今回は、より実践的なアドバイスをいくつかのトピックスに分けて、お話したいと思います。

先ず最初に


     「物」を売る経験をして欲しい


私は、もともと商社マン、いわゆる営業の経験を長く積んで、その後、転職を経験、42歳にして、初めて外資系の日本法人で人事の仕事を任されるようになりました。

 

それまでの私は、自らが主導して、新卒の採用をリードしたという経験はあるものの、いわゆる専門職としては人事の仕事の経験はありませんでした。そういう意味では、新しい会社、新しい事業会社で、新しい職務に取り組むこととなったわけです。


特に、職務の専門知識がなくて、チームをリードするというチャレンジは、ある意味、かなり大変なものだったかもしれませんが、不思議と不安はありませんでした。その時私は、自分自身、人事の仕事に非常に興味があったこと、そして、いままで、外から見てきた人事の仕事に対する自分なりの思いと、常識的な判断をしていけばやっていけると、そういう思いでスタートしたわけです。


労務管理や、人事制度の構築などという経験なしに、人事のチームを引っ張り、その会社での人事のあらゆるチャレンジに取り組みことになったわけですので、部下の人たちも戦々恐々だったと思います。そんな環境下、人事部長に就任して、最初に部下の人たちに対して、自分なりにどう人事の仕事に取り組んでいくか、2つの施策方針を話しました。


ひとつは、人事の仕事をビジネスとして捉え、取り組んでいくということです。

特に人事の場合、採用、研修、などいろんな活動のなかで費用が発生しますし、報酬や福利厚生制度を充実させるとなると当然、そこにも会社全体として費用が発生するケースも多く、やはり、それだけの費用をかけて、果たしてどれだけ従業員のモチベーションの向上や、生産性の向上により、ビジネスの拡大、利益の拡大に寄与するのかという人事のビジネスケースを常に考えることが大切であり、そういう観点でいろんな取り組みの是非を判断していくということです。

 

もうひとつの点は、人事の仕事は、自分たちの「会社、事業」あるいは、ブランドとして、商品としての、「会社の名前」を広く世間に売っていくセールスマンだということです。

たとえば、採用にしても、新卒の採用であれ、中途入社の採用であれ、派遣社員の方であれ、より優秀な人材を集めるためには、他社よりも、自分たちの会社がいかに、働き甲斐があり、事業として将来性があるかなど、いろんな観点で、自分たちの会社、事業を売り込んでいかねばなりません。とくに、採用をお手伝いしていただく、人材紹介会社や、人材派遣会社は、自分の会社以外にも、たくさんの会社を顧客としてもっているわけですから、一番優秀な人を一番先に紹介してもらえるよう、自分の会社、自分の事業を売り込んでいかねばなりません。


ともすると人事部の人は、そういう人材紹介や人材派遣のサービスを受ける立場ですので、いわゆる「物を売る」立場ではなく、「物を買う」立場だという意識が強く、めったに人材紹介会社や人材派遣会社を訪問せず、いやゆる「業者を呼びつける」という感覚になっている人が多いのではないかと思います。


私は、自分の施政方針のなかで、「そういう業者を呼びつける感覚では、人材紹介会社や人材派遣会社と本当の信頼関係は築けず、優秀な人材は紹介してもらえない」と言い切りました。そして、自ら率先して、お付き合いのある人材紹介会社や人材派遣会社を訪問し、その会社のミーティングルームをお借りして、社員の方に集まっていただき、私の会社や事業について、プレゼンテーションをさせてもらいました。


また、やはり、オペレーションの現場の管理者やスーパーバイザーの候補となる人材を紹介してもらうためには、自分の会社のオペレーションの現場も人材紹介会社の方に理解してもらう必要があると考え、自ら人材紹介会社の方を現場にご案内したこともあります。

このように、それが採用であれ、研修であれ、いろんな形で、自分の事業、会社の成長に

協力してもらうような関係となる会社には、自分たちの会社、事業を「売り込む」ことが必要ですし、そういう感覚、そういうアプローチがあってこそ、人事を含め管理部門の人も、同じ会社の営業や、オペレーション、カスタマーサービスといった、常にお客様に接している部門の人たちの気持ちや直面している問題も理解できるようになるのではないでしょうか。
(次回に続く)