天才の渾身の一冊。

これは凄い本です。


池田 信夫
情報技術と組織のアーキテクチャ

【概要】情報通信では,1990年代はアメリカが圧倒的なリーダーだった.最大の原因は,デジタル革命の原動力であるPCやインターネットがアメリカ生まれということだ.CPUもOSも通信プロトコルも,すべてアメリカで標準がつくられ,世界に普及した.しかし、21世紀に入って,情報技術(IT)が携帯電話やデジタル家電などに組み込まれると,アメリカの有利はそれほど突出したものではなくなってきた.こうした技術では,日本やアジアの製造技術が生きるからだ.

また、インターネットでのアメリカの優位も,ブロードバンド時代には逆転した.とりわけ携帯電話を含む「情報家電」では,多様なプラットフォームが競争する時代が来た.情報技術の基本的な構成、つまり「アーキテクチャ」が多様化し,情報家電において何が支配的アーキテクチャになるかという競争が起こっている.


 重要なアーキテクチャを支配することによる利益は大きい.

 ITではアメリカが優位だったが,家電では日本の製造技術が生きるので,「ものづくり」に回帰すべきだ,という類の議論も問題を単純化しすぎている.内製化による「つくりこみ」にこだわることは,技術革新に立ち遅れるもとになる.また,このような産業構造には垂直統合型の組織構造は必ずしも適していない.それは技術開発初期の製品が標準化されていない局面では優位性を発揮することもあるが,アーキテクチャが安定し,要素技術がモジュール化されると,開発部門をもたない製造専業のサプライヤーや,逆に製造部門をもたないで全世界から最適な部品を調達して組み立てるメーカーが登場し,組織のアーキテクチャも多様化するのである.

 本書では,情報技術を素材として,こうした技術と組織のアーキテクチャの関係を理論的に解明している.なかでも重要な鍵になるのが,モジュール化の概念である.

 記述は,情報技術の現場で悩んでいるビジネスマンにも読めるよう,なるべくていねいにされている.


序章 本書の主題と方法
 1 なぜ情報通信が重要か
 2 制度としての技術
第1章 情報処理のアーキテクチャ
 1 デジタル化とモジュール化
 2 情報のカプセル化
 3 柔軟性とオプション価値
 4 モジュール化の設計
 5 技術と社会の葛藤
第2章 技術と組織の設計
 1 企業組織と所有権
 2 長期的関係と「日本型」企業組織
 3 アーキテクチャ競争
 4 ネットワーク時代の組織
    シリコンバレー型モデル
    PCからインターネットへ
 5 情報産業のガバナンス
第3章 半導体技術と産業構造
 1 トランジスタからマイクロプロセッサへ
    量子力学の生んだ汎用素子
    シリコンの書物
    チップ内の汎用コンピュータ
 2 ムーアの法則の経済的帰結
 3 汎用技術としての半導体
    環境の不確実性と汎用技術
    アーキテクチャと企業の境界
 4 半導体産業の教訓
    プラットフォーム戦略 ほか
 5 今後の展望

第4章 情報の所有形態と効率性
 1 インターネットとオープンソース
 2 情報の共有と結合
 3 オープン・プラットフォームの役割
    オープン・イノベーション ほか
 4 非営利のガバナンス

第5章 デジタル情報のガバナンス
 1 情報と財産権
 2 経済システムと知財管理
 3 情報の共有メカニズム
 4 デジタル時代の秩序
第6章 インターネット時代の追伸政策
 1 汎用技術としてのインターネット
 2 アンバンドリングの意味
 3 規制の効果と限界
    アンバンドル規制の限界
    規制の手法
 4 日本の経験
    DSLの成功
    電話網の崩壊
 5 残された問題
第7章 電波開放のメカニズム
 1 稀少性の神話
 2 新しいデジタル無線技術
    パケット無線
    さまざまな多重化技術
 3 電波規制の改革
    プロトコルとしての電波
    公共財としての電波の管理
 4 逆オークション
 5 通信産業への影響
終章 制度設計の科学に向けて
 1 制度設計の意味
 2 本書の含意
    デジタル情報と財産権
 3 今後の課題

付録 IPv6は必要か
 1 何が問題か
 2 見逃されている問題
 3 IPv6の実用性
 4 急ぐ必要はない


池田さん