような素人が考えても

温めて冷やすを繰り返すと、部材の寿命は低下しま

す。しかも安全性確保が絶対のステーションでのこ

とです。そんな理想部材があれば、まだしも寿命低下

はコスト上昇に直結します。

その上に、低温・高圧下でのいわゆる水素脆化の問題

は、未知の領域の更に未踏領域です。


こうした新たなトレードオフを解決できるのでしょうか。

自動車側のワガママで、通信装置を入れれば、まだ

楽に素早く充填できるのに、それはやらない。ステーシ

ョン側で冷やしてよというのは一種のエゴですね。

ステーションが傷つこうが、高くなろうが、エネルギー

多消費になろうがお構いなしです。これを称して自分勝手

な局所最適化といいます。それは、燃料電池車を本格的

に社会の主力に使用とする全体最適戦略とは大きく異なり

ます。


これまでも燃料電池開発では、新たなトレードオフの壁

が次々に現れて難儀してはりますが、もう一組のトレード

オフ連峰を乗り越えるつもりでしょうか?

(トレードオフとは、あちらを立てればこちらが立たずと

 いう人生でもよくある話ですね。笑)


第三に、これが一番問題ですが、燃料電池開発に

対する気のゆるみを生じさせます。


エンジニアたるもの、水素タンク容量が問題ならば、同じ

水素量で、より多く走る自動車・燃料電池を開発すべき

なのです。カンタンではありませんが、スタック効率を

上げ、エネルギーロスを最小にし、二次電池との最適化

を図るなどして、航続距離を伸ばす方法もあり、それが

王道なのです。


タンク部分に責任を押しつけて、さらに、全体効率が

悪くなって、コストが高くなっても、安全性に懸念が出ても

知らないよ、ということでは、済まないのです。


高い、険しい山であるからこそ、燃料電池車の開発は

重要なのです。炭素に依存しない水素のサイクル、

「水から水へ」という選択肢を人類の手に入れることこ

そが、「国家100年の計」以上の本質的で重要な課題

なのですから。。。


ということで、素人室長は抵抗勢力になっているので

ありました。小生のようなトーシロを説得できないで、

国民を説得できると思うたらあきまへんで

そこんとこよろしゅうに


ほんまにさすていなぶるでなければあきまへん。