ヤマネコ産業営業部では、三毛猫部長の下、二つの係りがあり、クロネコ係長の法人営業係とシロネコ係長の個人営業係で毎日せっせと仕事をしていました。
ライバル部署ではあるものの、クロネコ係長とシロネコ係長はよく夕飯に行くなかよしでした。
法人営業係が売り上げを伸ばしたため、三毛猫部長は、「クロネコ君、君の下に一人部下を付けようか?」といいましたが、クロネコ係長は忙しい上に部下指導は大変なので「派遣社員の方で結構なので、営業事務を付けてほしいです」と言いました。
ところが、三毛猫部長は、大学院をでて、他業種を経験したブタ君を正社員として採用しました。
クロネコ係長は、「まあ、いいか。猫の手も借りたいくらいだし、中途採用だから多少は仕事もできるだろう・・・」と思っていました。
そんなある日のこと、偶然、ヤマネコ社長とシロネコ係長とブタ君が営業に行くことになりました。
ヤマネコ社長は、シロネコ君に、「君、社会人大学院(MBA)にいって、もっと勉強してみないか?」と言いました。ただ、シロネコ係長は「ありがたいお言葉ですが、遠慮いたします。」と答えました。
ヤマネコ社長は、シロネコ君だけに聞くのもかわいそうだと思い、ブタ君に「君はどう」といったところ、「行きます」と即答しました。
シロネコ係長は、まだ仕事も覚えていないのに、何を言っているんだろうと目を丸くして驚きました。
ブタ君は、会社に学費を出してもらって、夜間にMBAに行くことになりました。とはいうものの、大学院は毎日あるわけではありません。でも、毎日、大学院がありますからとうそをついて帰っていきます。
ある大忙しの日、クロネコ係長は、ブタ君に私が文章を取りまとめるからカバーレターだけ作っておいて、と頼み報告書を作成していました。一時間後、報告書ができあがったので、「ブタ君カバーレターできた?」ときいたところ、何にもできていません。
また、ある日はえらい人を呼んで、会議でした。クロネコ係長は「ブタ君議事録作っておいてね」といいました。
会議が終わって数日、「ブタ君、議事録できた?」と聞いたところ、「係長、仕事にはプライオリティがあります」という返事でした。そうです、会議メモを取っていなかったので、何もできていなかったのです。
会議のプロモーターをさせてもダメ、市場調査をさせても、某巨大掲示板のコピペを出すありさまで、クロネコ係長はカンカンです。
それを見た、三毛猫部長は、「彼は、議事録くらいしか作成できないから、議事録を作ってもらおう」と提案し、ブタ君は議事録係になりました。一日中、ICレコーダ―をききながら、一文字一句間違わずに議事録を作成しています。取引先のイノシシ部長の「えー」、とか、「そうですねー」などといった言葉も、当然記録していきます。
そして、定時になると、MBAがありますんで、と言って帰っていきます。そして、こっそり仕事中もMBAの宿題をしています。
クロネコ係長は、シロネコ係長に帰り道のカレー屋さんで愚痴をこぼす日々です。
2年間が過ぎ、MBAをとったブタ君は、だれにも歓迎されず、卒業式を迎えました。優秀な卒業生ということで、高価なブタの餌ももらいましたが、自分のものにしてしまいました。学費を出したのはヤマネコ産業なのにです。
そんなある日、クロネコ係長はとうとう頭にきて、会社を辞めてしまいました。
その後、ブタ君は、部署を異動して、外部の会社に発注をかける仕事をしていました。会議で決められた通り外部の会社に発注し、困ったことがあれば隣に座っているコウモリ課長に聞けばよい、楽な仕事です。
シロネコ係長もだんだんと仕事へのやる気を失ってゆきました。
そんなある日、ブタ君が会社を辞めることが決まりました。ブタ村の公務員の中途採用に受かったのです。
それを聞いて、みんな「学歴だけでモノを見る人がいるんだなー」と思いながらも、やめてくれることに大喜びでしたとさ。