ワシントンDCにartechouseというメディアアートのミュージアムがあります。
https://artechouse.com/

隔月で最新テクノロジーを使ったメディアアートを手を変え品を変え提供しているミュージアムです。2017年では年間15万人の来客がいるそうです。
日本の美術館とかでも年間15万人いるというと、そこそこなトップレベルになるははずです。(イベントとかで突発的な多さは出るけど)


今回やっていたのは、プロジェクションマッピングとARの展覧会でした。
室内の壁いっぱいに桜の花が舞っていて、そこに「桜」という漢字も魚のように浮かんでいます。これに、インタラクティブアートとして自分が動かした手に反応してシャボン玉のようなものを作れます。
自分で動かして変幻自在に動かせるので、これが今回の肝。

 


 

予約が中々取れなくて、行けたのが日曜日の夜9時半。子供連れはいませんでしたが、大人が童心に帰って楽しそうに動かしているのも含めて、とても微笑ましい光景でした。

 

どやっ!!っていうぐらいの大きな演出ではないんですが、逆に言うと、そこまで莫大な投資をかけずとも、こういうエンターテイメントを提供できるようになったのかと、時代の進み具合にちょっとした感動を覚えました。

 

 

 

メディアアートを考える

根がエンジニアであるからか、メディアアートは好きです。
日本でも世界に誇れるエンジニアがいるのもこの業界で、
ライゾマティクスの真鍋大度さん、チームラボの猪子寿之さん、スプツニ子!さんはちょっと前までマサチューセッツ工科大学の人でしたし、最近では落合陽一さんもそうですよね。なので、ちょっとこれを機会にメディアアートとテクノロジーについて考えるようになりました。

 

 

 

 

 

メディアアートは"今"のアート
これらは確実に今生きている人が提供しているアートだという事が重要な要素です。
 

それって、クラシックとポップミュージックの違いみたいな感じで、昔から語り継がれてきた美術とは別に、単純に親しみやすい。なんせ、対象顧客は今生きている我々ですから。
 

レオナルドダヴィンチやモーツァルトが、数百年後の我々を想定しているわけではないので、当時の人たちが聞いた瞬間一目惚れするような作品を出していると思います。今の我々からしてみたら、衝撃的な出会いでない限り、一目惚れの確率は少ないんじゃないかと思います。もちろんゼロではないですが。


モーツァルトとミスターチルドレンでどっちが好き?って言われると、今の我々は結構な数ミスターチルドレンを指すでしょう。それと一緒の構造がアートにもあるのではないかと。なので、直感的に「好き」と思えて、一目惚れできる要素が強い。それがメディアアートなんではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

テクノロジーは"眼鏡"である
テクノロジーが発達しても、インターネットがこれだけ発達しても我々は幸せになれない。昔の方が密なコミュニケーションをとれていた。ご近所さん付き合いとか団地の集まりとか。よく言われる話ですが、技術に生きる私としては、直感的にもそこは賛同できないところです。

インターネットができて人とのコミュニケーションが疎遠になった。違うと思います。インターネットはよく見えるメガネみたいなもので、今までより情報を得る労力が圧倒的に減ります。

 

本を買ったり、テレビを見たり、実際に足を運ぶよりも格段に便利です。ゲームなんかも、他の人とコミュニケーションできることが前提なゲームしかなくなりました。e-sportsがこんだけはやってる時代ですから。

 

 

 

 

 

問題は、よく見えるメガネをかけてしまったせいで、見たくないものも見えてしまう事です。

 

リアルないじめからネット上の炎上に変わると、誰もがふと炎上を目にする機会が増えます。文句をいう労力も減ってるから、ちょっと油断するとすぐ文句言えてしまうし、それを聞く労力も低いからすぐ聞けてしまう。良いことも悪いことも実際の量は変わってなく、わかる量が増えた。そういう事だと思います。

 

昔サトラレという映画がありましたが、今の生活は似たような感じなんじゃないかと。もともと人には見せてなかった、見えてなかった他人の心の一部分が見えてしまう。良い部分も悪い部分も。見えちゃうから無視もできない。
 

 

 



見たくないものを見えてしまうから、眼鏡をはずすのか、人の暗部が見えてしまうからサトラレの能力を消すのか。それも幸せになる一つの手段ですが、私はそうしたくないし、その能力と仲良く付き合う方法を考える方が全然良い。

 

 

 

メディアアートは今の技術を駆使しながら、その技術や得た能力とどうポジティブに向き合うべきなのか、その一つの例を示しているように見えます。やっぱり未来は明るいと思いたい。そしてメディアアートを見てそういう気分になる。それがメディアアートを見る楽しさの一つだと思います。
 

 

 

 

 

私はリオオリンピックの閉会式、ライゾマティクスと椎名林檎さんがプロデュースしたセレモニーを見て、4年後の開会式がむっちゃ楽しみだと胸高鳴りましたよ。