言わずとしれた武侠小説の三大家・梁羽生(他の二人は金庸と古龍)原作の「白髪魔女伝」のリメイクもの。





そして、数あるブリジット・リン(林青霞)の当たり役のなかでも、東方不敗に次ぐ名(迷)キャラクターである白髪魔女(練霓裳:レン・ナイツァン)が登場する有名物語。

この白髪魔女伝はロニー・ユー(于仁泰)が監督していました。





ヒロインであったブリジット・リンの印象が強すぎ、またヒーロー役でかつ主題歌を歌ったレスリー・チャン(張国栄)のイメージも鮮烈に残っているというハンディを背負った中国製映画です。


今回の正式タイトルは、『白髪妖魔伝』(原題:白髪魔女伝之明月天国、2014年)。オープニングロゴを見る限り、大陸映画です。


ただし、監督は、『墨攻』でも日本市場に名を売った張之亮(ジェイコブ・チャン)。香港の監督ですが、最近は、大陸色が強くなっていますね。


墨攻でもヒロインであったファン・ビンビン(範冰冰)が今回は白髪魔女=練霓裳を演じています。




しかしだね。


白髪になるシーンのすさまじさといったら、やっぱ1993年版本家(実はこっちも1959年版のリメイクなんだけど今作があまりに強烈だったんで、それはおいておこう)にかなわない。


まず、ブリジットの強烈な目力というのもあったと思う。目で演技するんだけれど、ブリジットのそれは本当に鬼気迫るものが感じられる。


対して、ファン・ビンビン。もうベテランの域に達する中国を代表する美人女優だけれど、武侠モノに似合うという素材ではない。

いかんせん顔がバタ臭くて、白髪になったはずなのに、なんだか金髪になったみたいになっちゃっている。

(というか、途中から照明のせいもあるかもしれないけれど、ビンビンの髪が金髪に見えちゃうんだ)


ブリジットの映画は奇想天外なものが多いけれど、どれも納得しちゃうのは、彼女の目の演技に依るところが大きい。実際、広東語はしゃべってないから、台詞は別人が入れてるし、当方不敗みたいに男の声から女の声になっちゃう役など、もはや地声のはっきのしようがなかった。


それでも納得の演技力かつ武侠世界に映えるというのがブリジットだったんだよね。


一方、ファン・ビンビンは、私も大好きな女優さんだ(李玉(リー・ユ-)監督の作品での主演はどれも素晴らしい!)けれど、武侠世界にマッチしないのだ。顔がやっぱバタ臭いんだよね。武侠小説の中にこの顔はないよなーってなっちゃう。

イイ意味でも悪い意味でも。


この点、ジャッキー・チェン&ジェット・リー主演のアメリカ映画『ドラゴン・キングダム』(原題:The Forbidden Kingdom)でリー・ビンビン(李冰冰)がチョイ役で、白髪魔女を演じているんだけれど、こっちのがブリジットに近い風貌なんだよね。





ま、今は中国大陸のテレビドラマでも白髪魔女はたくさんドラマ化されてしまって、何人もの白髪魔女が誕生しているわけだけれど、残念ながら、ブリジットの強烈さには叶わない。


ジェイコブ・チャンもそれを理解しているのか、白髪への変身シーンは、ブリジット版とは全然違う感じに、今回の白髪妖魔伝では仕上げられていたよ。


ブリジット版は、裏切られた恨みで変身するんだけれど、ファン・ビンビン版は、なんか持病が発病する感じ。


で、白髪になっちゃってからも、ヒーローと手を組んだりして、白髪に変わったことの意味がよくわからない。


ブリジット版ではパート2まで作られたけれど、本作にはその余韻はなし。


今回もまた3Dで作られたため、2Dで見ると映像がとてもチープ。これも残念だった。

一瞬、テレビドラマの再編集版かと思ったくらい。


でもね、チョイ役でウィン・チャオ=チウ・マンチェク(趙文卓)が出ているし、アクション監督は一応はトン・ワイ(董瑋)。

だから、かなり良いアクション・シーンもある。


ただなー、前作でレスリーが演じた卓一航は、ホアン・シャオミン(黄暁明)が演じているんだけれど、アクションはレスリーよりも見せ場がないんだな。そもそもレスリーだってアクション俳優ではないので、適当に草を剣に見たてて振り回しているだけってシーンもあるんだけれど、それでもやっぱレスリー特有の色気が茶目っ気が、「うんうん」という納得感を出していた。

シャオミンは筋肉ももりもりなんだけれど、その納得感がないんだなーー。


私、香港映画好きすぎて、大陸作品にちょっと厳しいのかな―。



本作、本邦では劇場公開されず、WOWOWお披露目であったらしいけれど、確かに、ちょっと劇場で見る作品ではないのかな。とはいえ、中国では3Dで作られたんだから、劇場作品なんですが。


ファン・ビンビンも好き、チウ・マンチェクも好きなのに、この出来というところが、ちょっと残念な本作でした。