ミュージカル「SPRING AWAKENING」 | もずくスープね

ミュージカル「SPRING AWAKENING」

このあいだの日曜日の夜(というか、日本時間では月曜日の朝)、ミュージカル「SPRING AWAKENING(春のめざめ)」が、第61回トニー賞における、最優秀ミュージカル作品賞・最優秀脚本賞・最優秀演出賞・最優秀楽曲賞・最優秀振付賞・最優秀編曲賞・最優秀照明賞・最優秀ミュージカル助演男優賞の、計8部門を制覇した。既に各種メディアで報じられているのを目にした方々も多いであろう。

この作品、実は、わたしも先々月、或る用事でNYを訪問した際に、観ている。それも、1回観ただけでは飽き足りず、本来予定していた別の観劇をキャンセルし、当日券を買って、もう1回観てしまったほどであった。つまり、短い滞在期間の中で2回観たのである(そのうち1回は出待ちをして俳優たちからサインを貰う、というミーハー的行動さえとった)。もしこれで、自分がNY在住だったりしたら、きっと毎週観に行っちゃうだろうな…というくらい、この作品の虜となってしまった。これまで少なからずミュージカルを観てきたわたしではあるが、「SPRING AWAKENING」の魅力は別格であり、現在のところ最もフェイバリットなミュージカル作品だと断言できる。



playbill


ミュージカル「SPRING AWAKENING」は、19世紀ドイツのフランク・ヴェデキンドによって書かれた同名戯曲を原作としている。そのストレートプレイ版のほうは、例えば日本では1998年に、TPTによってベニサンピットで上演されている。この時の演出は串田和美。出演は、馬渕英里何(ウェンドラ)、大森南朋(メルヒオール)、北村有起哉(モーリッツ)、田中哲司(オットー)らであった。大森や北村はこれが初舞台だったという。これはこれでなかなか素晴らしいキャスティングだと思うが、残念ながら、私は観ていない。しかし、それが上演されたベニサンピットという会場は、なかなかに「SPRING AWAKENING」向きではないかと思った。いずれ、将来、ミュージカル版「SPRING AWAKENING」を日本でやる時が来るとしても、最初はベニサンで試演すればよい。アメリカ本国でのミュージカル「SPRING AWAKENING」も、最初はオフブロードウェイで発表されたという経緯もあることだし。

さて「SPRING AWAKENING」、そのストーリーは苦悩に満ち溢れている。性に目覚め始めるティーンエイジャーたちが、大人社会によって過酷な抑圧を受け、そこからさまざまな悲劇が巻き起こってゆく、という物語だ。ミュージカル版ではこれらが、ときに攻撃的、ときに官能的、ときにユーモラス、ときにスリリング、ときにしんみり、ときにトリッキー…といった具合に、多彩な表現でテンポよく展開されてゆくので、観客の心は少しも退屈することなく作品世界の中にグイグイ引き込まれてゆくのだ。

もし間に合えば、現地本番から5日ほど遅れの6月16日(土)20:00~22:30に、NHK BS2で放送される「トニー賞授賞式2007」を観ていただきたい(司会&現地レポートは、嬉しいことに、新妻聖子さまである!)。その中で「SPRING AWAKENING」も、4分半程度の短いパフォーマンスを披露するのであるが、作品のエキスがいい感じで凝縮されているので、公演未見の人にはうってつけである(この放送が見れない人は、手っ取り早く http://www.youtube.com/watch?v=DgkdoIz5tmE  で確認するのもよいだろう)。

それを見てくれればわかるのだが、楽曲たちが、いずれも驚くほど名曲揃いなのが凄い。さすが最優秀楽曲賞に輝くだけのことはある。サントラCDは、日本でも既にタワレコなどで購入可能なので、気になる人はぜひ入手して聴くとよい。ポップで耳によく馴染むナンバーばかりであるが、一曲一曲に緻密な技巧が埋め込まれていて、聴き込めば聴き込むほどに、味に奥行きが出てくる。みんなとても歌がうまいことにも唸らされる。中でも極め付けのポップチューンといえばやはり「BITCH OF LIVING」であろう。公式サイトの中でプロモビデオも見られる。というか、これはもう必見である。パンキッシュなのに、コーラスワークが美しい、という上質さにも好感が持てる。 http://www.springawakening.com/spring_awakening_video.php

「BITCH OF LIVING」のPVを見て何よりも印象的なのは、その斬新で切れ味のよい振付けであろう。日本にも来日したことのある、黒人ダンサー、ビルTジョーンズによるものである。他の場面でも強烈無比な振付けを次々に施していて、これはミュージカル界における「振付け革命」といってよいだろう。当然ながら、今年のトニー賞では最優秀振付賞に輝いた。

さて、「SPRING AWAKENING」について語るべきことはまだまだ尽きないのだが、とりあえず本日はここまでとさせていただきます。ま、なにはともあれ、6月16日(土)NHK BS2、見るべし!