ほどなくして、その日は訪れました。

「ママ・・・あかん。行かれへん。」
私はここで甘やかしてはいけないと「何言うてるん!はよ行きなさい!!」
と上級生の女の子に長女を任せ、玄関の扉を閉め、鍵をかけました。

『お願い!お願いだから学校に行って!行けばきっと楽しいから!』

長女は鍵の音を聞いて、自分には”学校へ行く”道しかないと悟ったのでしょう。

でも、状態は悪化するばかりでした。

段々と、玄関から出ることすら出来なくなり、
私は手を引いて学校まで連れて行かざるを得なくなりました。

下には5歳と3歳の弟、妹がいます。一緒に連れて行くわけにもいかず、
「ママ、おねえちゃん送って行ってくるから、ちょっとだけ待っててや!」

早足で長女の手を引き、教室まで連れて行きました。
クラスメートは「Pちゃん来たよ!」と、迎え出てくれます。
長女は恥ずかしそうにしていましたが、あっという間に泣き顔に変わりました。
「ママ、帰らんといて・・・」

私は家に残してきた子供の事も気がかりで、そのまま先生にお任せして
逃げるように帰りました。

そうした数日間、長女はずっと教室で泣いていたそうです。
なだめてもすかしても泣き止まない長女。
さすがの先生も思わず怒鳴ってしまったほどだったそうです。

長女は「学校に行ったら、涙が勝手に出て来て止まらへんねん。
泣いたらあかんって思ってんのに・・・なんでかわからんねん。」

そして次の日が遠足というある日。
なんとか遠足の楽しさで紛らそうと一生懸命盛り上げましたが、
長女は「行けるかなぁ・・・また泣いちゃったらどうしよう。」と心配ばかりしています。

そして当日、私が先生に長女をお任せして帰ろうと思った時です。
突然長女が、物凄い勢いで暴れて泣きました。

長女は昔から大泣きというか狂い泣きをした事がありませんでした。
(今考えるとそれも問題だったかも知れません)
それが、男の先生でも押さえ切れないくらい物凄い力で暴れたのです。

私はびっくりしながらも見捨てるように、走って校門を出ました。
いつまでも聞こえてくる長女の激しい鳴き声。

外に出た時、私は鳥肌がたっていました。

そうして長女はなんとか、遠足には参加して帰って来ました。
帰って来た時はどんぐりを手に持って「楽しかった」と言いました。

先生には「お母さん甘えさせ方が下手なんやわぁ」と言われました。
それを言われても言い返せませんでした。
年の開かない弟、妹がいて、小さい頃から”おねえちゃん”でしたから。
”甘え足りない”と言われれば、その通りなわけで。

そして先生は「とにかく明日も連れてきて下さい。あとはなんとかしますから。」
とおっしゃいました。
「わかりました。何が何でも連れて行きます。」

私は、これでいいんだと思っていました。
でも、それが長女が学校へ行った最後の日になってしまいました。