岸辺のアルバム | 映画と私

岸辺のアルバム

東京郊外の多摩川沿いに住む中流家庭。一見すると幸せそうに見える家族4人。しかし、実はそれぞれが問題を抱えていた。
母・則子(八千草薫)は良妻賢母型の専業主婦。だが、見知らぬ男から電話がかかってくるようになる。はじめは知らん顔をするも、やがてその男と会うようになり。父・謙作(杉浦直樹)は有名大学出の商社マン。しかし、実のところ会社は倒産寸前の状態だった。娘・律子(中田喜子)は大学生。なかなかの秀才で大学も簡単に合格したはずだったが、ここ一年は家族に対して心を閉ざしている。やがて、アメリカ人男性と交際するようになるのだが。息子・繁(国広富之)は大学受験を控えた高校生。決して勉強のできる方ではないが、心の優しい性格の青年だ。だが、両親や姉の異変に気付き、思い悩むことに

(TBS)


ずっとみたかった!追悼山田太一で観ることにした。U-NEXTに感謝。

わあ、一気に観てしまった。

一見、幸せそうな、どこにでもいる家族。

でもそれぞれに満たされない思いがある。

昭和感満載のお父さん、

専業主婦の孤独なお母さん、

何かいつも不満気なお姉ちゃん、

そして家族の純粋さを唯一持ち続ける繁。

 

前半はお母さんの不倫にみているほうも、

どうなるどうなると気が気でない。

街で見かけて、一目惚れ、イタズラ電話から

発展する関係。よく考えたら気持ち悪い。

でもそれがイケメン中年で物腰柔らか、

夫とはまるで反対の人。

私は嫌いなタイプだけどね!

お互い家族がいるので、壊さない関係。

そしていつの間にか、体の関係へ。


それを知ってしまうのが繁。

大好きなお母さん。

秘密をぐっと胸の中にしまい、

受験生なのに集中できない。

学校から家に電話をかけては、母が浮気しないかチェックする。かわいい。


姉は姉で、アメリカ人に騙されて、

強姦されて妊娠。

そのアメリカ人に立ち向かうのも繁。

勝てるわけないのに、黙ってられない。

ほんといいやつ。


父は父で、会社の経営が傾き、

東南アジアから女を入国させて、

水商売へ斡旋する仕事をイヤイヤしている。

それも繁だけが知ってしまう。


家族の秘密を1人で背負い、

爆発してしまう。

家を出て、中華屋さんで住み込みで働く。

根を上げず、真面目に働く。

ほんといいやつ。


津川雅彦演じる担任の北川先生が、

繁くんは受験とかじゃなくて、

もっと自分を活かせることがあるはず、

僕は彼が好きなんですと

なかなか先生は見る目があったな。


そして、あの多摩川決壊へ。

家は流されてしまう。

流されそうな家の中で夫婦は初めて本音で話す。

そうなのだ、繁の言うとおり、

嘘だらけ表面を取り繕って守っても

心は虚しい。

体裁だけをよくして、それに何の意味がある?

そのシーンで初めて、則子と妻の名前を呼ぶ。

いつ以来呼んだんだろうね。


家は流されてしまった。

そして父の会社も倒産してしまった。

全てをなくしたかのように思えるが、

家族はちゃんとまた大事なものに気づくことができた。

父親がアルバムだけはと大事にしていた。

初めは家族の記録と思って大切に重ねてきたのだろうが、最近では嘘の笑顔の写真になっていた。

表面的な家族像。

きっとそれは今も変わらない。

インスタで仲良くみえたり、

羨ましくみえても、その裏側はわからない。

外面用の幸せなどに意味はない。


繁の善良さが、あざとくなくて、

ほんとみていて救いなのだ。

家族が壊れないように必死に守っていた。

国広富之が、本当にハマり役。


1977年、私が生まれた年。

この時の八千草薫と私が同じ年でもある!

でも今みても、

大事なところは何も変わらない。

学歴や、社会的地位や人から評価されることより、大事なことがある。

繁をみていたらよくわかる。

そして、自然災害も今につながる。

人間の営みなど、呆気ない。

自然に対しては弱い。だからこそ、

畏敬の念をいつも忘れてはならない。


それにしても、竹脇無我演じる男みたいなのが一番タチ悪いよな。お父さんより!カッコつけてて気持ち悪い。

夫は妻が浮気して怒ってるけれど、

妻がここから出て行きたくない、

あなたといたいの言うと一瞬安堵したような顔がみえた。杉浦直樹のそういう感情滲ませるのが上手いな。


ドラマ史に残る名作、その通りに

素晴らしい作品だった。

津川雅彦もよい。

きっと山田太一の視点はこの役にあるのかなと思った。

風吹ジュンもかわいい。