あれから何時間経っただろうか、ロウは魔水晶をぼんやり眺めていた。
魔水晶は通信用や攻撃用など色々と存在しているが、ロウが眺めているのは記録用。
その中ではカモカのような金髪の女性が優雅に踊っている。
ロウの魔水晶の記録はこれだけだ。
「…ルイン」
艶やかな衣装を揺らし、くるくる回る女性の映像を静かに抱き締めた。
映像が何回ループした頃だろうか、静かに雨が降り出して、暖炉でくすぶっているサラマンダーのファイは不快そうに頭をもたげる。
――ドォンッ!
突然の爆音にロウはやっと我に帰った。
静かだった雨音が土砂降りに、そして雷がゴロゴロと鳴っている。
さっきの音は近くの木にでも落ちたのだろうか。
そう考えていると、ロウはふと思い出した。
「まずった…洗濯物が外じゃないか」
ロウは、脱ぎ散らかした茶色の長い上着に右手をかざし、円を描く。
「汝、液体を拒絶せよ」
パンと軽い破裂音と閃光が小屋に響く。
上着に簡単な水除けの魔術を掛けると、それを羽織ってロウは急いで玄関のドアを開けた。
晴れていれば日当たりの良いのだが、屋根が無いので雨が降れば一巻の終わり。
洗濯物は全滅、何から何まで水が滴り落ちている。
「はー…」
肩を落としながらも、ロウは濡れて重くなった洗濯物を取り込む。
かろうじて明日着る物があるのはいいが、部屋で干せば床が水浸しになる事は間違い無い。
やれやれと取り込んだ洗濯物を小脇に抱え、小屋に戻ろうと踵を返そうとした時、じゃりっと砂を踏みしめる音が雨音に混じった。
もちろん、ロウはまだ歩いてもいない。
剣は濡らすまいと小屋に置いてきたロウは、いつでも攻撃魔術を撃てるように左手を差し出しながら振り返った。
「何で、ここに居る?」
ロウは手を下ろして、代わりに言葉を放った。
足音の正体は白金色の髪の少女、カモカ。
「…殺してくれると思った」
「またそれか…」
数時間前と変わらぬ会話に、落ちた肩が更に落ちそうな気分だ。
しばらくの無言に雨音が異常に大きく聞こえて来る。
「…分かった、殺してやる」
ロウは意を決し、カモカに歩み寄った。
カモカは静かに青い瞳を閉じて、その時を迎えようと祈りのように胸に手を当てる。
。