windows版が出たのでファイナルファンタジー15をやってみました。
うーん、面白い。というか、だいぶ尖った作品のように感じました。
しかし、FF15は世間の評判でいうと、「称賛」と「酷評」。が二分されます。
Amazonとか評価2.9ですね。

 

 


これと対比する形で、むっちゃ称賛されているゲームが、ゼルダの伝説です。
こっちはやってるわけじゃないんですが、youtuberの人がやってるのをちょいちょい見た感じ。
Amazonの評価、驚異の4.6です。

 

 

 



この2つの共通点はオープンワールドRPGであるという事です。
昔のドラクエとかFFとかだと、最初は行けるところが限られて、ストーリーを通過するごとに、行ける部分が増えるので、実質一本道のゲームに等しいやつでした。
それが、オープンワールドはある程度チュートリアルがすんだら、広大な大地を行きたい放題。若いころやっていた素朴な違和感に対するゲーム会社の一つの回答がこのオープンワールドです。



しかし、この評価の差ですよ。
食べログだったらこの同じ価格帯でこの評価差だと、確実にゼルダ屋さんに行くことでしょう。
ですが、私はFF15にもちゃんと評価したい。ので、多少FF15をひいき目に、何を面白がればよいのかというのを、AIを少しだけ勉強した身として、その観点からお話ししようと思います。



■FF15の何が凄い?
一言でいうと、技術の最先端だという事です。
ゼルダの伝説でもそうですが、基本的にゲームの進行にはAIが使われます。
これまでは敵の動きをAIとして作動させるというのが一般的でした。
プレイヤーが動かしたら敵がどう動く?という事を考えたり、的のどの部分に剣や魔法が当たれば、どう負傷するかというような形です。
最近では、ランダムに天候を変えたり、夜が来て朝が来てなんてこともやります。


 

 

 



FF15のすごさはそのAIの傾倒具合です。
このスタッフが行ったのは、プレイヤーの近くにいる味方に対して、ストーリーテリングのためにAIを使っています。
それとないタイミングで仲間のAIがプレイヤーに話しかけたり、それもシチュエーションにあった形で。
バトルの最中だけでなく、適当なタイミングで(イベントを受注してしばらくたってシーンとなったときに会話というような)誰かが会話をしたり。
仲間の動きも、後ろに1列に歩くような時代は終わり、ランダムにあっちこっちに行っては、最終的にプレイヤーに収束するとか。
ゴリゴリの脇役のお店の人も、プレイヤーが近くに来たら「へい、いらっしゃい」なんて言ったりします。

FF15スタッフは人工知能学会に、大規模ゲームデザインの例として論文まで出しています。
https://jsai.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=8636&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=13&block_id=23
これを読みながら、マジか。こうやって先端のゲームは作られているのだなと、感じてしまいます。


私はFFをオンライン以外は歴代の作品のほとんどを(3以降、11,14以外)やってきました。私がFFをやり続けるのは、ゲーム業界の先端テクノロジーを体感して見たいという思いがあります。
FF7が出たときのゲーム雑誌で見た、3Dの表現。「まじかよ。これがゲーム内で動く時代になったのか」という驚き。作品を追うごとに繊細になっていく背景描写やプレイヤーのリアリティ。

 

 

*私は人の髪の毛をバロメーターにしてたりします。どの程度鮮明に髪の毛が見えるようになるのか。
10-2ユウナとか。ff13のライトニングさんとか。この2つでも技術の進化がわかります。



今回もすごいなと思ったのは、おじいちゃんのリアリティ。これはもう人形レベルではないリアルさがあります。


 

 

15をやって思ったのは、3Dによる写実主義(どこまで実際の人間や自然と変わらない描写にするのか)に加えて、動きに対するリアルっぽさを追求し始めたんだなと思いました。
順番通りに指示通りに動く道具から、人間っぽい仲間に変化させた感じで、先端のゲームはこういう方向性に行くんだなーという風に、普通に感心しました。

FFシリーズには、時代の一歩先の未来を見せてくれる何かを期待している私には、FF15は期待通りの「おおおおおお、すげーーー!!!」ってなる作品でした。

このの解像度で、仲間がそれぞれの判断で勝手に動いてるんですよ。凄くないすか?



 


■FF15がなぜ評価されないか。
大きく言って2つ。バグとストーリーです。
一つめのバグですが、まあやればわかるんですが、味方の行動に対するバグが多い。。。
運転を仲間に任せると、対向車と正面衝突したり(イベントでもなんでもなくただのバグ)、自然にはあり得ない位置に仲間が立っていたり。
重箱の隅をつつけば数えきれないぐらいの不自然さが出てきます。


仲間の動きに対するリアリティの追及に尖ってしまったせいで、実際の思い描いた目標より現実のプロダクトが追い付いていない。そういう印象は、私もやりながら持ちました。リアリティの追及に対して尖った作品のため、ユーザーからは粗が目に付いてしょうがない。

またリアリティのある相手の会話というのも、違和感を持つレベルにしかならない。iphoneのSiriがどうやっても人間じゃなく、頭のいいAIにしかならないのと一緒で。

 

ソフトウェアの書き方が大量に計算するように組み込まれていて、PS4というハードが持つ計算力が、開発者のやりたい事に対して追い付いていない。という推測をしてみました。実際AIを動かすと意思決定のためのプログラムの計算量が相当多くて今のハードだと苦しいのは実感を持ってわかります。

 

もう一つの不評原因はストーリーで、全体のストーリーとして感動したかというと、個人的には8とか9とか10の方が良くて、最近のは劣化傾向にあるのかなぁと思ったりもします。ストーリーは、技術関係なくもうちょっと頑張ってよというのはありますが。




■ゼルダの伝説の何が凄い?
一言で言うと、「潔さと決断力」でしょうか。
ゼルダの伝説の評価されるポイントとして、背景の美しさにあると評する人が多くいます。
また、ゼルダの伝説はロマン主義の絵画を模していると評する人も。
これは私も結構賛成で、ゼルダの伝説にはロマン主義のにおいがします。





ロマン主義というのは、中世の古典主義と一線を画した絵画手法で、のちに印象派につながる系譜です。
如何に写真のように表現するかではなく、解像度を落としてそこに人の感情や感性を入れてみよう。という派閥の人達。
という解釈を私はしています。
そして、この解像度というのがこの作品の肝だと思っています。

 

 

 



どこまでリアルにしようとしても、今の技術ではリアリティの追及に限界がある。
絶対にリアルにはならないと踏んだうえで、何を削って何を立てれば、作品トータルとしてユーザーが評価されるのか。現在のハードウェアの計算力限界、ソフトウェアの技術の限界を鑑みて、ユーザーが一番感動する技術レベルはどこか。
そこの足し算と引き算、絞りかたの上手さがゼルダの伝説の成功要因です。

 

うん。確かにきれい。ファンタジーとしてはこれは最高ですね。




解像度を落とすという判断で、リアリティを一段階落としたレイヤーで美しく見える表現手法として、ロマン主義レベルの解像度に落ち着いたのではと思っています。
プレイヤーの会話についても、今ではすべての言葉を声優さんに置き換えれるのに、必要ないところはあえて文字の表現にしてみたり。
ゼルダの醍醐味の謎解きはそのままに、敵の動きもリアリティを一段階落としてキャラクターとしての可愛さを表現するようにしたり。製作者としては、品質を上げるためにあれやこれや部分部分で手を付けたくなるところを抑えて、これはこれで、今の技術力でできるトータルの表現力はここだ!っていう風に決断した。
その決断力が凄いなーと思います。
そのうえ、それを開発開始するのは数年前であることを考えると、数年後完成した時のこのレベルを予測して作ってたのか!という凄さが光りますね。




■結論
FF15はクリエイターによる技術の粋を限界まで先端に寄せた作品であり、ゼルダの伝説は現状の技術のトータルとしての美しさを表現する作品であるといえるのではないでしょうか。
FF15はエンジニアの、ゼルダの伝説はディレクターとプロデューサーの作品とも言いかえれるかもしれません。
FFシリーズほどに尖がった作品を私は知らないので、FF16が出ても、私は期待するでしょうし、やっていくことでしょう。
ゼルダの伝説については、現状の技術であれ以上の到達点はないと思うので、次作がどのように化けるか、開発はしてるんじゃないかなと思いますが、楽しみにしてみたいと思います。
動かす楽しみは少ないので、人のゲーム実況を見てれば十分かなー。





■余談
攻殻機動隊「イノセンス」監督の押井守さんが当時のインタビューで、映画製作当初オール3Dでやりたいと言っていた製作委員会の要望に対して、
「3Dの技術的な限界があり、技術に系統するのではなく、現存のアニメーションと先端のアニメーションを融合し、3Dアニメーションの持つ、決してリアルとは言えないある種の異世界感を、アニメーションで表現したい」と言っていた記憶があります。
トータルバランスによる最大公約数、イノセンスは当時のゼルダの伝説だったのだなーと、書きながら感じています。
イノセンスもそりゃあもう凄かった。