「実平殿はこのまま高砂へ抜け、塩屋から一ノ谷へ進軍されよ」
九郎義経は言った。
「われらの方に多くの兵を頂いて申し訳ないが」
「九郎殿、高尾山の南には一ノ谷に抜ける道などないと思いますが」
土肥実平が疑問を義経に投げかけた。
「おぉ、よく気づかれたな、さすがは兄上に一目置かれる次郎殿」
と世辞ともとれる言葉をもらしてから、
「いや、よいのです、矢合わせは予定通り、7日ということで」
「・・・策・・・がおありか」
実平は義経に詰め寄った。
「ははは!次郎殿はごまかせぬか!」
義経はこの空気を変えようと笑って見せた。
「戦が始まってみればお分かりになるでしょう、継信!兵を進ませよ!」
「はっ!」
「次郎殿!されば戦場にてお会いしよう!」
実平は義経に煙に巻かれた形になった。
「くろっ・・・九郎殿は何をお考えなのか・・・」