『法事にて…』 一内侑
先日、祖父の23回忌の法事がありました。
23回忌…長いものです。が、以外と人は集まるんですね。親戚一同他、数名がいらっしゃいました。
その中、僕より4つ上の従兄弟の子供達がいました。5歳♂と3歳♀の子ですが、正月くらいしか顔を会わさないので、僕のことは誰だかわからない様子…
見知らぬ茶髪叔父さんなのに、隣に座ってきた5歳の長男【ガク(仮名)】。ご馳走を食べながら、何度もチラ見をしてきます。
何か話すきっかけを、と思い僕は話題を投げ掛けます。
「ガク、シンケンジャー見てる?」
と、聞くも愚問!
男の子なら登竜門のヒーロー戦隊!見てない筈がありません!
このネタには見知らぬ叔父さんという概念は取っ払った食い付きの早さ!!
チラ見であった横向きの姿勢は僕に対して正面向きに変わった。
「うん、見てるよ~」
「お兄ちゃんね、桃…シンケンピンクのお姉ちゃんとお友だちだよ」
ガクの表情が一気に変わり、やや見もガン見に変わる。
しかし、どことなく信じられない様子…。だって、片や地球を守る正義のヒーローなのに対し、それと友達と言う目の前の何をしてるかわからない茶髪の叔父さん…
ましてや唐突すぎる…
この頃の歳になると大人は嘘をつくという認識がすでにあるのだろう。
よって、期待していた反応とは違う答えが返ってきた。
ガク「シライシマコと?」
これには僕が止まった。
これは引っ掛けか!?と…
シンケンジャーはイエローも女の子…もしかしたらそっちの名前かもしれない…
僕らにとってはシンケンピンクは高梨臨ちゃんでも、彼らにとっては彼女の名前はその役名そのものなのだ…
失敗した…
役名までしっかり覚えておくんだった…
「シライシマコ…」
確かに聞いたことある名だが、高梨臨ちゃんの役名かは定かではない…
これ以上時間を引き延ばすわけにはいかない!とりあえず返してみる…
「そんな名前だったね…」
!!!!?
しまった!さらに墓穴を掘った!慌てて繕う。
「お兄ちゃんはいつもシンケンピンクって呼んでるからねぇ…」
しかし、時すでに遅し!彼は「ふ~ん」という言葉だけを残し、興味を無くした…。
取り残された僕…。しかし、助け船のごとき声が聞こえた!
「高梨臨か?」
僕の親父だった。
しかしながら、この話題はこの親父の一声をもって幕を閉じた…。
地球を守るヒーロー…彼ら子供たちにとってはとても大きな存在なのだと実感した。簡単にお友達だよとか言ってはいけない存在なのだ。
そして、高梨臨ちゃん、名前覚えてなくてごめんなさい…。ジャンヌの時は幼馴染みでも、今やお友達だなんて言える資格はありませんでした…。