夫は携帯電話とアパートの鍵という肩の荷を

私に預けてからやたらと彼女の話を私に聞かせた。


彼女に対する不平不満を

つらつらと私に話して聞かせるのだ。


そんな話聞きたくも無い

そんな子を選んでアパートまで借りたのはあんだでしょう。


そう思うのが普通なのだろうが

なぜか私は冷静に話を聞いて

「それは大変だったね」

「それじゃああなたとは合わないね」と言ってた。


そして

いよいよ彼女と3人で面会する場面となった。

夫は少しタバコを吸って気持ちを落ち着かせて

ゆっくりと重い口を開けた。


彼女に謝る夫に彼女は

「謝ってる気が全然しないんですけど」と言った。

思わず口を挟んでしまった。

「女に頭を下げると言う事が出来ない人なの。

これでも彼は精一杯謝ってるの。わかってあげて」と。


彼女に別れを告げた夫は車へと戻っていった。


私と彼女は私が作った和解合意書の内容を確認しながら

書類を作っていた。


書類を書き終わったあとで彼女は私に

「私のどこがダメだったか聞いてますか?」と言った。

「さっき言ってたような事しか聞いてないけど」と答えた。

「奥さんにはなんて言ったんですか?」と聞かれたので

「やっぱり俺の事を一番に考えてくれて

俺の事をわかってくれるのはオマエだって言われたよ。」


11年前

初めて夫と出会った時には夫と付き合うなんて思いもしなかったし

まさか結婚なんてするとは思わなかった。

断っても断っても食いついて来て

立ち回り先に突然現れたり

夜中に突然、家の前まで来たり

そんな夫の猛アタックに負けて付き合いを始めたんだという事を彼女に話して聞かせた。


別に自慢したかったわけではない

彼女をあきらめさせる為でもない

まだ29歳という若い彼女に

次はいい恋愛をしてもらいたいと思った。


過去にも不倫をした彼女。

相手の男の人の人生を転落させた彼女。


何が彼の幸せならよ。


結局は自己中心的で自己満足が欲しかっただけじゃない。


見た目はとても可愛いのに

不倫に躓くなんてもったいない。


でも彼女の愛には必ず見返りの要求があることは

私から見てもわかった。


正直、こんな簡単に許していいのだろうかという自問はまだ残る。


それでも早く忘れたい

早く元の仲良し夫婦に戻りたい


その気持ちが私自身を抑制している。


本当に辛かった。

苦しかった。

死んでしまいたいと思う日が何日もあった。

この苦しみはすぐには消えないと思う。


でもいつか

元の仲良し夫婦に戻れる日を夢に

頑張って行くしかない。


夫も突然の展開にまだ心が落ち着かない様子だけど

頑張って行こう。



翌朝

彼女名義の携帯から彼女にメールした。

「携帯を返すので鍵を返して下さい」と。


すると私の携帯にバンバンとメールが入って来た。


アタシと別れる事が彼の幸せなら喜んで別れます。

仮に私と別れて奥さんと一緒に居ることが彼にとっては

幸せですか?

私たちは本気です。

彼を縛り付けないで下さい。離婚してあげて下さい。


返信しようにも着信も受信も拒否されている。


仕方なく彼女名義の携帯から

しばらくメールのやり取りをしたけど

内容は覚えていない。

ただ前半は彼女が言いたい放題で

離婚を迫る内容だった。


私は「本人から離婚を要求されていないのに

あなたに離婚を要求される筋合いはない」と言う様な内容だったと思う。


しだいに彼女は

「もしかして奥さんもアタシも騙されていたのでしょうか?」と言い出した。


私は

「もしかしなくても既婚男性なんてそんなもんだよ」と返信した。


最初は面会を頑なに拒否していた彼女が

面会に応じた。


決着は今晩。

すべてを今日中に終わらせる


その思いだけで昨日の一日を過ごした。




女からメールが来て4日後。

夫の帰りが遅かった。


これもまた妻の勘であろう。

「今日だ!」

以前から調べていた夫の車の駐車場所に行ってみようと思った。


その場所に夫の車はあった。

近くに女の車もあった。

アパートが立ち並ぶその場所で

夫と彼女の密会部屋までは知ることが出来なかった。


夫は車に荷物をおいていた。

携帯電話も。

夫の荷物を探ると現金とキャッシュカードが無造作に入っていた。


私はその現金とキャッシュカードを自分の財布に入れ

夫の車の写真と彼女の車の写真を撮った。


どうしようか・・・


しばらくその場で悩んだ。


車に戻ったところを捕まえて問い詰める?


なぜかわからないけど

私は泣きながら車を走らせていた。


家に戻る途中で夫からメールが届いた。

「ごめんね。寝ちゃった」


あと少し もう少し待っていたら現場を押さえる事が出来たのに

なぜ帰って来たのだろう

自分でもわからなかった。


帰って来た夫に

写真を見せた。


夫はなぜか素直に認めて話し出した。


アパートを借りていた事

彼女名義の携帯を持っている事

彼女とは清算しようと思っていた事


そして

携帯電話とアパートの鍵を出して

「肩の荷が下りた」と私に言った。