町家の生徒さんと隷定(れいてい)*について話した時、
以前、古代文字資料を作る時には、
パソコンでは出ない文字があるため、
➀ PCで打って
② 印刷して、
③ PCで出ない文字を手書きして
④ 文字をトレーシングペーパーでトレースして、拓本の横に一枚ずつ切って、貼って
⑤ 印刷して終了
そんなことを行なっていたと話し、
「懐かしいな~」と郷愁に浸ってから、
「古代文字の資料作りには、必ず隷定(れいてい)することが必須なんですよ」と話した。
例えば、
町家で行っていた西周金文の『頌𣪘(しょうき)』の一文字でいうと、

「各」
この『頌𣪘』の「各」は、各々(おのおの)の意味ではなく、
ここでは、「いたる」の意味なので、いたるの意味の「格」字を当てる。だけれど、西周金文の文字には木偏はいまだ付いていないのだから、
「各(格)」と書くのである。
*隷定とは、古代文字を、いまの漢字で提示すること
次も同じである。

受ける意味ではなく、授ける意味の場合は、
「受」と書いてから、受ける意味ではなく、
授けるの意味だと理解できるように、
()丸括弧に、「授」を入れて提示する。
これらは、PCで簡単に打てば出てくるけれど、
以前は、PCで出ない文字ばかりだった。
それで、パソコンの右下にある
あ
のところを右クリックして、IMEパッド 手書き で、文字を探していたこともあった。
町家の生徒さんは、いまも、
これで文字を探しているという。
IMEパッド 手書き
ここにマウスで文字を描いてください。
わ~、懐かしくて、またまた、少し泣きそうになりながら、
「手書きで探すのではなく、ネットの広い世界で、漢字を探した方が効率が良いですよ」と、
「自分のパソコンは、自分色に育てるんですよ」と熱く語りながら、
「ネットの漢字辞典使いやすいですよ」と伝えた。
漢字辞典漢字の部首・画数・読み方・意味・筆順など
この漢字辞典で調べた文字は、単語の登録に入れ続けているため、我がPCは
どんどん、古代文字色に染まっていくのである。
また、目黒の生徒さんも、ご自分で古代文字をSNSで発信している方がおられるため、
「え、この文字、PCで出ますか⁈」
「どうして、この文字、活字で打てたんですか?」
というご質問が飛んでくる。
隷定には、zi.toolsが欠かせないのである。
このzi.toolsで、偏と旁の組字をして、隷定に成功すると、なんとその特典であろうか、
甲骨文や西周金文の用例などが提示される。
このzi.toolsの凄まじいところは、古代文字の字形の構成要素を、左右や上下に組字をして
エンターキーを押すと、
そのほとんどが、活字として取り込めるのである。(取り込めない文字は、文字をコピーして添付する形となる)
これを教えて下さったのは、山田崇仁先生である。もう感謝、感謝でいっぱい。
古代文字のデータベースにお強い先生。
睡人亭亭主プロフィール
もちろん、自分で一文字ずつ作らずとも、
まずは、『毛公鼎』ならば、毛公鼎をネットで調べまくる。
以前はいましめるという「彳」と「及」の文字は手書きしていたが、
調べまくれば、「彶」の字が提示されているため、それをコピーして、我がPCの単語の登録字典にすぐさま取り込む。
いまでは、資料作りは
➀ PCで、甲骨文や金文のストーリーを学者の釈文をもとに提示。文字分析。
内容、文字分析を行って、資料が9割5分できたら、
② 拓本を拡大して、トレース。スキャンして、PC上で切り貼り。
こんな感じ。
拓本は古代人が書いた原寸の文字は西周後期金文の『毛公鼎』でさえもわたくしにとっては小さい。わたくしにとってというのは、老眼が進んでいることをいう。
例えば、天来書院テキストシリーズの金文は、すべて原寸である。
この小さな文字を、当時の書記者は、青銅に流す前に、筆で下書きしたのである。
老眼鏡がない時代に。
最近は、「これ、書いた人は、若いんですから」とつい言ってしまう。
「若いっていいわね~」という称賛よりも、おばさんがしかめっ面で若い人をなじるような、
羨ましさが、逆に恨めしいという感情になっている。
『毛公鼎』をトレースする時には、原寸の3倍に拡大して書いた。
以上、ネットをうまく使いながら、古代文字資料を作る話であった。
甲骨文オタク、西周金文マニアの書道家 安東麟でした。