【実験小説:かもけんっ 13】 | trigger_happy+

trigger_happy+

ドンパチ絵文ブログ


カモカは自分の握りこぶしに視線を落とし、小さな声でたずねた。



「彼女はどうしたの?」



カモカの問いに、空になったコップを静かにテーブルに置き、ロウは空っぽな笑顔を見せる。



「彼女…ルインは死んだよ、魔物に心臓を食われてな」



「…魔物は憎い?」



ロウはカモカのあまりにも直線的な質問に、驚きながらも頭を横に振った。

再びうつむくカモカ。

なぜか、今まで張りつめていたカモカの緊張が解けたように見えた。

そんなカモカにロウは静かに語りかける。



「俺は魔物を殺す傭兵だけどな、別に魔物がみんな悪いとは思ってはない、憎しみなんかとっくの昔に通り過ぎて、今は後悔しか無いよ」



「…後悔?」



カモカは顔をあげた。

その頬には一筋、涙が零れて光っている。



「あの日、俺とルインは結婚する予定だったんだ…結婚の儀式を行うために村外れにある滝で待ち合わせていたんだ、でもいつまでたってもルインは来なかった」



「村で魔物に殺されてた…」



「ああ、果敢に戦いに行った村の男達は返り討ちにあい、最終的に逃げ遅れたルインだけ殺された…あの時、俺が一緒にいればこんなことにならなかったはずなのに」



今度はロウがうつむいて、握りこぶしを作っている。

奥の厨房からのジュージューと油が踊る音だけが賑やかだ。



「…ずっとこの事ばかり考えているんだ、馬鹿だよ俺は」



きつく握った手をほどき、ロウはカモカを撫でる。

カモカの両方の目からポタポタと涙が流れおちていた。



「悪かった、湿っぽい話してしまって」



ぐすんとカモカは鼻をすする。

どうやったら泣きやませられるのかと、ロウが困惑していると重量感のある足音が近づいてきた。



「あ、兄ちゃんめ、こんな可愛い子泣かせてる、いけないなあ」



「あ、謝ったよ、謝ったけど…」



ラッシュはカモカの頭をよしよしと撫でながら、もう一本の手で料理をテーブルに並べる。

皿からはみ出るくらい大きい魚が、切れ目を入れてカラッと揚げられていた。



「ほら嬢ちゃん、僕の特製、季節の魚の丸揚げを食べちゃいなよ!」



えっへんと自信満々な店主は毛で覆われた胸をはるが、カモカはぐすぐすと鼻をすすって泣きやむ気配がない。