全員のテンションに追いつけないアーリャは、一人で三人掛けのソファーに腰を下ろす。
今日は一体なんなんだ、そう思っているとヴィスカが横に座って来た。
この部屋の雰囲気といい、今のヴィスカの格好は絵本の中から飛び出したような錯覚を覚える。
「なあ、アーリャ」
「なんだ」
「好きなんだろ」
「…え?」
ヴィスカに見つめられ、たじろぐアーリャ。
後ろで楽しそうに喋っているタイキやジャンに聞こえないよう気を使っているのか、ボソボソと耳元で囁く。
「あの手の女は無防備そうに見えてカタいからなー…」
「カタいって?」
話に乗ってきたアーリャにヴィスカはフンと更にアーリャの顔へ近付いた。
青く澄んだ瞳が刺々しい銀色の目を臆せずに見据える。
「戦場で例えるなら、男に対する防御が戦車並みって事、今時の戦車には対物ライフルは効かないから、対戦車ミサイルかロケット砲が必要ね」
「どういう事…?」
「鈍いわね、つまりあの子の心の装甲を貫けばいいのよ、玉砕覚悟で」
キリッとどや顔で熱弁を奮うヴィスカ。
しかし、少女漫画かドラマの見過ぎな気もしないでもない。
そうそう玉砕なんかできるか、そう言おうと口を開きかけた時、カチャリとドアが開いた。
ルーシャが諸々の準備を終えたらしく、居間に戻って来たようだ。
「あれ、ジャンさん達は…?」
居間に入ってきたルーシャは部屋を見渡して、部屋の人気の無さにキョトンとしている。
「アイツらならさっき部屋を出たぞ」
部屋の隅で携帯をいじりながら、ジャスト。
ジャンとタイキはヴィスカと話している間に作業に戻ったらしく、居間から居なくなっていた。
「お菓子用意したのに…」
「なあに、俺が後で出しておくよ、そんな事より護衛が少女に盗られてるぜ」
「まるで泥棒猫みたいな言いようね」
口の端をひきつらせながらヴィスカ。
アーリャはソファーから立ち上がり、ルーシャの方を見た。
相変わらず派手とは縁遠い、普通に可愛らしいオレンジ色のニットに、白のフリルが付いた丈が長めのワンピースだ。
「お待たせしました」
「あ、いや…うん、行こうか」
ツカツカとルーシャが立つ居間のドアに向かって歩くアーリャだが、緊張しているのか歩き方がどことなくギクシャクしている。
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