シネマートでは6月末より<反逆の韓国ノワール2016>なる特集上映をやっていて、「極秘捜査」「鬼はさまよう」「殺人の輪廻」「名も無き復讐」の四作品が一日にして観られるというのを、新宿と心斎橋のシネマートでそれぞれ2週間ずつやっていた。


タイトル、そして予告編を観るだけでも、強烈な刺激に充ちた作品群であることはわかる。それらを一日で観られる! こりゃスゴイ。しかも地方在住でも一日だけ東京か大阪に行ければイイ。。。

いやはやスゴイ企画を考えるものである。すばらしきシネマート。


と、褒めてみたものの、地方在住の私は、この間に東京にも大阪にも行くことができず、ひとつも観ることができなかった。。。本当に残念。


で、韓国映画を観たいって気持ちにあらがえず、観に行ってきました「暗殺」を。


本作のほうはシネマートさんだけでなく、主要都市で7月16日公開。

さっすがタイトルにも書いた通り、韓国映画歴代TOP10入りの作品(微妙な宣伝文句?)です!




ストーリーはシネマートさんサイトから以下に色つき文字で拝借しますね。


1933年中国・杭州に設けられた韓国臨時政府は、日本政府要人と親日派を暗殺するため、独立軍最高のスナイパーのアン・オギュン、速射砲、爆弾専門家の3名を上海に結集させる。


(左からチェ・ジヌン演じる速射砲、チョン・ジヒョン演じるアン・オギュン、チェ・ドクムン演じる爆弾専門家)

臨時政府の警務隊長で、日本政府の密偵であるヨム・ソクチンは、彼らを招集する一方、仲間と政府を裏切り、巨額の報酬でハワイ・ピストルと呼ばれる殺し屋に暗殺団3名の殺害を依頼する。


(イ・ジョンジェ演じるヨム・ソクチン)




(ハ・ジョンウ演じるハワイ・ピストル)

ヨムの画策を知らぬまま、暗殺実行のため、上海から京城(現・ソウル)へと送り込まれた彼らには、非情なまでの運命が待ち受けていた…。

ストーリー抜粋は以上。


1933年の杭州、上海、そして京城が主な舞台になっているわけですね。


この時代、言うまでもなく映画の題材にはぴったりの時代でして、日本軍(関東軍)や韓国や中国の抗日戦士入り乱れての情報戦は緊張感があります。


そういえば、チョウ・ユンファ、コン・リー、渡辺謙、ジョン・キューザックの四人が主演した「シャンハイ」は1941年の上海が舞台。


トニー・レオン、タン・ウェイが主演した「ラスト、コーション」では1942年の上海が舞台になっています。


日中戦争開戦が1937年なので、今回の「暗殺」はちょうどその前、「シャンハイ」と「ラスト、コーション」は開戦後ということなるので、上海の描写もそのあたりに気をつけてみるとよいのでしょう。


本作、時代考証が徹底していると映画チラシには書かれています。


例えば、以下は暗殺の任を帯びた三名が、京城駅に降りたつくだりの劇中ショット。



日本酒らしきものを抱えていて、デザインは当時のお酒を再現したものなのか私には判別できませんがそれっぽいです。

後方には日本髪に着物の女性がいて、一目で日本人とわかります。


そして、このシーンでは、京城駅のアナウンスが、朝鮮語と日本語の2カ国語で流れています。

当時の朝鮮半島は日韓併合されていましたから、日本語教育も推進されていますが、当然併合後23年だと日本語を理解できない人もいるから現実にもそうだったんでしょう。


一方、以下は上海のカフェーでのシーン。



蓄音機が見えていますが、私はそれら美術よりも演じる俳優達の衣装が気になりました。

ここでハワイ・ピストル役のハ・ジョンウがしているスカーフが、物語の重要な小道具になるのですが、この二人が着ている衣装はどれもなかなかお洒落なんですね。


ちなみに衣装担当は、ハ・ジョンウが主演した「群盗」でも衣装担当だった方だそうです。

群盗は朝鮮王朝末期の1862年が舞台だそうだからだいぶん違う衣装で、しかもハ・ジョンウは身分が卑しいものということでボロを来ていたわけですが、本作とはエライ違いです。


さて、今回は内容にもなんにも触れず、時代だの衣装だのについて語っていますが、もちろん内容もかなり面白かったです。


監督は「10人の泥棒たち」も監督したチェ・ドンフンなんで、若干コミカルなシーンもあり。そのくせ火器をつかった爆発シーンや銃撃戦は圧巻です。


こういう作品がどんどん出てくる韓国映画はやっぱりパワーがあるなぁと再認識しました。


それにしても、「猟奇的な彼女」で華々しく登場して、その後は海外進出(アジエンスCM出演も!)やら、私生活では結婚やらで、人間的にも成長したチョン・ジヒョンは、本作でもなかなかの熱演。

「10人の泥棒たち」のジヒョンのはじけっぷりも面白かったけれど、本作のジヒョンは影がある役とお嬢さま然とした役とを演じ分け(? 詳細はネタバレになるんで語れずゴメン)てて、それぞれの魅力をチェ・ドンフン監督に引き出されていた感じ。




本作のこの役でジヒョンは韓国のアカデミー賞と呼ばれる大鐘賞の女優主演賞を受賞。「猟奇的な彼女」以来二度目の受賞だそうな。


このタイプの戦中映画だと、もっと反日ムードが前面に出ているかと観る前には若干恐れたけれど、そうではなかった。ただ主人公らが運命と時代に翻弄されたって感じの設定になっているところは、日本人にとっても見やすい映画になっていると思う。


オススメできる映画です。ただいま公開第一週ですし、これから順次主要都市以外にも公開されていくようですよ。