シベリアの夜長を古代史に夢を馳せて~その15~ |  アンドロゴス生涯学習研究所

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昔、私がホツマツタヱをはじめた頃は、「ワカ」というと和歌じゃね、漢字語じゃねぇか、デタラメ言ってんじゃねーよ、とか批判を受けたものです。
「ワカ」は「和歌」ではなく、「ワカウタ」の略で、「ワカウタ」というのは穂虫(イナゴか?)に食い荒らされた稲が若返って生き返ったというところにより、「若やぐ歌」という意味からつけられたようです。
5・7・5・7・7の韻律により日本語の持つ幽遠さが強調される、というところに古代人が数霊の思想を持ち込んで理屈をつけたのかもしれません。

 

私の姉が短歌をやっており、「和歌とは違う、短歌なんだ!」と言い張ってますが、和歌というくくりでも、モチーフが限定されるわけではないので、何をこだわっているのか良くわかりません。
ただ、古代のウタと平安のウタには、かなりの違いがあるようです。
万葉集を読んでも、ほんとに分かっている人がいるのかねぇ?というほどです。

 

 

ホツマツタヱは5・7調の「長歌」です。
長歌には5・7調と7・5調がありますが、はじまりがちがうだけで、雰囲気がかわるのは不思議です。
7・5調の代表的なものにすこし後の時代の「今様」があります。「越天楽」みたいなものですね。
たぶん、ホツマツタヱは音楽ではなくて文楽(ぶんがく)なのでしょう、文楽(ぶんらく)じゃないですよ。
ここで、地の文がウタなのですから、ワカウタの部分はさらに含蓄が深くなりますので、理解は難しさをましてしまいます。
ですから、ワカヒメのウタも、ぱっと見には万葉集のウタと同様、きわめて難しい感じがしてしまいます。
このホムシサルアヤはとくに難解なアヤと言えると思います。
さらに、呪詛を狙ったウタの場合5・7・6・7・7となっていて、「アルマ」(物事の間に生ずる魔)を考えているので、理解は簡単でなくなります。

 

 

すこし原文を見てみましょう。

 

 

 

 

シカルノチ イサワノミヤニ その後、伊雑宮に
ハベルトキ キシヰノイナダ 居るときに、キシイクニの稲田が
ホオムシニ イタムオナケキ ホオムシに痛めつけられている
アルカタチ ツグルイサワノ という声が伊雑の
ヲヲンカミ アマノマナイニ アマテルカミの元にとどきますが
ミユキアト タミノナケキニ アマテルカミは真名井に御幸した後でした。
ムカツヒメ イソギキシヰニ ムカツヒメは急遽キシヰに出向きます
ユキヒラキ タノキニタチテ 実際に田の東に立ち、
オシクサニ アホグワカヒメ 教え草に仰ぐワカヒメが
ウタヨミテ ハライタマヘハ ウタを詠んで祓うと
ムシサルオ ムカツヒメヨリ 虫が去っていくので、ムカツヒメは
コノウタオ ミソメオマテニ このウタを30人の女達に持たせ
タタツマセ オノオノトモニ 左右両翼に展開させて各々
ウタハシム イナムシハラフ 一斉に歌わせました
ワカノマシナイ これが稲虫を祓うワカのマシナイです

 

 

技術的には単純で、イナゴが嫌がることをしてやればいいのですが、時期が重要になります。
イナゴは孵化後、イネ科の植物の葉を食べて成長します。
不完全変態で、幼虫は羽が無いので跳躍のみで移動します。
最初、田の畦に生えるヒエなどを食べていますが、やがて羽が生えると飛翔することができるようになり、水を張った田の稲の葉を食べはじめます。
この状態で放置すれば穂が出て開花し、結実する頃、米を食い潰すことになります。
無論、それを大量に捕獲して乾燥、空煎りして香ばしさを出してから甘辛いタレをからめると、なかなかに美味い一品になります。
「オカエビ」なんて呼ばれかたをしますが、エサを与えずに糞出しをするのがコツだとか。
私が幼い頃、家に居た女中さんが田舎から送ってきたといって山ほどのイナゴを食べていました。
空煎りしただけのイナゴの羽と足をもいで、モクモクと食べるのを見ているだけでしたが。
長じてから何度か食べる機会がありましたがわりと美味です。
最後に食べたのは15年くらい前でしょうか、国道20号の韮崎付近だったと思いますが、大きなドライブインで夜メシを食べたのですが、小鉢にイナゴの佃煮がそえられていました。
これがなかなか、旨く、子どもたちの分も皆、私がいただきました。

 

 

さて、キシヰのタミは経験から、幼虫の量が半端でないことを知り、アマカミに訴えたのでしょう。
それから準備をしてホオムシが飛翔する頃を狙って駆除を開始します。
問題は、その仕掛です。
熊野はオモタル・カシコネの時のミヤコと考えられますので、そこは天領だと考えていたのですが、私の息子はもっとラジカルに考えていました。
熊野のタミは豊かな自作農だと云うのです。
アマカミの優れた指導は受け入れますがどこのミヤにも属していなかったろうと云うのです。
アマテルカミの行政は純粋に、マヒナヒとしてホオムシを祓う作業をしたということになります。

 

 

カラスアフギというのはヒオウギの別名だそうですが、クマノでカラスというと、以前話したヤタガラスの問題になってしまいます。
今回は特に触れないことにします。(近々やります)
それよりも、ミソメオマテニ(30女を両手で)っていうほうがヤバいんじゃね、っていう向きもあるようです。
(私も、それは良いとおもうんですが☆)

 

 

 

 

 

 

タネハタネ ウムスギサカメ 田禰(=水稲)畑禰(=陸稲)ウム(=生える)スギ(=過ぎる)サカメ(=咲く)
マメスメラノ ソロハモハメソ 娘等が丹精したソロ(=稲穂)も葉も食べてはいけない
ムシモミナシム 虫達よ、皆鎮まりなさい

 

 

「禰」はうけつぐというような意味の字なので用いてみましたが「子」でも意味は同じですね。
サクは、あるいは割く、または裂くかもしれません。
稲は風媒花で籾の原型がわれてシベが風にさらされるのです。
ここで、ワカヒメは稲の成長過程を詠んでいるのです。
マメスメラはマメス(丹精こめる)・メラ(女等)とマメ(忠臣)・スメラ(キミ)をかけているようです。
キミ・トミが大事にしているタミの暮らしを痛めつけてはいけない、というところでしょうか。
いかにも呪詛っぽく聞こえればいいので、大麦・小麦とかを列挙する訳もまずくはないと思いますが、ホオムシがイナゴ(稲子)なら、イネ科の葉しか食べないとおもいますので、豆を列挙するのは字面に騙されていると考えられます。

 

 

クリカエシ ミモムソウタヒ 繰り返して360回歌いました
ドヨマセバ ムシトヒサリテ どよませたので、虫は飛び去って
ニシノウミ ザラリムシサリ 西の海に大挙して行ってしまいました
ヱオハラヒ ヤハリワカヤギ 穢を祓い、やはり若やいで
ヨミカエル ソロニミノリテ 蘇り、稲穂に実って
ヌバタマノ ヨノカテオウル ぬばたまの(枕詞)夜の糧を得る
オンタカラ ヨロコビカエス タミは喜び、盛り上がって
キシヰクニ アヒノマヱミヤ キシイクニのアヒノマヱミヤと
タマツミヤ ツクレバヤスム タマツミヤを作ったのでタミは安らぎ
アヒミヤオ クニカケトナス アヒミヤをクニカケのミヤ(官幣社)にした
ワカヒメノ ココロオトトム ワカヒメの心を留める
タマツミヤ カレタルイネノ タマツミヤ 枯れたる稲の

 

 

なんか、ワカのマシナイで虫が飛び去って行った、というので、最初は娘達の声の周波数がイナゴの嫌いな音なのかと考えたのですが、どうもしっくりこないのです。
鳴く虫(鈴虫、松虫、クツワムシ等)なら自分の立てる音に反応すると思いますが、イナゴはどうでしょうか?
北海道にいる種類は鳴くとか、でもキシヰでは・・・

 

 

 

 

ヌバタマノ ハナハホノホノ ヌバタマの花は炎の
カラスバノ アカキハヒノデ 明かきは日の出
ヒアフギノ イタモテツクル 日仰ぎの 板で作った扇で
アフギシテ クニモリヲサム クニ守り治む
ヲシヱクサ カラスアフギハ 教えくさ カラスオウギは
ソフハナリ ヒアフギノハハ 12あります ヒオウギの葉は
ミナハラフ アワノヨソヤゾ 皆祓う

 

 

なんか巨大な扇でカラス衆が扇いだのでしょうか?
そういえば、こんな宝物が熊野速玉大社にあるとか。

 

 

https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_10?1496582637

 

 

機動力と操作性を考えると、これに柄をつければ虫退治に使えるかも、とか思いました。

 

 

ここで、池田先生の「縄文人のこころを旅する」から引用してみましょう。

 

 

ここからーー

 

 

タテ六メートルにも及ぶ杉の木枠(きわく)に取り付けられた扇の数々。
一体何なのだろう。
普通のおみこし(御神輿)を知っている人々は、奇異に感じることうけあいだ。
それが、実に不思議なことにホツマツタヱの記述内容と一致していた。

 

 

真っ黒の実のヌバタマは真っ赤の実皮の中から出てくる。
ヌバタマの実はカラスアフギの草の実である。
アヤメの葉をペッタンコにしたようなカラスアフギの葉に日々(にちにち)をなぞらえて作ったヒアフギ(日の扇)。
これこそ国民を豊かにと指導して治めてゆくことのできる教え草である。
カラスアフギのミコシは十二台(そふは)。
ヒアフギの草が各々四株つけられていて、全部で四十八株、そして日の丸扇は全開三十扇と半開二扇の合わせて三十二扇。
三十二という数字は、魔除けのウタの数字である。
普通の和歌の三十一文字に、わざと一文字多くして月と月の間に隙間をあけさせないようにして魔物の侵入を除ぐウタである。

 

 

ーーここまで

 

 

さすがに、池田先生は那智の扇祭りを見ていらっしゃるのですが、基本的に、池田先生の一門は、ホツマツタヱを崇拝しているために、「神話じゃなくて歴史だ」と言いながらも「ワカノマシナイ」と書いてあったらそれは呪い(まじない)をしたんだ、と思ってしまうのです。
ですから、ここでも、Super naturalなワカの呪いだと思っているのではないでしょうか。

 

 

でも、皆さんは次の画像を見て、理解できると思うのです。
ちょっと羅列しましょう。

 

 

花です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_11?1496582637

 

 

葉です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_12?1496582637

 

 

未熟な実です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_13?1496582637

 

 

熟した実です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_14?1496582637
赤い実皮は無いので池田先生の記述は間違っていますね。

 

 

京の和菓子「うばたま」です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_15?1496582637
お高くとまってる、とか言われそうだけど、京菓子、大好きです☆

 

 

そして、扇神輿です
https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_16?1496582637

 

 

https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/62/34755662/img_17?1496582637

 

 

極めつけはこれ!
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イサナギがモガリの洞穴に行ったときのヲトリハってこれのミニチュアでは?

 

 

ウタの合唱もさることながら、こんなデカい火持って田の東側で騒いでいたら、さすがのイナゴも西の海に飛んでにげるんじゃね?
どうやらこのアヤは虫退治、すなわち那智の扇祭りの原風景のようです。
思いがけずにフォークロアの起源を見てしまったのです。
こうしてみると、時の皇后陛下であるムカツヒメの政治力の全面勝利ということではないでしょうか。(つまり、このアヤではワカヒメは色気を出しただけだった、ということですかねぇ、あ、はいはい、才媛なんですね、才媛・・・って感じですか。)

 

 

ウタが31文字か32文字かってとこで、暦とからめた話が出てきましたが、最後に、幼いソサノヲにワカヒメが解説する部分が残っているんですが、割愛します。
暦の話は私の理解が未熟すぎるので、今はまだ解説できるレベルではありません。