ある晴れた日、ふたりの結婚式の日のこと。



ワタシはふたりの特別な一日をカメラ越しに見つめ、ココロを込めてシャッターをきる。


笑顔を誘う笑顔の写真を撮るのがワタシの役目。



11月のある日、明るい朝、とても寒い朝。



ふたりが選んだのは大きなマラソンの走者が真下に見えるスタイリシュなホテル。


艶々と光るオーナメントがぎっしり飾りつけられたクリスマスツリーが館内のいたるところに鎮座している。



ふたりに用意された控え室は27階のスイートルーム。


ワタシがその美しい部屋に入ると今日ワタシが見つめるふたりが柔らかそうな絨毯の上にふわりと立っていた。


2ミリ位浮いているのではないかと思った位ふわりと、優しい微笑みをたたえてふたりがワタシを見ていた。


11月には少し薄着過ぎるシンプルでカジュアルな装いで、顔を洗って玄関に出したままの愛用のスニーカーをトントン鳴らしながら来ました、みたいな。



挨拶をしながらキュっと胸が締め付けられるのを感じる。


自分に与えられた仕事の重みを感じて。


頭の中では荒れた波がザブンザブンと音をたてていて、その波の音の向こうに自分の声が聞こえる。



でも、ワタシの緊張は新郎様のヒトコトで一気に和らいだ。


『ボク、ちょっとシャワーを浴びようかな』って、、、


確かにバスルームあります、スイートルームですもの、だけど11月です、汗かいてるのですか、、、?


瞬時に色々思ったけれど 『じゃあ、お仕度が整われた頃に参ります』 の言葉が自然に出てきて(あら、ワタシ今プロだわ)なんて思ってちょっと笑顔。



実は今日、ワタシのデビューの日。ワタシにとってもとても大切な日になるのです。


緊張して早く目覚めて2時間前に着いてたのです。


もうあちこち見てまわってたけれどもぅ一回見てまわろう、このホテルの中だったらどこで撮っても良いだなんてとても素敵だけれどワタシにどれだけのことが出来るか全然わからないのが本音だった。


波音がまた聞こえ始めた。

自分の声も聞こえる。


『今日は良い日』と言っていた。