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冬の蕎麦創作
■会津地方には、寒ざらし蕎麦というものがある。
玄蕎麦を、冷たい川水に浸けて数日間さらして甘みを出すと言うやり方なのだが、俺は解せません!
古い玄蕎麦などは保水力が無くなっているので、捏ねるには新そば(収穫から3ヶ月以内)よりも15%ほど加水率が高くなる。晒す事によって潤いが増してくるのは当然だが甘みが増すとは思わないのです。新そばならまして、自ら育んだ自然の潤いをなくしてしまう。もっとも、蕎麦屋のアルバイトの俺が言う言葉ではないかも知れないけど。

俺のバイト先の蕎麦屋は、冬場は土日の予約を除いて3月までお休みなのです。
奥羽山麓の中にあるので、今でも雪道で過酷な為です。ことしは暖冬のお陰で雪は少なめだから、時には予約なしでお客様がきます。先日の土曜日には、何と!広域○○団○川会系の親分衆5名がやってきました。丁度その時は、バイトの一人が休んだ為に今日はやすみとばかりに暖簾も上げていなかった。黒い高級車が来たのを見て、誰かと思い挨拶に行ったらお客様だった。わざわざ仙台から来たので、何とか支度して欲しいと頼まれた。しかし、外はもちろん部屋の内部は氷点下。エアコンもストーブのスイッチも入っていない。

大急ぎで支度にかかり、部屋と板場に明りを灯した。
運よく蕎麦は打っておいたので、あったか蕎麦なら直ぐに用意できると思ったら、何とこれまた「岩魚の天ざる蕎麦」をご賞味とか。これには参りました!岩魚は池の中で泳いでいるのです。先ずはこれをとっ捕まえなくてはなりません。其れよりも、俺は生きてる岩魚の首に包丁を入れるのが苦手なんです!料理人として何事ぞ!と、お叱りを受けるかもしれませんが、可哀想なんですよ!俺を見詰て鳴くんだモノ。
まぁ。いつもの捌き屋がいないので、仕方泣く目をつぶり3枚におろして天麩羅にあげる。カボチャ。舞茸。アスパラも添えます。豆腐はもちろん、俺が創作した拘りの木綿豆腐です。

新蕎麦は丁度5人前しかなかったのだが、沸きあがる鍋に投じると黄緑色になります。
此処で使用する新鮮な新蕎麦は、他では見られない鮮やかな薄緑色になるのです。
蕎麦の香りが部屋の中に充満します。40秒ほどで鍋から取り上げたら、流水で滑りを取りながらで余熱をカットします。素早く氷水で締め込み盛り付けに入る。この頃には、碾きぐるみ田舎蕎麦の色に戻っています。大根おろしと刻みねぎ。香の物をセットして出来上がり!

俺一人だったのをみて、親分の奥様がお絞りからお茶だし。灰皿の処理までしてくれました。
みんな昭和の時代を物語る親分集とお見受けしましたが、現代ヤクザには見られない温情を感じました。帰り際に、美味かったよ!又来るからお願いします。と、お帰りになりました。こんな言葉を掛けて戴きますと、山オトコみたいな俺でも蕎麦創作人の冥利に尽きます。その日の売り上げは9,000円でした。チョッピリ悔やまれたのは、二人前を追加されたんですが、肝心な蕎麦がなかったのです。
これからは増して、蕎麦創作人を目指して頑張ってゆく所存です。
と、カッコよく言いたいのだけれど、俺はしがねぇアルバイトなのだぁ!

※この写真では、天つゆの位置が豆腐の位置と取り違えています!
ゴメンなさいませ!