「勝手にじゃないだろ!俺母さんの召し使いかなんかなの?もうウンザリなんだよ!」
タイキが、泣き叫ぶように言った。


:「何なのよ。アンタちょっとオカシイんじゃないの?タバコ買って来なかったアンタが悪いんじゃない!」


タイキ:「俺は今何だって母さんにやってやれる事は精一杯やってるじゃないか!買い物だって行きたいって言えば車で連れてってやるし、水が欲しいって言えば夜だって買いに行ってやってる!俺は母さんに一度だってそんな事頼んだこと無いじゃないか。母さんにはそんなこと頼めないよ。俺だって自分のことやなんか色々あって、忘れることくらいあるじゃないか!」


:「だから、あたしが買いに行くっていったんじゃないのよ!」


たばこは、私の家にあった。

私の家に来る前に、母親のタバコを買いだめしていたのだ。でも、うっかり私の家に忘れてしまったんだ。


タイキは、震えていた。誰から見ても普通の様子ではなかった。


タイキ:「そういうことじゃない。もうこのままじゃおかしくなっちゃうよ。どうして母さんには俺の気持ちがちっとも伝わらないんだよ…。」


:「あたしが何したって言うのよ!あんたね~...」


もう、聞いていられなかった。


:「いい加減にしてください。こんなに苦しんでいる姿見て、どうしてそんな言い方ができるんですか!!母親なんじゃないんですか?タイキ、こんなに震えてるじゃないですか!!こんな状況、異常だと思わないんですか!?」


:「も~。何なのよ!あたしがなにやったって言うのよ!」

母親は、その場をたとうとした。


タイキ<:「いつだってそうだよ。あなたは俺がいくら苦しんでいようが助けてくれない。さっきだって、おれが震えてうずくまってたって、逃げようとしたじゃないか!子供の頃からそうだ!俺は何度もうつ病だから、病院に連れて行ってくれって頼んだのに、連れて行ってくれなかったじゃないか!」


:「誰が逃げたのよ!病院に連れていくしか無いと思って、用意してたんじゃないのよ!」


タイキ:「なんなんだよその他人行儀な態度は!だれのせいで俺がこんなになってると思ってるんだよ!俺はいつも、子供のころから、あなたの男の影におびえてきたんだよ!いつだってあなたは、俺より男をとってきたじゃないか!

今だって、普通母親だったら、こんなになってる息子をみたら、抱きしめたりするもんなんじゃないのかよ!!!!」

私は、胸が締め付けられて涙が止まらなかった。

やっぱりタイキは、母親に愛されたいんだ…。


時間は深夜12時半を回っていた。
常識で考えれば、60も近い母親と住んでいる恋人の家に訪問する時間では無い…が、今はそんなこと言っていられない。

マンションの玄関で携帯を鳴らしたが、いっこうに出る様子が無い。

思い切って私は、部屋番号を押して呼び鈴を鳴らした。

「ピンポーン。」

インターフォン越しにタイキの声がした。

「あずきか?」
蚊の泣くような声だった。

マンション入り口の自動ドアが空いた。

タイキの部屋まで急ぎ、玄関を「コンコン」と叩くと、タイキが憔悴仕切った様子で、

「こんな遅くにごめん。俺が全部悪いんだよ。ゴメン…。」

と言って、フラフラと座り込んでしまった。
私は何となく察しはついていたが、
「何があったの?」
と聞いた。
中でタイキの母親がブツブツ独り言を言っているのが聞こえた。

暫く玄関でタイキを落ち着かせていたが、中から

「何やってんのよ~。そんなとこいたって仕方ないじゃないのよ~。中入ればいいじゃないのよ。」

というバツの悪そうな母親の声がしたので、私はひとまずタイキを連れ、リビングへと入った。

「夜分遅くにすみません。でも、一体があったんですか?」と、私は、その母親を少し問い詰めるように聞いた。

「知らないわよ~。あの子が急に勝手に騒ぎ出したのよ。も~こんな時に話したくないから呼ぶなって言ったのに…。」母親はヒステリックに私に言った。案の定の答え方だった。


私は、タイキの母親と、たまに話しをする機会はあったが、面と向かって真剣に話をしたのは、これが初めてだった。

初めてがこの状況というのも尋常ではないが、そんなことを考えている余裕は無かった。


「知らないって!自分の息子がこんな状況になってるのに、そんな言い方ないでしょう。

こんな夜中に、彼女に助けを求めて来るなんて、普通の状況じゃないでしょう?」

私は、憤った。



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タイキはとても精神的に弱い部分がある。多分…というか、確実に、両親が原因だろうと思う。

タイキの両親は、タイキが中学3年生の時に離婚している。


その後は、母親、父親のところを転々とし、18才の頃に一文無しで家を追い出されたとだけ聞いたことがある。

私が、ぬくぬくと親のお金だけで上京し、のんきな大学生活を送っていたころ、タイキはそんな状態だった。


そんな、ゆるゆるの沼のようなところから、今は何とか這い上がってやっと自分の土台が築けはじめたところだ。

そんな大事な時期なのに、最近また、タイキが不安定になってきた。


母親とまた、暮らし始めてからだ。



私には、結婚を約束している人がいます。名前は仮に「タイキ」としておきます。

タイキと私はもう出会って10年になります。

その間には、いろいろと、紆余曲折、山あり谷あり色んなことがありました。

平々凡々と、フツーの家庭に生きてきた私には、信じられないような出来事ばかりの10年でした。

今はすべてお伝えしていると、「どんだけ~!」という感じなので、

徐々にお伝えできればと思います。


そんな私達2人も、やっと何とか「結婚」の目処がついてきました。


と思っていた矢先のことです。


つい先日、私達は仲良く夜ご飯を食べて、月曜の仕事に備えて早めにお互いの家に帰りました。


そして約一時間後、タイキからの電話が鳴りました。でも2コールで切れてしまったので、かけ直しました。


私:「ど~したん?」

タイキ:すすり泣く声で「俺もう死にたい…」

私:「??何?どうしたん?何かあったん?」

タイキ:「もうダメだ、俺。生きていけないよ…」

私:「…。お母さんとまた何かあったの?何?言って!」


プツッ。ツーッツーッツーッ。


タイキからこんな電話が来るのは初めてだ。絶対タダ事じゃない!

幸いタイキの家から歩いて10分くらいのところに住んでいるので、猛烈ダッシュでタイキのマンションに行った。


タイキは、今母親と住んでいる。

多分母親と何かがあったんだ…。