シベリアの夜長を古代史に夢を馳せて~その7~ |  アンドロゴス生涯学習研究所

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■古代日本の政治体制と階級を考える

 

1. 体制に関する基礎知識

 

 

・文法に関しての前提

 

 

まず、ホツマツタヱとはどんなものだったでしょうか、少し掘り下げてみましょう。
良く分かっていらっしゃる方も復習のつもりでお読みください。

 

 

日本書紀は漢文と万葉仮名による国史なのに対し古事記は物語ですから、叙情的なのはもちろんですが、さらに、ホツマツタヱは五七調の長歌で構成される国字仮名混じり文学なので、さまざまなウタの技法が盛り込まれています。

 

 

一文字語+助詞とか、品詞分解しづらい「ン」など、平安文法では理解に苦しむ表現も多くあります。
神道の祝詞などに「かかんのんてん」なんていう、わけのわからない言葉がでてきますが、じつはこれもヲシテにあるのです。
構造としてみると、

 

 

 カカン
 ノン
 テン

 

 

であり、末尾に「ン」がついており、この「ン」は動詞であると考えられています。

 

 

これを「篝火」「祝詞」「柏手」と説明するのは自由ですが、文法的に考えるなら単なるロキューションですので、例えば5アヤにある「カカンシテ ノンアワクニハ テンヤマト」という文は、カカン~ノン~テン~という構造であり、「こうしてアワクニはヤマトになりました」と単純に訳したほうが良いのです。

 

 

また、奉呈文にある「コヱウチノ イサワノミヤニ オワシマス」というのは「コ」という蚕を表す特殊文字が使われていることに注目して、「コエってなんだろう、蚕の餌、つまり桑の木が多くあるところかな?」などと深堀りせずに、さらりと「コエウチノ」は「イサワ」に掛る枕詞だと考えてよいのです。
全文がつかめるようになってから、じっくりと掘り下げるのが平和だと思います。

 

 

 

では、本論に入りましょう。

 

 

 

・ カガミのこと

 

 

ヲシテ文献にも記紀同様、カガミの記述があります。

 

 

皆さん、現代で、カガミは何でできていますか?と訊かれたら、ガラスです、と答えるでしょう。
では古代のカガミは?と訊かれると、それは金属、特に青銅ですと答えるにきまっています。
しかし、「増鏡」、「大鏡」、「吾妻鏡」は何でできていますか?と訊かれると、「紙です」と答えないわけにはいかないのです。だって、それは書物なのですから。
光学的に照らして使うのが鏡、ある知識に照らして使うのが鑑(例:図鑑、名鑑、武鑑)と考えれば簡単ですね。
8アヤでもマフツノカガミというのが出てきましたが、これもウタの技法で鏡とイメージを重ねていますが、鑑だと考えれば人別改めの資料ということができます。

 

 

 

・ ミソギのこと

 

 

 

皆さん、みそぎという言葉をご存知でしょう。
神道などでよくやる、あれ、水かぶって身を清める、あれです。
古代の政権の指導者もよくやっていましたね。
転じて、長いこと政権にいすわっていた連中が選挙の後、「さあ、禊は澄んだ!今度は体制内改革だぁ!」などと曰って、結局何もしない保守のパターン、あれもミソギでしょうか?

 

 

カガミの例でお解りと思いますが、これも水浴びのイメージを借りているのです。
私は「身削ぎ」のことだと確信しています。
自分に対して身削ぎをするなら、それは邪念を去ってルサンチマンから離れ、純粋に政治過程に従って判断をするということ、事象に対して身削ぎをするなら、それはいわゆる「オッカムの剃刀」のことになると思われます。
虜囚あるいは罪人に対して身削ぎをするなら、それは手練手管による懐柔と話術、さらには拷問等の手段により自白を引き出す方法論と考えられます。
潮浴び?や血を絞る?という表現が何をさしているかは、まだ不明です。

 

 

 

2.各種の制度に関する解説

 

 

 

ここでは7アヤを中心に解説しますので、流れをつかむために例の通り、高畠氏のサイトを参照しておいてください。
http://www.hotsuma.gr.jp/aya/aya07.html

 

 

では行きます。

 

 

・量刑法定主義?

 

 

この時代、裁判は定められた様式に基づいておこなわれていたようです。
7アヤで、コクミとシラヒトの裁きも中央(アマテルカミの時代ですので、ここはイサワ?)のタカマで行われました。

 

 

少し本文を見てみましょう。

 

 

 

 

サガミレハ キミオワスルル (コクミの)咎を見てみましょうキミを蔑ろにした罪
モモクラト ハハモフソクラ 100クラと母の分の20クラ
オカスルモ オシテノハチモ 証文の偽造である
モモトモモ ヒメナイカシロ 200クラ、姫を蔑ろにした分が
イソクラト スヘテミモナソ 50クラで、全部で370クラ
アマメクリ ミモムソタビオ 人の生活を360度と考える
トホコノリ トコロオサルト ト鉾の法(=刑法)の定めにより所払い
サスラフト マシハリサルト 流刑、交際の禁止(村八分ですか?)
イノチサル ヨツワリスギテ そして、4番目に相当するので、
ホコロビト ツツガニイレテ 死刑ということでツツガに入れておきました
ネノクニノ シラヒトオメス 次はネの国のシラヒトが引き出されました。
タカマニテ カナサキトワク タカマでカナサキが尋問します
ハハオステ ツマサルイカン 母を捨て、妻を流した経緯を聴くと
コタエイフ オノレハサラズ 私が去らせたのではありません
ハハヨリゾ ヰヱステイズル 母のほうから勝手に出ていったのです
ヒメモママ マタモトオトフ 姫もついていったのですと、 また、元を問うと

 

 

ここで、証文というのはコクミが出世のために自分の嫁をクラキネにさしだしたのですが、自分が死んだあとはコクミにサシミメを返すという奇妙な証文だったので、カナサキは偽造だと看破したのです。
証文を偽造するにあたって(クラキネが寝ている間に押し手をとったのでしょうか?)サシミメはコクミの云うことを聞いただけなので、従犯、20クラとか。
ただし、クラキネは中央から任命されているマスヒト(国司)なので、その嫁の処遇に関する文書は公文書となり、コクミとサシミメは公文書偽造で共に100クラを受け、その責任者であるコクミが責を負ったということです。

 

 

https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-23-6b/andro_gosse/folder/1128972/16/34642716/img_14?1490021219

 

 

 

 

コタエイフ ヨヨノトミユエ (シラヒトは)答えて言います代々の臣ゆえに
コトナセリ ハハハタミノメ した事です 母親のほうはタミの女を
ススメテゾ キミノツマナリ キミに差し出した妻ではありませんか
ヲンメグミ ナニワスレント キミの恩を忘れてなどいません
ヰヰナガス カンミムスビノ と言い流すのでカンミムスビは
シカリテゾ ナンヂカザリテ 叱りつけて言います 汝は言葉を飾って
マドワスヤ ワレヨクシレリ ごまかそうというのですか わたしには分かっているのです
トモオコヱ チカラオカシテ 供であるはずなのに力で犯して
ハハガアケ マツリサズケテ 母の心の隙間に乗じて謀の手助けをさせ
ゴトナスオ ハハニシタエハ 悪事を行い、母の方に寄り添えば
ヒメガウム カクサンタメニ 姫の方は納得しないでしょう、これを隠蔽するために
ナガシヤリ タミノメウバヒ 流しやってしまい、タミを欺いて
チカラカス メクミワスルル コクミに権力を貸したことと、(クラキネの)恩を忘れたことによる
フモモクラ サルモモモクラ 200クラと母娘を流しやった100クラ
フムガヰソ ツカムノムソト この虐待が50クラ、(タミをだまして)つかんだ60クラとで
ヨモソクラ コレノカルルヤ 合計410クラです、言い逃れできますか?

 

 

 

と云って、死刑が確定、と思いきやなんと、減刑してしまうのです。

 

 

 

なんということでしょうか、ここでアマテルカミは、その親政のさなかに重大な失政をしたことになります。
罪科が自分に近づくのを恐れ、コクミとシラヒトの減刑をおこなってしまったのです。
なにしろ、クラキネはアマテルの叔父なのですから、その子シラヒトはアマテルの従兄弟なわけです。

 

 

この事件は前回お話したハタレの乱の前に起こった事件なのですが、その結果、ハタレの乱は拡大していってしまうのです。
(じつは、さらにその後、ソサノヲのヤマタノオロチの話に行ってしまうんですが、その話はもう少しあとで、ね・・・)

 

 

 

・ミヤとはなんでしょうか?

 

 

 

最初の頃、私は単純に、古代の日本では、ミヤ(宮)と呼ばれる政庁があり、そこに居住しているカミ(守)が死ぬとカミアガリ(神上がり)して、そこが神社になると考えており、また神道は古代の政事(まつりごと)の儀式化した劣化コピーであると考えておりました。
最近になってちょっと違っていたことがわかりました。
7アヤのソサノヲについての記述をご覧ください。

 

 

 

 

コノイワヒ ナカバサオヱテ この(アメオシヒとクラヒメの婚姻)祝で刑を半減され
サスラヒノ ヒカワニヤルオ (コクミとシラヒトが)氷川に配流され
マスヒトノ ワガトミトナス マスヒトの臣とします
ソサノヲハ コレトトノヒテ ソサノヲは万端整えて
マナヰナル カミニマフデル 真名井に参拝します
ソノナカニ タオヤメアレバ 参拝者の中に、若い女を見染めます
コレオトフ マカタチコタフ これはだれかと侍従に聞くと
アカツチガ ハヤスフヒメト アカツチの子のハヤスフヒメと答えます
キコシメシ キジオトバセテ そこで、キジを送って父の了解を得ようとしますが
チチニコフ アカツチミヤニ アカツチミヤを用意できるなら結婚をみとめましょう
トツガント イエドミヤナク と言われましたがまだミヤを持っていないソサノヲはどうしようもなく
ヲヲウチノ オリオリヤトル 宮中にいりびたるようになったことがばれて
ネノツボネ ヱトヤスメトテ ネの局では(ハヤコ・モチコ)姉妹はしばらく下って休みなさいといって
ウチミヤノ トヨヒメメセバ ウチミヤ(セオリツヒメ)は(ツの局から)トヨヒメを呼んで新たな
ネノツホネ サガリナケケバ ネの局に据えましたので(ハヤコ・モチコは)大いに悲しんでいました
ソサノヲガ タタエカネテゾ ソサノヲは耐えかねて

 

 

ここでキジというのは使者のことで、鳥ではありませんので気をつけてください。
と云ったら、息子にキジとハヤキジの違いはと訊かれてしまいました。
えーと、よくわかりませんが、駅の有るなしで情報の伝達速度は極端に変わると思われます。駅があれば、昼夜の別なく情報を伝えることが出来ると思いますが、駅に関する記録はありません。

 

 

さて、アカツチの言い分は、ミヤが無いのでは生活できないだろう、収入は絶対に必要だ、と。
つまり、ミヤというのは荘園のようなものでしょう。
生産性のあるタミを囲い込んだ状態、カミの所有するタミの生産を再配分し、余剰部分をカミの所得とした、と考えると整合がとれます。
カミはそれを蓄え、生産が低迷したときに備えるのが合理的です。
通常、こういった関係は、そのカミの部族を形成していると考えられます。
その場合、母系制社会がこれに適合すると言われています。
モモヒナギ、モモヒナミ以降ではタミも妻問婚から父系社会に移行していると考えても、トミの家族制度と整合性があるかどうかは不明です。
ソサノヲの姉であるワカヒメは母イサナミから受け継いでいるものが多くあるようです。
(神道ではワカヒメは丹生都比売に比定されており、水銀、硫黄などの生産性の高い能力集団による部族であることが知られています)
アマテルカミはイサナギの財産を総て相続していると考えられますが、ソサノヲはネの国に赴任しただけであり、生産性の基盤を持ってはいないのです。
この点、ヨーロッパにおける領主と領地の関係と似ています。
すなわち、ソサノヲは真面目に赴任先のネで政庁に住んで、マメに政(まつりごと)を執り、タミの人望を蓄え、自分(個人)のミヤを持てるように努力しなくてはならなかったのです。
若気の至りといえばそれまでですが、この、待遇の差を考えると、すべて個人責任だといいきれない部分もあるでしょう。
この時、ソサノヲは耐え切れず、剣を抜いて暴れようとしましたが、ハヤコが押しとどめ、「イサオシナラバアメガシタ」(どうせ闘うなら天下をとりなさい!)といったのも女性心理をよく表していると思われます。
まあ、結局天下取りに出たのはシラヒトであってソサノヲではなかったのですが。

 

 

 

・マヒナヒについて

 

 

 

目上の人に世話になるときに贈り物をするのは、事業を円滑に進めるために有効なので、必ずしも悪事ではなかったようです。
ただし、それはタミの要求が満たされる場合で、賂だけつかんで結果を出さない場合、タミを欺いたことになるように見えます。
この言葉はマジナイと同一にもみえるのが興味深いところです。
事業をうまく進めるためのスパイスと考えると、マジナイと同じでもかまわないような気がしてくるのです。

 

 

 

・私通、密通に関して

 

 

 

これはもう、そうとう緩いのではないでしょうか。
ソサノヲが問題になったのはアマテルカミ親政の折、支配体制を維持しないわけにいかないので、アマテルカミも、知らぬふりをしてお目こぼしをしていたかと考えます。
問題が発覚するのは皇后であるムカツヒメによってです。
モモヒナギ、モモヒナミ以来の伝統でアマテル夫妻も「同格の夫婦」であり、ムカツヒメは宮中の風紀委員長といった感があります。
これではソフキサキは不満がたまりそうですね。
なにしろ日本中が緩いのですから、一般と宮中の差は歴然としています。

 

 

だいぶ長くなりましたので、いったん切りますがこの項はすぐに続けます。
アメ族(仮称)について書きたいと思います。