香港英語(Hong Kong English, HKE)は、イギリス植民地時代に形成され、広東語と融合して発展したユニークな英語です。一般的に国際的な通用度は高いものの、これまで他のアジア英語(シンガポール英語やインド英語など)と比べ、独自の「世界英語」としての認知度は低いとされています。その理由のひとつは、香港では学校教育やビジネスで「標準」英語を重視し、ローカルな表現が公的な場であまり使われてこなかったからです。
しかし近年、香港らしい英語表現や語彙が国際メディアやポップカルチャーを通じて世界に広まりつつあります。
世界に広がった香港発の英単語・フレーズ
香港英語の影響が最も分かりやすく表れるのが、広東語由来の英単語です。
たとえば…
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dim sum(点心)
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wonton(雲呑)
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chow mein(炒麺)
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kung fu(功夫)
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typhoon(大風)
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chop(会社の印鑑)
これらは、香港の食文化や映画を通して世界に広まりました。特に「kung fu」は、ブルース・リーやジャッキー・チェン主演の香港映画が70年代以降、世界的ブームとなったことで日常的な英単語になりました。
ポップカルチャーの力
映画や音楽を通じて広まった香港英語の代表例が、ブルース・リーの名言 "Be water, my friend"。この言葉は2019年の香港デモでもスローガンとして使われ、国際報道でも繰り返し引用されました。
また、ジョン・ウー監督のガンアクション映画から生まれた「gun-fu(銃撃+カンフー)」という映画用語も、香港発のユニークな英語表現です。
国際ニュースに登場する香港英語
政治・社会ニュースでも香港発の英語が世界に広がっています。
有名なのは以下のようなフレーズです。
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One Country, Two Systems(一国二制度)
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Umbrella Movement(雨傘運動)
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Hongkonger(香港人)
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add oil!(加油!=頑張れ!)
特に「add oil!」は、広東語の直訳で「頑張れ!」の意味。スポーツやデモで頻繁に使われ、2018年にはついにオックスフォード英語辞典に登録されました。
シンガポール英語やインド英語との比較
インド英語は、人口規模と歴史的背景から多くの単語(bungalow, shampoo, pajamasなど)を世界英語に送り込みました。
シンガポール英語(Singlish)は、「lah」や「shiok」などの特徴的な語が国際的に知られています。
それに比べると、香港英語の国際的影響は量的には小さいものの、質的には独自性が強く、文化的背景を色濃く反映しています。人口規模や歴史的事情を考えれば、その存在感はもっと評価されてもいいはずです。
実は過小評価されている?
香港英語は、数量的な影響ではインドやシンガポールに劣りますが、「点心」や「加油!」のように、香港文化を丸ごと伝える表現を世界にもたらしてきました。
ニュース、映画、料理、そして日常会話のなかに、私たちは知らず知らずのうちに香港発の英語を使っています。
今後、香港英語はより広く「世界英語」の一員として認知され、その文化的価値が再評価されるべき存在と言えるでしょう。