夕方には砦から宿に帰り着いた。
まだ今夜のお客さんは1人もチェックインしていないようで、ヒマそうにしているオヤジとチャイを飲んで話し込んだ。
インドでは道端のあちこちにチャイ屋があって、この出前のシステムがまた面白い。
もちろん電話なんかで注文するわけでもないのに、どういう伝達システムなのか不思議と小僧がチャイを持ってくるのである。
オヤジとベッドに腰掛けて、手すりごしに通りを見下ろしながらチャイを飲んだ。
駅に程近い場所なので通行人が多く、見物するにはもってこいである。
通行人を教材にしながら、インドのカーストについて授業をしてもらった。
ふたりでボケッと手すりにもたれながら、あれは○○、…あれは△△、とやってゆくのだが、僕には違いがさっぱり判らない。
オヤジによると、特に女性は服装の微妙な違いである程度カーストが特定できるみたいである。
僕が本で読んだのと少し呼び名が違うが、カーストを大別すると、バラモン、シャットリール、ヴェッシュ、シュドル、という4段階に分かれるのだそうだ。
そしてそれぞれがまた細かく分かれていて、オヤジの故郷らへんでは24のカーストがあるらしかった。
ふうん、・・・見た目で僕に判るのは靴を履いてるかゾウリを履いてるか裸足かの3段階なんだけど、それはカーストに関係あるのかなあ?
と質問してみると、それは必ずしもカーストによるものではなく、経済力とカーストの上下とは必ずしも一致しない という答えである。
オレのカーストはバラモンだけど、こんな安宿の経営者だし、たいていゾウリ履いて歩いてるぞ
(けれども、カーストをバラモンと明かした時のオヤジの表情はちょっと得意げであった。)
うん、僕もいっつもゾウリ履いてるなあ
いやいや、ジャパニ、お前はヒンズー教徒じゃないんだから、制度的にはカーストの中にすら入っていないランク外の扱いなんだぞ
・・・ふうん
インドはその後の僕の旅の中でも一番長く滞在した国になるのだが、結局最後までこのカーストというやつはさっぱり判らなかったし、まったく気にもしていなかったように思える。