私が成人し、父との関係も終わった頃には
気がつくと統合失調症の急性期をぬけていた



処方される薬は徐々に減り、
通院頻度も少しずつ間があいていった。




頻繁に起こるパニック発作は落ち着き、

次第に"来る"感覚をつかみ、
事前にそれを抑えるように
コントロールできる事が増えていった



自傷行為についても、
母の言葉をうけてから
ぐっとこらえることが増えて
少しずつ傷は減っていった



それまではあり得なかったが、
決まった相手以外とも
遊びに出掛ける事ができるようになり

新しい友達や知り合いが増え


私はいつからか、
私自身が驚くほどの
スーパーポジティブ思考になっていた。



なにもかも、前向きにとらえることができて
何かが弾けたかのように遊びまわった



遊ぶお金のために、
アルバイトにも精力的に通った



自分には神か仏が後光を照らしてくれていて
なんでも出来るしとても優れた人間のように思えた




だけどこれは、
長くは続かなかった




突然、目の前が真っ白になって
何もかもどうでもよくなった



何にも楽しくないし、
誰に対しても疑心暗鬼になった。




私はアルバイトを辞め、
新しく仕事を見つけた。




今までの自分を知られていない、
新しい居場所が欲しくなったのだ。




そしてただただ
真面目に働く事が生き甲斐になった。




遊びやプライベートでの
他者とのコミュニケーションは
まるで責務をこなす様な感覚に変わっていた。





この頃の私をよく知る人は、後にこう言った


"病気がよくなってから、しばらくあと
その数年間のあなたにはまるで感情がなく、
いつも冷たい態度で目が笑っていなかった"






統合失調症には、4段階のステージがあって


「前兆期→急性期→休息期→回復期」


およそこの流れで症状が変わっていくらしい。


ただ細かくは人によって様々で、
他の精神疾患を伴っている場合も多く



「それぞれの段階をどの程度の期間過ごすのか
また、この通りの流れで進むとも限らない」



との事らしい。



だけど、情緒がハイになった時
私は勝手に通院をやめていた。

だからこれを知ることができたのは
かなり後になってからだった。




これを知った時、ここまでのおよそ十年間


自分の情緒に振り回されて生きてきた事、
自分の性格が、自分でも全く把握出来なかった事に納得した。