もやに覆われたような薄いブルーの空。
身を切られるような冷たい風も和らぎ、もうじきに春が訪れようとしている。
そんな天気の下、一人の男女が数人の男を従え、とある小綺麗な四角い印象のある建物の中へ入って行った。
堅気とは言えない空気と黒いスーツを身に纏った男達と、お世辞にも周囲の人間とは馴染まない女の子。
派手でも地味でもない普通の雰囲気が、あまりにも周りと対比している。
「ジャストの旦那、例のパーティーですがシェフはレイがやってくれるそうです、あとセッティングは自分の部下に任せます」
「リニーズの件といい、最近は対外状況が不安定ですので、出来るだけ身内でやる方が無難でしょう」
「とりあえず、ゴールドラッシュ(GR)のエリア氏、チェッククラブのアナン氏の出席が確定しております」
男たちは口々に報告を述べながら、先頭を行く男…ジャストの後ろを付いていく。
ジャストは待合室の前で身を翻した。
「報告ご苦労、ここでの護衛はいい、車で待ってろ」
わかりました、と一瞥し、部下の男達は車を止めた駐車場の方へ踵を返す。
「まったく、護衛なんか付けてられるか」
「お父さんってば…」
ジャストの隣を歩く少女…ルーシャは困った顔で自分の父親を見た。
「今は色々危ないんでしょ、気を付けなきゃ」
「ルーシャ、俺は九年前の大抗争の頃、銃弾飛び交う中で交渉して回ったんだぜ…この程度の荒れ模様は大した事じゃないさ」
そう言って、カツカツと待合室を通り過ぎ、病室のある棟へ入って行く。
目的地は一番奥の一人部屋。そして…
「何酒持って来てんだジャン!!」
そんな怒号がやたら反響の良い廊下に響き渡った。
ジャストとルーシャは顔を見合わせる。
「あそこで間違いは無いな」
病院ではお静かに、そんな言葉が誰の頭にでも過ぎるような大声が響く部屋のドアをジャストが叩いた。
ガラッとドアを開けると、痴話喧嘩は止み視線が一斉にジャストの方へ。
「あ、ジャス兄だ」
病室のベッド脇の椅子に座ったタイキが驚き半分の声を上げた。
「噂をすれば、なんとやらか」
ベッドで横になっていたアーリャは痛みに顔をしかめながらゆっくり起き上がる。
「いいよ寝てて、地雷の破片刺さってんだろ」
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