ポセイドン | 映画-CAN

ポセイドン

なんて大胆な…。
今のハリウッドはオリジナルの脚本が不足していて、
リメイクやシリーズ化に頼り切っている。
にしても、「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)をリメイクするとは!
「タワーリング・インフェルノ」(1974年)と並ぶ、このパニック映画の名作を
超えることなんて、不可能に決まってる。
格段に進歩した映像技術のお蔭で、迫力では勝るかも知れないが、
人間ドラマではどうしても引けを取ってしまうだろう。
そんな先入観から、過度な期待はせずに臨んだ「ポセイドン」だったが、
その素直な作り方に(悪く言えば、捻りは無い)、気が付けばすっかり引き込まれていた。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンポセイドン・アドベンチャー

ワーナー・ホーム・ビデオタワーリング・インフェルノ


少々のことではビクともしなさそうな構えの豪華客船ポセイドン号が、
破壊的な高波に呑み込まれ、転覆してしまう。
わずかに残った生存者たちが、生き残りを賭け、力を合わせて船外脱出を
試みるというストーリー。

ニューイヤー・パーティに浮かれムードの船内が、一転、
まるで地獄絵図と変わる冒頭は、ただただ恐ろしい。
船がひっくり返るのだから、天井と床が逆になり、人々がまっ逆様に落ちて行くのだ。
船と言っても、ちょっとしたビル並みの高さで、エレベーターも備えており、
落ちた時のダメージは計り知れない。
たちまち水浸しになった船内で感電する人、厨房からの爆発に飛ばされる人…
これらの惨状を見ているだけでも、あまりの残酷さに涙が出る。

船長から、ホールで救出を待っているように指示が出される中、
別行動を取るグループが現れる。
それが、この映画の主役となる人々だ。
直感で生きてきたギャンブラー(ジョシュ・ルーカス)、消防士出身の元ニューヨーク市長
(カート・ラッセル)、恋に破れ自殺を考えていた男(リチャード・ドレイファス)が中心となり、
女性や子供を守りながら、危険な船内からの脱出口を探ろうとする。
あらゆる局面で試される、決断力、判断力、知恵、勇気、そして運…
どれが欠けても生き残ることは出来ない。
少し前まで見知らぬ同士だった者たちが、互いに欠けているものを補い合い、
一人の犠牲も出すまいと踏ん張る姿に、胸打たれる(チラシには“裏切り、策略”とも
書いてあるが、そんなの有ったっけ?)。

最初にも述べた人間ドラマの部分だが、キャラクター一人一人の描き込みという点では、
オリジナル版の方がしっかりしているとは思う。
今回のリメイク版では、人物によっては、本質が見えにくいからだ。
どういう風に生きてきたから、こんな今が有る、という所までは見せ切れていない。
それに、生に執着するあまり、汚い部分が顔を覗かせる、人間の業とでも言おうか、
そんな醜いものには目をつぶって作られたような感は否めない。
前作で一番感動をもたらしたと言えるシェリー・ウィンタース(皆を救うために自分を
犠牲にした中年女性役で、ゴールデン・グローブ助演女優賞受賞)に匹敵する
キャラクターもいなかった。

だが、これはこれ、別物として楽しむことが出来た。
前作を知る者には物足りなくても、知らない世代には充分見応えの有る
仕上がりなのではないか。
下手に長く作るより、近頃の大作には珍しく、1時間40分に満たない短い尺で
まとめてみせたのも、良かったのかも知れない。

(2006年・アメリカ映画)

(川口 桂)


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