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ベルばらが好きで、好きで、色んな絵を描いています。pixivというサイトで鳩サブレの名前で絵を描いています。。遊びにきてください。

 「着いたぜ。お二人さん。」ミシェルがパリの街中に馬車を停めてくれたのは、セーヌ川にほど近い、あちこちでカップルが甘い言葉を交わしている橋の袂だった。

 

「このあたりだったらぶらつくもよし、少し歩けば気の利いた店もあるぜ。」と言うミシェルにアンドレは「ありがとう。少しは旨い酒でも飲んで帰ってくれよ。」と飲み代を彼に握らせた。

よしてくれよ、と拒否るミシェルに頼むよ、受け取って?と言って何とかミシェルに受け取らせた。

 

「なあ、オスカル様。いろいろ事情はあると思いますがね。男としては好きな女とお忍びデートをするときは、あんまり凛々しいお姿はいかがなものかと思いますよ!!!」と、ミシェルは言い捨てて

馬車を預け、さっそく飲みに出かけてしまった。

 

 先ほどから今日の自分の服装を気にしていたオスカルだが、ミシェルの一言で本格的にへこんでしまった。ミシェルとは幼いころからアンドレとつるんで遊んでいた。口は悪いけどさっぱりとした性格と裏表のない彼の言葉にはオスカルは信頼をおいている。

 

だからこそ・・・・。そうだよな、ミシェルの言う通りだよ。私が勇気を出して「今日は簡素でもいいからドレスを着たいんだ。」って言えばよかったんだ。アンドレをがっかりさせなくて済んだんだよ。

 

「俺は、ガッカリなんてしていないよ、オスカル?」そう言って肩をポン・・・と叩いてくれたアンドレに

オスカルはドキッとした。「え?なぜ私が気にしているのわかった?」

「だって、お前の事だもの~。何考えてるかわかるさ。オスカルはオスカルだよ。さあ、へこんでいないでせっかくのデートだぜ?焼き栗でも頬張りながら、歩こうか、うん?」

 

オスカルは思わず微笑んでしまった。

本当に…アンドレはいつも私の気持ちを先に読み取ってくれるんだよな。そしていっつも私の心を

あげてくれる。愛おしいよ。だからこそ、お前に私のドレス姿、見せたかった。

 

オスカルの思いを知ってか知らずか、アンドレは屋台の焼き栗を買って彼女に差し出した。

「食べてみろ。美味いぞ?」

「うん。ありがとう。」

一つの袋に入ってる焼き栗を二人でシェアしながら散策していると、何だか楽しい気持ちになってきた。

 私達、今夜はおおっぴらに恋人同士みたいじゃないか・・・。

 晩御飯、食べた後ちょっと甘えちゃっていい感じかな・・・。

 

オスカルが思ってた時、「アンドレ、今日はお仕事は終ったの?」って鈴のような声が聞こえた。

振り向くと可愛い男の子がアンドレのベストをブンブンと引っ張っている。

 

いや、それだけならいい。

男の子の後ろにいるのは明るい栗毛色の柔らかなウエーブのかかった妙齢の女性。

「あ…その節は本当にありがとうございました。今日は非番でいらっしゃいますか?」

「ええ。今日は休みなんです。それにしても坊や大きくなったね。この前はまだ、お母さんのスカート握りしめてたよな。」

「よしてよアンドレ。僕はもう大きいんだよ?俺さ、アンドレなら父さんになっても怒らない。」

「あ、こらリムはなんてことを。ごめんなさいねアンドレ。でもたまには、警らの時ウチによって下さいね。リムが喜びます。」

そう言ったリムの母親は、服装こそ粗末だが、たおやかでとても綺麗な女性だった。

別れ際にリムはアンドレに言った。「じゃあきっとまた来てね、アンドレ。隣の金色の髪のお兄ちゃんも一緒に来ていいよ。」

 

お兄ちゃん・・・って私・・・・?

 

リム親子と別れてからのオスカルは、何だかいつもよりも元気がない。

 

「・・・・どうしたんだよ。」とアンドレが聞く。

「お前、モテモテだよな。パリの街中で。特に人妻に・・・!」

「はあ?お前何言ってんの?リムはね、アランと俺でパリに警らに出てた時に万引きしようとしてたのを止めたのさ。前の日何にも食ってなかったあいつにパンを買ってやったんだ。だからお母さんが

俺達の事、よく覚えていたんだよ。もう、せっかくのデートなのに人妻とか言わないでくれる?」

 

あ、なるほどね。いかにもアンドレ&アランのコンビの時に出くわしそうなことだよな、ってオスカルが納得して少し元気が出た。

 

そろそろ、お酒を飲みながら食事でもするのにいい感じの夜になってきた。あちこちの居酒屋から

陽気な歌声や、食事を楽しむ声が聞こえてくる。まだオスカルが近衛の頃、もちろんアンドレの恋心が彼女に届いていなかった頃、騒がしい男っ気満載の居酒屋に入ってオスカルが大暴れをしたことがある。あの頃とは違い、オスカルとアンドレも相思相愛の仲とは言え、彼女の酒癖はそれほど変わってはいない。アンドレは美味しいお酒と料理が出る、女性客も多い安心な酒場を選んだ。

 

 酒場にしては垢ぬけたテーブルクロス。座りやすい椅子の店内には、カップルの他に若い娘のグループもちらほら。たぶん、小間物屋で働く娘達や洋裁店のお針子達が仕事帰りに幾つかの小皿の料理をシェアしながらお酒をたのしんでいるのだろう、わあっと言った笑い声や、誰と誰が付き合ってる、みたいな女子トークが聞こえてくる。

 

 オスカルとアンドレは、4人掛けのテーブルに向かい合って座り、ワインをフルボトルで一本、それと

ソーセージの盛り合わせに野菜の煮込みを注文した。この界隈ではかなり「お上品な」居酒屋だが、この二人はかなり人目を引く客だった。 近くの女性客達の視線がやたらと注がれる。

 

 「なかなかいけるな、ここの料理。」ワインで気持ちよくなったオスカルはアンドレが皿に取り分けてくれたソーセージをつまみながら笑った。

「よかった。さっき元気なかったから。あ、次はチーズ・カマンベールでもどう?」

「うん。ブルー・チーズもつけてほしい。」「了解。」

ホッとして煮込みを食べ始めたアンドレの肩にそうっと手が掛けられた。「ん?」と振り向くと、ワインボトルとグラスを手にした若い女が二人、こっちに向かって派手な笑い顔を向けている。

 

「あの…何か?」酒場での逆ナンに慣れているアンドレは断り方を考えていた。

「私達二人なんだけど、相席いかがかしら?黒髪が濡れ濡れのお兄さんと、金髪の眩しいお兄さん。どちらも素敵だわあ。飲んで食べたら、踊りにでも行かない?」

 

アンドレはゆっくりとオスカルの方を見た。「お兄さん。」と言われたオスカルの瞳が揺れている。

 

ショックだよな。こんなに可愛いお前なのにお兄さん、なんてな・・・・。ズボン履いてようが、

シトワイヤンの格好だろうが、お前は俺の恋人だぜ?

ようし、今夜の逆ナンの断り方はこれでいこう。

 

アンドレは向かいに座っているオスカルをグイっと抱き寄せると熱いキスをした。

「え?え・・・?」オスカルは心の中で叫んだが、アンドレの力には抗えない。っていうかキスがあまりにも気持ちよくて、自分の首に掛けられた彼の腕に頭を委ねてしまった。

 

え・・・?マジ・・・?目の前の熱烈なキスシーンにフリーズする女性陣。

 

ようやくオスカルから唇を離したアンドレは、ニヤリと笑って二人に言った。

 

「ごめん。今日は彼女との久々のデートなんだ。今度また、野郎のダチを連れてくるからその時は

よろしくね。」

 

あ、はい・・・・とすっかり毒気を抜かれた女二人は元の自分達のテーブルに戻っていった。

 

「あ・・・・料理冷めちまう。食べようか。」周りからの萌える視線にいたたまれず、二人は猛烈な勢いでワインと料理を平らげ、金を払って店を出た。

 

「あの、悪かったな。店の中でキスなんかして。」店を出てから黙りこくっているオスカルが怒っていると思ってアンドレは言った。「お前の事、『お兄さん』なんて言うからムカついたんだよ。」

 

「アンドレ、ゴメン。」オスカルはつぶやいた。「せっかくパリでデートだって言うのに、男と間違えられたのは私が悪いんだ。」

 

え?何だか女の子だね、今夜のオスカル。よし、作戦決行だな!

 

「じゃあ、さ。もう一軒付き合わない?実はもう少し腹に入れたいんだ。いいだろ?」

「うん・・・。でも知らないぞ、また娘達に逆ナンされても。断ってくれるだろうな?」

 

・・・・という訳で、入ったお店は「シモーヌの店。」

 シモーヌはかつて、ジャルジェ家で働いていた娘で、今はこの店の美人女将としてパリの男達のちょっとした塩対応系「マドンナ。」しっかり者で気も強いが優しい彼女は、オスカルとアンドレに受けた恩を忘れずにいた。

 

「うわああ、シモーヌじゃないか。すっかりきれいになったなあ。」とオスカル。

「久しぶりだね、オスカル様、アンドレ。さ、奥のテーブルにどうぞ。」とオスカルを案内しながら、

彼女に聞こえぬよう、アンドレに囁いた。「あの席でよかった?アンドレに言われた通り、あそこなら

と思ってね。」「ありがとう、シモーヌ。恩に着るよ。」

 

シモーヌは得意げに、嬉しそうにポンポン、とアンドレの肩を叩いた。「うまくいくと、いいね。」

 

 ワインとクラッカーを注文すると、二人は本日2回目の乾杯でグラスを傾けた。

 

グラスのワインが空いたころ、アンドレはポケットからゴソゴソと何かを取り出した。

 

「オスカル、これ開けてみて。」

「え?これって・・・。」小さな箱に入っていたのは、小さなルビーのネックレス。

「う~ん。お前のイメージって、サファイアブルーとか、氷の薔薇、とか言われるけど、俺にとっては可愛い女なんだ。だから赤いルビーのネックレス渡したくて。」

「え?それで今日のデートだったのか?それでシモーヌの店に?」

「シモーヌは口が堅いし、俺達の事理解してくれてるからね。お願いした。」

「アンドレ・・・。」

「ブラウスの下でいいからさ。時々はつけてくれないかな?似合うよ?お前の肌に、綺麗なルビーの色は。」

オスカルは下を向いてしまった。そして思い切って彼に言った。

「私が…私が悪いんだ。クレアにだって『今日はドレスで出かけるんだ。』ってはっきり言うべきだった。お前がこんな贈り物を考えてくれていた日に、私は・・・。」

「オ、オスカル?そんな気にしないでくれ。」

「アンドレ、デートのリベンジだ。その日は必ずドレスを着る。お前がくれたルビーのネックレスを身に付けて。」

「え・・・?本当に?それはすごく、楽しみだな。」

「だからアンドレ。ここからはお前の仕事だ。あの石頭クレアとばあやが非番の時を狙って私達の

デートの日を決めてほしい。」

「・・・・・・・・・・・・・。」多分、アンドレにとってデートプランを練るよりも難解な仕事だ。

 

それでも、ほぼほぼ1週間ほど後にアンドレはオスカルとの休日をゲットし、オスカルは無事、

ポリーヌが用意してくれたシンプルなドレスとルビーのネックレスを身に付けることができた。

 

 その夜、二人が屋敷に帰ってきたかどうかは、誰も知らない・・・・。

 

「俺は知ってるぜ~。」と愛妻相手にワインを飲むミシェルはほくそ笑んでいた・・・・。

 

おしまい。

 

最近、現代物別ジャンルの沼にハマっているので、文章が少々チャラくなっていますが、ベル愛は

健在でございます。シモーヌは私のお気に入りオリジナル・キャラでずいぶん前に投稿しました

「酒場の女・シモーヌ」のシモーヌ姉さんです。

 

 

以前販売した同人誌のおまけでシモーヌ姉さん描きました。