今度こそと思った私は、
タガーNo.にも関わらず
バックの雄猫やシラバブをガン見していた。
すると、タガーがステージを降りて来た…。
ぁ、タガーだ。
そう思って、せっかくだからまじまじと
そのイケメンっぷりを堪能した。
まるで品定めをする様なその視線。
左手は銀のベルトの上を這い、
どーれーにーしーよーうーかーなー♪
とばかりに人差し指をふらつかせるタガー…。
その足がふと止まり、
私を捉えた目元は弓なりに歪んだ。
ぇ。
君に決めた♡
と指差され、一瞬で詰まった距離に結構本気でびびる。
えちょちょちょちょっ!!!!
紳士的に差し出された様に錯覚した彼のその手は全然全く紳士的じゃなくて、
がっしり私の右手をホールドした。
えっえっえっ!!?
一応ちょっとした抵抗をしたものの、
悪戯っ子の様ににこにこする彼の腕力に逆らえる筈もなく、カバンと書類をその場に散らした私は、意とも容易く連れ去られてしまったのだった…。
手脚の長い彼の走るスピードは相当なはず。
しかし、いくらか合わせてくれているのは少しだけ紳士的だと思っても良いのだろうか?
だなんて。
そんな考えは、全員の視線を一心に集めた瞬間真っ白に消失した…。
わけもわからず公衆に晒され、
そして私は、
その面前で……羽交い締めにされた。
ヒッ…!!?
あっという間だった。
別れ際に向けられた優しいひとみも、
暖かい大きな手のひらに頭を撫でられたのも、
背後から抱きしめられた、その感触も。
乱暴だと思ったタガーはそう言い切るにはそうでも無くて、
あぁもう、まるで私も他の雌猫と一緒じゃない…。
でも、それでもやっぱり嬉しくて、
私はあの匂いを忘れる事が出来ない。