脚本はパク・サンヨン(『JSA』)、映画のテーマは、「朝鮮戦争、最後の日。歴史から消された苛酷な12時間の戦い」というチラシのコピーからもわかるように、1950年6月から三年一ヶ月続いた南北境界戦をめぐる攻防。

こう聞くと、『シュリ』から『JSA』に至る世界で唯一残った民族分断国家ならではの設定で魅せる映画の流れをくむモノ、とすぐにわかるかもしれない。


実際、その通りの映画。

ただし、シュリとJSAは現代(双方とも1999年)が舞台でしたが、この映画はまさに朝鮮戦争で戦闘中当時が舞台。

当然、戦場の苛酷さがダイレクトに描かれた点でそれらとは異なっています。


韓国では2011年夏に大ヒットしたこの『高地戦』。

製作費は100億ウォンにのぼるとか(チラシ情報)。日本円にするとざっと約7億5000万円ですかね。


監督は『義兄弟』のチャン・フン。


主演は、シン・ハギュン。

私は彼の作品を観るのは初めてかもしれない。


主役のカン・ウンピョ中尉を演じたシン・ハギュン
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
画像は『高地戦』公式サイトより


メインの助演にコ・ス。

このブログでは、義兄弟にも出演しているカン・ドンウォンとの共演作『超能力者』で紹介 済み。


チラシ右側で前面にいるのがコ・ス
ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
主演は左のシン・ハギュンなんだけど


コ・スは超能力者でもそうだったけど、育ちの良さそうな美形。

この映画のなかでも汚れメイクは少なめで、戦闘の日々なのに美しすぎるその顔が多少は気になった。

しかし、映画全体の出来は素晴らしく、またコ・スの演技も良かった。コ・スの演じたキム・スヒョク中尉はチラシにも「戦争の化身」になってしまった主人公の旧友と書かれているのだが、わざと不気味さを強調するために美形が際立つ顔にしたのかもしれない。


そして、何より主人公のウンキョ中尉を演じたシン・ハギュンの演技力!

最初はこの人誰? 松本幸四郎の若い頃に似てるな、的な状態であった私も、作中その演技にグイグイ引き込まれていったよ。チラシには「韓国屈指の実力派」とあるので、私が知らなかっただけでした。スイマセン。


で、この二人に次ぐ主役格と呼べるのが、部隊の若きリーダーを演じたイ・ジェフン。

初見なのだけど、迫力がある役柄に合っていた。この人にも引きつけられるものを感じました。


イ・ジェフンはこちら

ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ
公式サイトより


ストーリー自体はと言うと、、、


1950年6月25日から3年1ヶ月続いた戦闘の終わりは、停戦協定の成立ではなかった。『高地戦』は韓国でも記録が残っていない朝鮮戦争の真の結末を描いた映画だ。
戦争末期、停戦協定は難航を極め、南北境界線の高地では【今日奪われたら明日奪う】攻防戦が二年も続いていた。繰り返される激戦で草木は枯れ果て、身を隠す場所もない。急な斜面を被弾覚悟でかけのぼるしかない高地戦。その狂気の地獄で停戦だけを願って生き抜いてきた兵士達に、極限を超える日がやってくる……。

(シネマートさんのサイトより)


というもの。

映画の三分の二は、いつ停戦になるかと待ちわびながら、いつまで続くかわからない戦闘に命を散らす壮絶な日々が綴られ、残りの三分の一で停戦協定が発表されながらも、残すところ12時間の最後の戦闘が始まる、というもの。

停戦がすぐ先にあるとわかっていながら、「停戦協定が実効を迎える時の最前線(The Front Line:本映画の英語タイトル)が韓国の領土になる」という、ただそれだけのために闘わなければならない現実。

非情な、悲しい映画である。


133分、目が離せない映画でありました。