すごい勢いで駆け抜けている日活配給の「ボリウッド4」。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ


一週間に一本というハイペースで公開されていた『タイガー 伝説のスパイ』、『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』、『命ある限り』。それぞれに、私が見に行ったときは会場は大入りでした。そして、観客の泣き、笑いを共感してどれも大満足の3時間(!)を過ごしました。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

そして大トリをかざるのが、インド映画歴代興行収入記録ナンバーワンのこの『きっと、うまくいく』(2009)というわけ。

全国ロードショーだから、昨日から公開されている地方も多いはず!


最後だけは、一週間でなく一ヶ月近いロングランで公開されますし、一日三本も上映しています。

なぜなら、それだけ内容が素晴らしいからなんですね~。


なんとなく私は、前評判は聴きつつも、予告篇を見る限りは、一番地味っぽいのが『きっと、うまくいく』だと思ってた。

しかし、若者の可能性を称え、かけがえのない友情を描いていて、インド映画特有のインターバル(休憩時間)の表示がはいるまでに、超クライマックスが訪れるって所も、観客を「おおお!」と思わせるエピソードだったよ。

だから、3時間まったく飽きさせません。

私なんて、トイレにも行きたくならなかったよ(いつもはなるのに)。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ


「きっと、うまくいく」というのは、この映画の劇中の合言葉。

All is well.

この言葉を、インド風にアーリズウェーと言っているシーンは予告でも印象に残ります。


ただ、本当の英語題はチラシにもあるように、『3 idiots』。

普通に訳せば「三馬鹿」ってところでしょうか。


でも、それじゃわからない。

今回の日本語タイトルは、劇中の決めぜりふを活かした、けっこうセンスあるものになっているかも。

すべてはきっと(All)、うまく(well)いく(is)ってね。


映画のストーリーを以下に私流に要約すると、こんな感じ。


インド最高峰の理工系超難関大学であるICE(Imperial College of Engineeringかな? 架空の大学です)に入学した、ランチョー(こいつが主役で演じるはアーミル・カーン)、そしてファランとラジューの三人。


ランチョーは工作の天才で成績も優秀だけど、常識にとらわれないからトラブルメーカー。そしてファランとラジューはそんなランチョーと大学寮が同室になり、意気投合して大親友になる。



ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

物語の前半は、大学のなかでのトラブル解決(もちろん自分が巻き起こすトラブルなんだが)を通して、よい成績を取るためでなく、世に役立つ工学の重要性を訴えることに次々と成功するランチョー。


そんなランチョーの言葉が、大学の仲間たちや、ファランとラジューの両親、そして敵対していたはずの学長(と、その娘さん)にまで届いてしまう。

仲間たちとのあたたかい交流、そして勉強と、大学生活を謳歌します。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

物語の後半は、大学卒業後に行方不明になってしまったランチョーを、10年後にラジューとファランが探す旅。


こちらは謎めいた要素があるので、詳細は映画を見てね。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ

クライマックスも大きな感動を残してくれたよ!


というわけで、インドで興行収入歴代ナンバーワンは納得。

ボリウッド4のここまでの三作品が、海外ロケにハリウッド以上のアクションという超大作揃いだったから、ちょいと地味かな、と思ったのは大間違い。

人生、勉強、友、家族、こうしたものの大事さ、すばらしさを本当に考えさせる仕上がりになってました。


ところで、劇中のインド屈指のエリート理系大学ICEってのは、インドに詳しい方ならわかると思うけれど、インド国内に7校あるインド工科大学(IIT=Indian institute of Technology)のことだとピンと来るはず。


このIIT。2008年の政府方針により、さらに8校が増設され、現在は15校もあるとか。


それでも依然として超難関大学(倍率は60倍だとか)で、この大学に入ったら、就職は間違いなし。それまでの階級に関係なく、工学系のエリートとしての活躍が約束されているんだよね。


映画のシーンは、デリーを思わせるシーンが出てくるので、おそらくはIITデリー校の雰囲気を出しながら、実際の撮影は別の所で行ったんだと思う。


そして、その「別の所」なんだけど、インド滞在経験のある私・龍虎は、大学の外観シーンを撮影した場所に見覚えがあるんだよね。

で、Wikipediaの英語版を見てみたら、ドンピシャ。


インド経営大学院大学バンガロール校(IIM bangalore)が、舞台の大学(ICE)の外観として撮影されていました。

はい、ここに行ったことがある(といっても遊びに行ったのだけれど)のだよ。ふふん。


ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ


自慢話はさておき、社会の底辺からも抜け出すことが出来るエリート理工系大学への進学・卒業は、インドじゃ一生を文字通り変えるパワーを持っています。


なぜ、理工系なのか、と言えば、文系は階級が温存された社会で、官僚になるのもマネージャになるのも、出自が邪魔になるけれど、理工系なら自分の頭脳次第で、高給を取れる就職が得られる(その多くが外資系の職場)からなのです。

もちろん、良い職場を狙うほど、在学中の成績がモノを言います。


だから、IIT入学のために必死で勉強し、そして入学してからも懸命に勉強しているわけですよ。


この映画を見るときは、そんなインドの特殊な事情を知っておくと、より深く感動できるはずですよ。

私は感動しました!


あーインド映画マジすげー。


このブログ、中華を中心としたアジア映画のブログのはずだけど、今年はインド映画の大流入イヤーだし、かなり記事に占めるインド映画の比率が高まる予感がするよ。