両側を豊かな、緑の木立につつまれた小径を抜けると、可憐な野ばらが絡みつく薔薇のアーチが見えてきた。そこを通り抜けると、目の前に、こじんまりとした、でもとっても堅牢な館があらわれた。
「この、お屋敷・・・よね?」エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ル・
ブランは馬車の窓をあけ、目の前に広がる手入れされた庭の木々と、美しい野の花の美しさに目を細めた。エリザベトは王妃
マリーアントワネットのお気に入りの宮廷画家で、女性の内面の美しさを描くということで有名な、美しい女流画家である。
「どうか、お忍びで訪問していただきたい。」という、依頼人からの要望で、彼女はただ一人、依頼人からの迎えの馬車に乗り、この
館にやってきたのである。
エントランスホールには、庭に咲いている花々が彩りよく飾られている。初老の女性がエリザベトをにこやかに迎え入れ、コートを
預かってくれた。
応接間に通されると、天井まで届く高いガラス窓からは庭の木立からもれる光が部屋の中まで届くようで、何とも柔らかな雰囲気だ。
決して華美過ぎず、でも腕のいい職人によって作られたであろう
家具の幾つかがそこにはおかれていた。若草色のカーテンと、同じくグリーン系でいくつかのクッションがラブチェアーの上にふんわりとおかれている。ベージュの壁紙の壁には、美しい海岸線と、反対側に広がる森が描かれた大きな絵が掛けられている。
「なんて清涼感のある、お部屋なのかしら・・・・どんな方だろう。絵の話などをしながらおしゃべりをしたい、という若い奥様だと
お聞きしたのだけれど。」
画家という仕事柄、壁にかかっている絵を見ながらエリザベトは
色々と想像をめぐらしていた。
その時。
重厚な扉が開き、流れるような見事な金髪の女性が柔らかな
笑顔で部屋に入ってきたのを見た時、エリザベトは驚きと
懐かしさを隠すことができなかった。
「あなたは・・・オスカル様!オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ
様であらせられますか?」震える彼女の声。
「本当におひさしぶりです。 ル・ブラン夫人」白い絹のブラウス
にゆったりと部屋着をはおったオスカルはこの美しい
女流画家に、花のように微笑んだ。
続く
全体的に印象派の絵のような作品を目指しています。ふんわりとした幸福感を出したいので、オスカルもふんわりとした感じに。
