#113 POPULAR INN | かふぇ・あんちょび

かふぇ・あんちょび

このカフェ、未だ現世には存在しません。

現在自家焙煎珈琲工房(ただの家の納屋ですけど…)を営む元バックパッカーが、

その実現化に向け、愛するネコの想い出と共に奔走中です。

 宿は1階部分が食堂になっており、そこには例によってバックパッカー達が何をするでもなくだらだらとたむろしていた。

 とりあえず2人部屋の相部屋1ベッドということでチェックインをして、彼らの仲間に加わりチャイなどすすってみた。

僕のビザのトランジット期限まであと2日しか残っていない。

ここではイスラマバードでのビザ延長についてや、この先に訪れるであろう国のビザ取得についてなど、情報をもらわねばならなかった。


 それほど心配しないでも、こういった情報はバックパッカー宿では簡単に手に入る。

最悪誰かの 『 地球の歩き方 』 か 『 ロンリープラネット 』 さえ借りれば何かしらの手ががりは書いてあるのである。


 さて、僕の知りたい事はすべてそこにいた旅人たちが知っていた。


 ① ビザの延長はイスラマバードのパスポートオフィスで簡単にでき、日本人は無料。


 ② パキスタンを陸路で抜けて次の国に行く場合、考えられるのはイラン、インド、後戻りして中国、の三つのパターン。

このうち…中国行きは、カラコルムハイウェイが既に雪で閉ざされているため、不可能。

…イラン行きは、当時の時点ではイスラマバードのイラン大使館は個人旅行者に観光ビザを発給しておらず、不可能。


 自動的に僕の次の行き先はインドという訳であった。


 うへえ、インドか。


というのがその時の僕の正直な感想であったと思う。

キヨにそそのかされてカラコルムの国境を越えてパキスタンに来てしまった僕には何の目標も予定もなく、別に次の目的地がインドでも何の問題もない訳だが、なんとなくなりゆきとして自分はこのままシルクロードを西へ、イラン、そしてトルコへと向かうのだろうと思っていたのだ。

それに、これまでに出会ってきた旅人たちの中でインドを通り抜けてきた者たちには、なんかヘンな奴が多かったのである。

( もっとも、後に僕も間違いなくそのヘンな奴の仲間に入ることになる。 )


 まあ、いいや … では僕はここでパキスタンビザを延長し、インドビザを手に入れればいい訳ね。


 さらに、彼らの情報には続きがあった。


 ③ この宿の屋上では、毎晩チャラスが回されている。


 … それはそれは。


 僕はこの宿に1週間近く滞在した。

後にインドや東南アジアの各地で耳にした情報によると、この宿はその酩酊感に乗じての従業員による窃盗やレイプまがいの事件の多発する悪名高い宿だったらしいのだが、僕にはとりたてて何の被害もなかった。

チャラスのグルグル感を覚えたのは、確かにこの宿ではあったのだが。